契約変更:Amendment, Modification, Variation の意味と手続き

英文契約書の変更に関する三つの主要な用語であるAmendment, Modification, Variationについて、その法的意味合い、契約書における使われ方、そして変更の際に考慮すべき一般的な手続きと注意点を解説します。

 

はじめに

ビジネスを取り巻く環境に変化が生じたことにより、一度締結した契約の内容を変更する必要が生じることは少なくありません。

英文契約書においては、このような変更を表す際に

Amendment、Modification、Variation

といった複数の用語が使われることがあります。

これらの用語は似ているように見えても、それぞれ異なるニュアンスや使われ方があります。

その違いを正確に理解しておくことは、契約変更時の手続きを円滑に進め、将来の紛争リスクを避ける上で重要です。

この記事では、これら三つの契約変更に関する主要な用語について、その意味、契約書における使われ方、そして変更の際に考慮すべき一般的な手続きと注意点を解説します。

契約変更に関する用語の理解を深めていただき、より適切な対応ができるようになればと思います。

 

1.Amendmentとは

Amendmentは、契約書の特定の条項や一部を、修正または追補(追加・補足)する際に最も一般的に用いられる用語です。

原契約の効力はそのまま維持しつつ、特定の箇所に手を加える場合に適用されます。

多くの場合、Amendmentは、独立したAmendment Agreement(変更契約書/修正合意書)として作成され、原契約と一体のものとして扱われます。

これは、変更の意図を明確にし、契約関係者が後で参照する時に混乱しないようにするためです。

動詞形では、~を修正する(amend)というように頻繁に用いられます。

例文:

The Parties hereby agree to amend Section 5.1 of the Agreement to read as follows:

(訳):

両当事者は、ここに、本契約第5.1条を以下のとおり修正することに合意する。

ポイント:

修正または追補(追加・補足)といった意味合いが強く、原契約の特定部分の変更に用いられます。

独立した変更契約書(Amendment Agreement)の形で締結されることが一般的です。

形式的で正式な変更、つまり単なる内容の変更だけでなく、契約書に定められた所定の手続きに則った変更を伴います。

 

2.Modificationとは

Modificationは、契約全体の「変更」や「修正」を意味する、より広範な意味合いを持つ用語です。

これは、特定の条項だけでなく、契約の複数の側面や、時には契約全体の構造に影響を与えるような大きな変更を指す場合もあります。

Amendmentと重複する場面もありますが、Modificationは、

より実質的な変更や変容(契約の特定の部分だけでなく、契約の根幹や性質変化するような、大きな変更)といった意味合いが強い点が特徴です。

原契約に新たな重要な条件を追加したり、既存の条件を実質的に変更したりする際に使用されることがあります。

動詞形では、~を変更する(modify)として広く用いられます。

例文:

This Agreement may not be modified except by a written instrument signed by duly authorized representatives of both Parties.

(訳):

本契約は、両当事者の正当な権限を有する代表者が署名した書面による合意を除き、変更できないものとする。

ポイント:

より広範な「変更」や「修正」を指す概念です。

契約の実質的な内容や条件の変容(大きな変更)を伴う場合に使われることがあります。

Amendmentよりも、その変更の規模や影響が大きい場合にも適用され得ます。

 

3.Variationとは

Variationは、主にイギリス英語圏で使われることが多い「変更」を表す用語です。

契約の特定の部分を「変更」または「変更する行為」を意味します。

AmendmentやModificationと同様に、契約の内容に変更を加える際に用いられますが、やや「(条件の)変動」といったニュアンスを含むことがあります。

既存の条項の内容を部分的に変更するという点でAmendmentと似ています。

しかし、Variationは、(条件の)変動、つまり特定の期間や条件の発生に応じて契約内容が変動する可能性を指す場合にも使われることがあります。

動詞形では、~を変更する(vary)として用いられます。

例文:

No variation of this Agreement shall be effective, unless it is in writing and signed by or on behalf of each of the Parties.

