Relationship of the Parties(当事者の関係条項)

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英文契約書の 一般条項である Relationship of the Parties(当事者の関係条項)についてです。いくつかのサンプル例文に要点と対訳をつけていますので、ご参考にしてください。例文中の基本表現に注釈を入れました。

1.解説

1) Relationship of the Parties (当事者の関係条項)とは

Relationship of the Parties(当事者の関係条項)とは、

契約を結んでも、契約当事者の双方が独立した関係であることをはっきりとさせる

ことを目的とする契約条項です。

一方当事者が、他方当事者の代理人とされたり、各当事者がパートナーシップやジョイントベンチャーを構成する共同事業者となるものでなく、お互いに相手方当事者に対して、何らかの代理権を与えるものでない

ことを明確にします。

こうすることで、契約当事者間で予期しない義務や債務を負担するリスクを避ける狙いがあります。

Relationship of the Parties(当事者の関係条項)の条文は、

・Sales Contract(売買契約)

・Service Agreement(サービス委託契約)

・Distribution Agreement(販売店契約)

・Joint Venture Agreement(合弁契約)

・Consulting Agreement(コンサルタント契約)

などで、よく設けられます。

2)なぜこの条項が必要なのか?

この条項が重要である理由は、主に以下の点にあります。

法的な誤解を防ぐため:

契約を交わしたからといって、自動的に当事者間に「代理」や「共同事業」といった特定の法的関係が生じるわけではありません。

しかし、もし契約書で明確にしておかなければ、将来的に、一方の当事者が他方の代理として行動したと見なされたり、共同責任を負わされたりする可能性があります。

責任範囲を明確にするため:

例えば、A社がB社の代理人として振る舞ったと見なされると、B社はA社の行為によって生じた損害や債務に対して責任を負うことになるかもしれません。

この条項は、そのような予期せぬ連帯責任や法的リスクを避けるために役立ちます。

税務上の問題を避けるため:

パートナーシップやジョイントベンチャーと見なされると、税務上の扱いが変わり、予期せぬ税金が発生する可能性があります。

この条項は、そのような問題も未然に防ぎます。

3)他方当事者に一定の権限を与える場合の対応

契約の内容自体が、他方の当事者に具体的な権限を与える(例:販売代理店契約で販売権限を与える)場合もあります。

そのような場合は、以下のいずれかの方法で対応します。

① Relationship of the Parties(当事者の関係条項)をいれない。

② Relationship of the Parties(当事者の関係条項)を修正して、「本契約に定める権限以外の権限を与えない」とするの旨の規定を設ける。

上記②の修正により、契約書で明示的に与えられた権限以外は、当事者が独立した関係であることを明確に保ちます。

4) 見出し条項について

Relationship of the Parties(当事者の関係条項)の見出し条項は、他に、

・Independent Contractors(独立した契約者)

・Independent parties(独立した当事者)

などのタイトルで表示されたり、これらが表現としてが条項の中で使われたりすることもあります。(以下の例文②例文③をご覧ください)

2.契約レビューの重要ポイント:リスクと注意点

Relationship of the Parties(当事者の関係条項)は、一見すると定型的な条項に見えますが、その内容を深く理解し、適切にレビューすることは、将来の法的リスクを最小限に抑え、ビジネス関係の安定性を確保する上で極めて重要です。

特に、以下の点に注目して契約書を確認しましょう。

1)予期せぬ代理権の発生リスクを排除する

この条項の主な目的は、契約当事者間に「代理関係」や「共同事業体(パートナーシップ、ジョイントベンチャー)」といった法的な関係が、意図せず発生することを防ぐことです。

もし、契約書にこの条項がない、または不適切な場合、一方の当事者が行った行為について、もう一方の当事者が法的な責任を負うことになる可能性があります。

なぜ問題になるのか?:

例えば、あなたがサプライヤーと契約したとします。

もしこの条項がないためにサプライヤーがあなたの「代理人」と見なされると、サプライヤーが第三者と結んだ契約や、サプライヤーの不法行為について、あなたが責任を問われるリスクが生じます。

これは、あなたの意図しない法的義務や金銭的損害に直結する重大なリスクです。

確認すべきポイント:

契約書に「代理関係」「パートナーシップ」「ジョイントベンチャー」「従業員関係」の発生を明確に否定する文言が含まれているか。特に、

Neither Party is, nor shall either hold itself out to be, the agent, employee, joint venturer or partner of the other party(いずれの当事者も、相手方の代理人、従業員、合弁事業者またはパートナー組合員ではなく、またそのように振る舞ってはならない)

のような明確な表現があるかを確認しましょう。

2)責任範囲の明確化と第三者への影響

この条項は、当事者間の責任範囲を明確にし、第三者との関係にも影響を及ぼします。

第三者への誤解防止:

当事者が互いに独立した存在であることを明記することで、第三者(顧客、サプライヤー、規制当局など)に対して、当事者間が共同で事業を行っている、あるいは一方が他方の責任を負うといった誤解を与えることを防ぎます。

これは、ブランドイメージの保護や、不必要な法的トラブルの回避につながります。

確認すべきポイント:

一方の当事者が他方の名のもとに契約を結ぶ権限がないこと」や「相手方に義務を負わせる権限がないこと」が明確に示されているか(例文③参照)。

これは、無権代理によるトラブルを防ぐために非常に重要です。

Neither party has any express or implied right under this Agreement to assume or create any obligation on behalf of or in the name of the other, or to bind the other party to any contract, agreement or undertaking with any Third Party(いずれの当事者も、本契約に基づいて、相手方の代理として、あるいは相手方の名において、いかなる義務も引き受けたり創設したり、また、第三者とのいかなる契約、合意、または約束においても相手方を拘束する明示的または黙示的な権利を有しない)

