【この記事でわかること】
- represent and warrant(表明保証する)の法的意図と正確な和訳
- 英米法(Common Law)における Representation(表明)と Warranty(保証)の法律的差違および違反時の法的救済(Remedies)の違い
- 実務交渉において責任リスクをコントロールするための「知識限定(Knowledge Qualifier)」および「重要性限定(Materiality Qualifier)」の挿入手法
- covenant、guarantee、certify など類似・代替表現との構造的・機能的使い分け
- ライセンス契約および製品売買等で活用できる実践的英文例文・対訳・詳細語注解説
英文契約書の重要条項である「表明保証条項(Representations and Warranties Clause)」において、中心的な役割を果たすのが「represent and warrant」という重厚な法律定型句です。
一般に「表明し、保証する」と訳されますが、英米法上(Common Law)の観点からは、単なる言葉の重複ではなく、過去・現在の事実関係についての「表明(Representation)」と、将来または事実に起因する損害補償についての「保証(Warranty)」という2つの異なる法的責任を同時に負うことを意味します。
本記事では、represent and warrant の英米法上のメカニズム、違反発生時の法的救済手段、類似表現(covenant / guarantee 等)との使い分けから、実際の契約書で用いられる標準例文・対訳・語注解説までを網羅して詳しく解説します。
目次
1.解説:represent and warrant の法的メカニズムと契約実務
1)用語の意味と基本概念
英文契約書において「represent and warrant」は、以下のように和訳されます。
- 表明し、保証する
- 事実でありかつ確実であることを宣言し、保証する
この表現は、契約当事者(売主、ライセンサー、M&Aにおける対象会社の売却主など)が、**「特定の過去・現在の事実関係や、自らの権限・財務状況・対象物の権利関係が真実かつ正確であること」**を相手方に誓約・約束するために用いられます。
2)Representation(表明)と Warranty(保証)の英米法上の違い
一見すると類語を重ねた法律二重語(Legal Doublet)に思われますが、英米法(Common Law)の歴史的背景において、両者は異なる法的概念を有しています。
【知識補強】Representation と Warranty の本質的差違
- Representation(表明): 契約締結の判断材料として、過去または現在の特定の事実関係(例:過去に特許侵害の通知を受けたことがない等)が真実であることを相手方に提示・宣言する行為。事実と異なっていた場合は「不実表示(Misrepresentation)」となります。
- Warranty(保証): 対象事実が真実であることを自ら保証し、万が一虚偽・不正確であった場合には相手方に生じた損害を補償することを約定する契約上の約束。事実と異なっていた場合は「保証違反(Breach of Warranty)」となります。
実務で「represent and warrant」と2つの動詞を並べるのは、万一事実と異なった場合に、受領当事者が**「不実表示に基づく解除・訴訟」**と**「契約違反に基づく損害賠償請求」**の双方の法的救済(Cause of Action)を主張できるようにするためです。
3)表明保証違反(Breach of Reps & Warranties)における救済手段
表明保証された事実に虚偽や過誤があった場合(表明保証違反)、相手方は以下の法的手段を行使できます。
- 損害賠償請求(Damages): 虚偽の表明保証によって直接的・間接的に発生した損害の補償(Indemnification)を請求する。
- 契約解除(Rescission / Termination): 表明された事実が「重要(Material)」であり、不実表示(Misrepresentation)によって契約締結の基礎が損なわれた場合、契約自体を取消・解除する。
- 取引の中止(Condition Precedent): M&Aや不動産取引等において、クロージング(取引実行)までの間に表明保証違反が判明した場合、取引実行を拒絶する前提条件(Condition)として機能させる。
4)実務におけるリスクコントロール手法(知識限定・重要性限定・存続期間)
表明保証を行う当事者(責任を負う側)は、予期せぬ過大責任を回避するため、以下のドラフティング交渉を行います。
ア.知識限定(Knowledge Qualifier)
「自らが知らない事実」についてまで無限に保証させられるのを防ぐため、「to the best of its knowledge(その知る限り)」 や 「is not aware of(認識していない)」 という文言を挿入し、過失のない不知の事実に関する違反責任を免れます。
イ.重要性限定(Materiality Qualifier)
軽微な不正確さやわずかな手続漏れによって契約解除や補償請求をされるのを防ぐため、「in all material respects(あらゆる重要な点において)」 や 「material adverse effect(重大な悪影響)」 という文言を付加して範囲を絞り込みます。
表明保証責任の有効期間は、契約終了後も無期限に続くわけではありません。契約書内に「存続条項(Survival Clause)」を設け、「本条に基づく表明保証責任は、契約効力発生日から2年間存続する」のように責任期間を限定するのが一般的です。