(訳):

本契約のいかなる変更も、それが書面であり、かつ各当事者によってまたはその代理で署名されない限り、効力を有しないものとする。

ポイント:

主にイギリス英語圏で使われることが多い「変更」の概念です。

契約の特定の部分の変更を指します。

「(条件の)変動」といったニュアンスも含むことがあります。

4.契約変更の一般的な手続き

これらの用語が使われるか否かにかかわらず、英文契約書の変更には共通して重要な手続きが存在します。

適切な手続きを踏まない変更は、その有効性が問われたり、予期せぬ法的リスクにつながるケースがあります。

1)書面による合意を残すこと(Written Agreement):

多くの契約書には、「いかなる変更も書面によるものとし、両当事者の権限を有する代表者が署名しなければならない」という条項(例えば、Entire Agreement Clause や No Oral Modification Clause)が含まれています。

これは、口頭での合意や電子メールでのやり取りだけでは契約変更の有効性が認められないリスクを避けるために非常に重要です。

変更は、明確な書面で残すようにします。

2)当事者双方の合意とすること(Mutual Consent):

契約変更は、原則として両当事者(または関係する全ての当事者)の自由な意思に基づく合意によってのみ成立します。

一方的な通告や変更は、契約違反となる場合があります。

3)変更部分を特定し明確に記載する:

どの条項のどの部分が、どのように変更されるのかを具体的に特定し、明確に記載することが重要です。

あいまいな表現は、将来の解釈の相違や紛争の原因となります。

4)発効日を明確にする(Effective Date):

変更がいつから効力を持つのか、その発効日を明確に定める必要があります。

5)原契約との整合性を確認する:

変更後の契約が、原契約の他の条項と矛盾しないか、全体の整合性が保たれているかを確認することが重要です。

必要であれば、関連する他の条項も修正を検討します。

 

5.契約変更時のリスクと注意点

契約変更は、単純な手続きに見えても、実務においては様々なリスクが存在します。

これらを認識し、適切に対処することが、不要な紛争を避けるために不可欠といえます。

1)口頭での変更のリスク:

多くの契約書に「書面による変更」条項が含まれているにもかかわらず、実務上、当事者間で口頭での合意や簡易なメールでのやり取りによって変更が行われることがあります。

しかし、このような口頭での変更は、後日その有効性が争われたり、内容が不明確であったりすることで、紛争の原因となるリスクが非常に高くなります。

変更は必ず書面で行い、権限ある者の署名を得ることが重要です。

2)黙示の変更(Modification by Conduct/Implied Modification):

契約書に書面での変更が義務付けられていても、

当事者の実際の行動や慣行が、契約書の内容とは異なる形で継続されることで、「黙示的に契約が変更された」と解釈されるリスクがあります。

例えば、支払い期限が契約で定められているにもかかわらず、長期間にわたり異なる期日で支払いが受け入れられている場合などです。

意図しない変更が成立するのを防ぐため、契約と異なる行動がある場合は、書面でその理由を明確にするか、契約を正式に修正する必要があります。

3)部分的な変更による全体の不整合:

特定の条項だけを変更した場合、原契約の他の関連条項や定義と矛盾が生じる可能性があります。

例えば、ある定義を変更したのに、その定義を用いる別の条項が修正されていない場合、解釈に混乱が生じます。

変更を行う際は、契約全体を見て、関連する全ての箇所をチェックすることが不可欠です。

4)関連契約への影響:

対象となる契約の変更が、他の契約(例:下請け契約、秘密保持契約、保証契約など)に影響を与える可能性があります。

例えば、主要契約の期間を変更した場合、それに紐づく下請け契約の期間も調整が必要になるかもしれません。

関連する全ての契約を確認し、必要に応じて連動して変更を行うことが重要です。

5)準拠法による有効性の違い:

契約変更の有効性に関する条件は、適用される準拠法によって異なる場合があります。

例えば、特定の法域では、口頭での変更が一定の条件下で有効と認められることがあります。

自社の契約に適用される準拠法が、変更手続きの有効性についてどのような規定を設けているかを理解しておく必要があります。

 

まとめ

英文契約書の変更に関する主要な用語である、

Amendment、Modification、Variation

の意味と、契約変更を行う上で不可欠な手続きと注意点について解説しました。

Amendment:
特定の条項の「修正」や「追補(追加・補足)」に用いられる、最も形式的な(所定の手続きに則った)変更を指します。

Modification:
契約全体の「変更」や「修正」を意味する、より広範な概念です。

Variation:
主にイギリス英語圏で使われ、契約の特定の部分を「変更」する行為を指します。

これらの用語の意味合いを理解することに加えて、

契約変更時には、必ず書面による合意を得ること、

他の条項や関連契約との整合性を確認すること、

など、契約変更の適切な手続きを踏み、

・そして、意図しない黙示の変更を防ぐこと

など、実務上のリスクに細心の注意を払うことが重要です。

契約変更は、ビジネスの成長や環境変化に対応するために不可欠なプロセスです。

この記事が、契約変更に際して直面しうるリスクを回避し、安全かつ効果的に契約関係を管理するための一助になればと思います。

 

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