【この記事でわかること】
- 英文契約書の基本となるshall(義務)とmay(権利・許容・可能性)の正確な法的意味
- 類似助動詞・代替表現(will, must, should, be obligated to, be entitled to等)との明確な違いと実務的使い分け
- プレイン・イングリッシュ(Plain English)運動におけるshallの解釈リスクと現代ドラフティングの最新傾向
- 契約審査(リーガルチェック)で絶対に外せない当事者間の法的リスクと「パワーバランス」の見極め方
- そのまま使える実践的な5つの英文契約書例文・対訳と知識補強のための詳細な語注解説
英文契約書を解読・作成する上で、最も高頻度で登場し、かつ契約の根幹を支える単語がshallとmayです。
一般英語では「shall=~でしょう」「may=~かもしれない」と訳されることが多いですが、契約法務においては「shall=~しなければならない(義務)」「may=~することができる(権利・許容)」という厳格な法的意味を持ちます。
この2つの言葉の選択ひとつで、その条項が「強制力を持つ法的義務」になるか、単なる「主観的な選択肢」になるかが決定づけられます。本記事では、shall と may の正しい定義から、間違いやすい関連表現(will, must, should等)との使い分け、契約審査における注意点、実務例文まで徹底的に解説します。
1. shall の正確な意味と代替表現
英文契約書における shall は、契約当事者に対して「法的義務(Legal Obligation)」や「履行の強制」を課す目的で用いられます。
日本語訳としては、「~しなければならない」「~するものとする」と表現されます。契約相手に特定の作為(または不作為)を義務付け、不履行の場合には契約違反(Breach of Contract)や損害賠償請求の根拠となります。
実務上、shall と同義の法的効果をもつ代表的な代替表現には以下のようなものがあります。
- be obligated to do:「~する義務を負う」(義務であることを直接的に強調する厳格な表現)
- be required to do:「~することが求められる / 義務づけられている」(手続や要件の履行を義務付ける表現)
- agree to do:「~することに合意する」(約定文言として当事者の同意に基づく義務を規定する表現)
2. may の主な3つの用法(権利・許容・可能性)
英文契約書における may は、主に当事者の「権利(Right)」や「許容・権限(Discretion / Permission)」を授与するために使用されます。文脈に応じて以下の3つの意味に分類されます。
① 権利(Right / Entitlement)を表す may
当事者が特定の行為を行う法的権利を有することを示します。日本語訳は「~する権利を有する」「~することができる」となります。同義の代替表現としては be entitled to do や have the right to do がよく用いられます。
② 許容・許可(Permission / Discretion)を表す may
禁止されている事項に対して特定の例外的な行為を認めたり、当事者に裁量権を与えたりする場面で使用されます。日本語訳は「~することが許される」「~することができる」となります。同義表現として be allowed to do や be permitted to do が挙げられます。
③ 可能性(Possibility)を表す may
義務や権利ではなく、「特定の事象(違反や解除など)が発生し得る」という客観的な法的リスクや事態の発生可能性を示します。日本語訳は「~することがある」「~する可能性がある」となります。(例:Any breach of this Agreement may result in termination of this Agreement. / 本契約の違反は、本契約の解除をもたらすことがある。)
3. shallとmayを巡る法的リスクと類似表現(will, must, should等)の使い分け
契約書でよく見かける他の助動詞(will, must, should)は、shall や may とどのように異なり、どのように使い分けるべきでしょうか。法的な厳密性を欠くと意図しない解釈の対立を招くため、明確な整理が必要です。
① will との違い
will は本来、将来の予定や意図(Future Intent)を表す言葉です。そのため、かつては shall ほどの強い法的拘束力を持たないとされていました。
しかし、近年の米国を中心としたプレイン・イングリッシュ運動(Plain English Movement)の影響により、「shall は時代遅れで曖昧さを生みやすい(義務だけでなく宣言にも誤用されるため)」として、義務の規定に shall の代わりに will や must を使うスタイルが主流になりつつあります。ただし、従来の英国風ドラフティングや日本の伝統的な英文契約実務では、依然として「義務=shall」が最も安全で確実な標準とされています。
② must との違い
must は shall 以上に「避けて通れない絶対的な前提条件や手続上の要件」を強調する場合に使用されます。(例:The notice must be in writing. / 通知は書面によらなければならない。)「これを行わなければ手続が無効になる」という強い必要条件を示す際に適しています。
③ should のリスク
should は契約書で原則として使用すべきではありません。should は「~すべきである」という推奨や道徳的努力義務にとどまり、法的義務(Legal Obligation)を構成しないと裁判所で判断されるリスクが高いためです。
4. 契約レビューにおける実務チェックの着眼点
英文契約書の審査(リーガルチェック)を行う際は、「誰が主体か」と「shall / may の配置」をセットで観察し、当事者間のパワーバランスを検証します。
審査時には以下の4つの視点を徹底的に確認してください。
- 自社の義務(自社+shall):履行不可能な条件や過度に重いペナルティが課されていないか。不要な shall は避け、例外規定を確保する。
- 自社の権利(自社+may):行使したい権利が shall(義務)として縛られていないか。また、may(権利)として確実に確保されているか。
- 相手方の義務(相手方+shall):相手に行わせるべき重要事項(支払、納入、秘密保持等)が shall で明確に義務付けられているか(will や should に弱められていないか)。
- 相手方の権利(相手方+may):相手方の裁量権(may)が広すぎて、自社に不利益な一方的解除や条件変更を許していないか。
5. 実務で役立つ例文と詳細な語注解説(5パターン)
実際の英文契約書で頻出する shall および may の代表的な例文です。重要表現の意味や文法ポイントを詳細な語注・知識補強として記載しています。
・shall sell / shall purchase:双方に売買義務を発生させる最も定型的な双務契約の文言です。
・Product:頭文字が大文字になっているのは、本契約内で別途定義された「特定の製品(Defined Term)」であることを示します。
・wire transfer(電信送金):銀行間の電子口座振込を意味する契約実務の必須用語です。
・designated by(~によって指定された):過去分詞句として直前の「bank account」を後置修飾しています。
・acknowledges(確認する、承認する):事実関係や契約条件を当事者が認識・承諾していることを示す重要動詞です。
・except as otherwise expressly provided for(本契約で別途明示的に規定されている場合を除き):他条項との優先関係を整理する英文契約書の超頻出定型句です。
・be entitled to receive(受領する権利がある):may の類義語で、法的権利の保有を表します。
・Licensee / Licensor:ライセンシーは「ライセンスを受ける側」、ライセンサーは「ライセンスを与える側」を意味します。
・may request:要求することが「義務(shall)」ではなく「権利・選択肢(may)」であることを明示しています。
・may be performed:受動態に伴い「~によって実施されることができる」という許容・選択肢の範囲を示しています。
・accounting firm(会計事務所):専門職組織を指定する際の実務表現です。
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