5)類似・代替表現(covenant / guarantee / certify 等)との機能的使い分け
英文契約書には「約束・保証」を表す文言が複数存在しますが、その対象とする時制や法的機能に応じて以下のように厳格に使い分けられます。
ア.represent and warrant(既往・現在の事実関係の保証)
対象:過去および契約締結時点(現在)の事実関係。
「過去から現在において特定の事実が真実であること」を誓約する際に使用します。
イ.covenants(将来の義務履行の誓約)
対象:契約締結後(将来)の行動・義務の履行。
「契約期間中、特定の行為を行う/行わない(例:毎期財務諸表を提出する、競業行為を行わない)」という将来の行動指針を約束する場合には、represent ではなく 「covenants / agrees to」 を使用します。
ウ.guarantee(第三者による債務の保証)
対象:主債務者以外の第三者による履行動義・支払保証。
親会社が子会社の契約履行を保証する場合など、主たる義務以外の保証(保証人としての責任)を定義する際には 「guarantee」(名詞:guaranty)を使用します。
エ.certifies / declares(証明書・公的宣言)
対象:提出書類や確認書(Certificate)における内容の確認・宣言。
契約本文というよりも、添付の証明書や役員証明(Officer’s Certificate)などで「〜であることを証明する」と宣言する場面で用いられます。
2.例文と基本表現・語注解説
1)例文①:第三者の権利非侵害に関する表明保証(知識限定付き)
ベンダーが供給する技術に関して、第三者の特許権等の知的財産権を侵害していないことを「認識している範囲(Knowledge Qualifier)」で表明保証する標準的な条項です。
【英文】
Vendor represents and warrants that as of the Effective Date, Vendor is not aware of, nor has Vendor received notice of, any allegations or claims that the Technology infringes the patent or other proprietary rights of any third party.
【日本語訳(対訳)】
ベンダーは、本契約の効力発生日現在において、本技術が第三者の特許権またはその他の所有権(知的財産権)を侵害している旨のいかなる申し立てまたは主張についても認識しておらず、かつそのような通知も受けていないことを表明し、保証する。
【注記・重要語注】
- as of the Effective Date:効力発生日現在において(表明保証がなされる「基準時点」を明確に提示する重要表現)。
- is not aware of, nor has received notice of:認識しておらず、また通知も受けていない(知識限定の典型文言)。
- allegations or claims:申し立てまたは主張(クレーム)。
ここでは特許権、著作権、商標権、ノウハウ、営業秘密など、第三者が独占的に支配・所有する知的財産権(Intellectual Property Rights)全般を包括的に指しています。
2)例文②:契約締結権限および有効性に関する表明保証
ライセンサーが、契約を締結しライセンスを許諾するための正当な社内権限を有していることを表明保証する最も基本的な法人権限条項(Corporate Authority)です。
【英文】
Licensor represents and warrants to Licensee that Licensor has the authority to grant the license granted hereunder, and has all necessary corporate power and authority to execute and deliver this Agreement and perform its obligations hereunder.
【日本語訳(対訳)】
ライセンサーは、本契約に基づき許諾されるライセンスを許諾する権限を有しており、本契約を締結し、本契約に基づく自らの義務を履行するために必要なすべての法人としての権限および正当な権能を有していることを、ライセンシーに対して表明し、保証する。
【注記・重要語注】
- grant the license:ライセンス(使用許諾)を付与する。
- hereunder:本契約に基づき/本契約の下で(under this Agreement)。
- corporate power and authority:法人としての権限および正当な権能(取締役会決議などを経て正当に授権されていることを表す重ね言葉)。
単に契約に署名(Sign)するだけでなく、署名済みの契約書を相手方に交付・送付して効力を発生させる一連の契約締結行為全体を法的に指す慣用表現です。
英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。リーズナブルな料金・費用で承ります。
お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。
受付時間: 月~金 10:00~18:00
メールでのお問合せは、こちらから。
ホームページ:宇尾野行政書士事務所