のような、第三者との関係における権限の否定があるかを確認しましょう。

3)複数契約が存在する場合の優先順位

複数の契約(例:基本契約と個別契約)が存在する場合、定義条項だけでなく、この当事者の関係条項も契約体系全体の整合性に関わってきます。

なぜ重要なのか?:

例えば、販売代理店契約(個別の契約)を結んでいながら、基本契約の中に「当事者は独立した契約者である」という条項がある場合、その独立性を担保しつつ、代理店に与えられた限定的な権限を明確にする必要があります。

確認すべきポイント:

もし特定の契約で一方の当事者に限定的な代理権を与える場合は、その契約で与える権限の範囲を具体的に明記し、かつ、Relationship of the Parties条項がその限定された権限に影響を与えないよう、「本契約に定める権限を除き…」といった留保文言があるかを確認してください。

これにより、契約全体の整合性を保ちつつ、特定のビジネスニーズに対応できます。

4)税務・会計上の影響

当事者関係が「独立した契約者」か「共同事業者」かによって、税務上および会計上の扱いが大きく変わることがあります。

確認すべきポイント:

契約の法的性質が、意図する税務処理や会計処理と一致しているか、事前に会計士や税理士と確認することをお勧めします。

特に、国際取引においては、各国の法制度の違いも考慮に入れる必要があります。

 

Relationship of the Parties条項は、単なる形式的な文言ではありません。

これは、契約当事者の法的地位を明確にし、予期せぬ法的責任や財務リスクから身を守るための、非常に重要な法的防衛線と捉え、細心の注意を払ってレビューすべき条項です。

 

2.例文と基本表現

(注):上記で解説したRelationship of the Partiesとその関連表現は青文字で示し、その他の基本表現をハイライトしています。

1)Relationship of the Parties (当事者の関係条項) - 例文①

契約当事者の関係は、売買する資産についての売主と買主のみであることを確認しています。

Purchaser and Seller acknowledge and agree that the relationship established between the parties pursuant to this Contract is only that of a seller and a purchaser of property. Neither Purchaser nor Seller is, nor shall either hold itself out to be, the agent, employee, joint venturer or partner of the other party. 

(訳):

買主と売主は、本契約に従って当事者間に確立された関係が、資産について売主と買主のみの関係であることを確認し合意する。買主も売主も、相手方の代理人、従業員、合弁事業者またはパートナー組合員として振る舞ってはならない。

(注):

*acknowledge and agreeは、確認し合意するという意味です。くわしくは、acknowledgeの意味と例文をご覧ください。

*pursuant toは、に従ってという意味です。

*hold itself out to beは、~として振る舞うという意味です。くわしくは、hold itself out asの意味と例文をご覧ください。

2)Relationship of the Parties (当事者の関係条項) - 例文②

Servicer(債権回収会社)は、independent contractors(独立した契約者)であり、当事者を代理しません。

The Servicer is an independent contractor and, except for the services which it agrees to perform hereunder, the Servicer does not hold itself out as an agent of any other party hereto. Nothing herein contained shall create or imply an agency relationship among Servicer and any other party hereto, nor shall this Agreement be deemed to constitute a joint venture or partnership between the parties. 

(訳):

債権回収会社は、独立した契約者であり、本契約に基づき履行に同意するサービスを除き、債権回収会社は、本契約の他の当事者の代理人としての地位を保持しない。 本契約のいかなる規定も、債権回収会社と本契約の他の当事者との間で、代理関係構築又は示唆するものではなく、本契約は、両当事者間の合弁事業又はパートナーシップを構成するものではない。

(注):

Nothing herein contained shallは、本契約のいかなる規定も~するものではないという意味です。

*create or implyは、構築又は示唆するという意味です。

*constituteは、構成するという意味です。くわしくは、constituteの意味と例文をご覧ください。

3)Relationship of the Parties (当事者の関係条項) - 例文③

当事者の関係は、independent contractors(独立した契約者)です。

The relationship of the parties under this Agreement is that of independent contractors. Nothing contained in this Agreement is intended or is to be construed so as to constitute the parties as partners, joint venturers, or either party as an agent or employee of the other. Neither party has any express or implied right under this Agreement to assume or create any obligation on behalf of or in the name of the other, or to bind the other party to any contract, agreement or undertaking with any Third Party, and no conduct of the parties shall be deemed to infer such right. 

(訳):

本契約に基づく当事者の関係は、独立した契約者の関係とする。 本契約に含まれるいずれの内容も、パートナー、合弁事業者または相手方の代理人もしくは従業員として、当事者を構成することを意図もしくは解釈されるものでない。 いずれの当事者も、本契約に基づいて、相手方の代理人としてまたは相手方の名前で、義務を引き受けたり設けたり、第三者との契約、合意または約束を義務付けたりするいかなる明示的または黙示的な権利も有しておらず、 当事者のいかなる行為も、かかる権利の推測とみなされない。

(注):

*is intended or is to be construedは、意図もしくは解釈されるという意味です。

*any express or implied rightは、明示的または黙示的な権利という意味です。

*assume or create any obligationは、義務を引き受けたり設けたりするという意味です。

*on behalf of or in the name of the otherは、相手方の代理人としてまたは相手方の名前でという意味です。on behalf ofについては、くわしくは、on behalf ofの意味と例文をご覧ください。

contract, agreement, undertakingは、それぞれ契約、合意約束という意味です。agreementは、ここでは契約のことではなく、合意、合意事項を意味します。

be deemed to infer such rightは、be deemed to(~とみなされる)infer such right(かかる権利を推測する)で、かかる権利の推測とみなされると訳しています。

 

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