shallとmayの意味と例文

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英文契約書特有の基本表現であるshallmayについて解説します。例文に訳をつけています。例文中の他の基本表現に注記しました。

1.解説:

1)shallについて

shallは、契約当事者が負う義務や強制を表します。

~しなければならない、~するものとするという意味になります。

同じ意味をもつ表現に、

be obligated to~

be required to~

があります。(下記の例文①例文②をご覧ください)

2)mayについて

may は、主に、以下の①または②のふたつの意味に使われます。

①ひとつは、権利を表します。

~する権利がある、~することができるという意味になります。

be entitled to~と同じです。(下記の例文③をご覧ください)

②もうひとつは、許可を表します。

~することが許されている、~することができるという意味になります。

be allowed to~と同じです。(下記の例文④例文⑤をご覧ください)

③この他に、may は、可能性を示すときにも使われます。

~の可能性がある、~のことがあるという意味になります。(次の例文をご覧ください)

Any breach of this Agreement may result in termination of this Agreement.

(訳):

本契約のいずれかの条項に違反した場合、本契約は解除されることがある

3)shallとmayをめぐる誤解と注意点

shallとmayは、英文契約書の基本的なルールですが、実際の契約書では、これらの言葉の使い分けが厳密でない場合や、誤解されやすい状況が存在します。

これらの注意点を理解することで、より正確な契約書レビューが可能になります。

ア. will、must、shouldとの違い

will:

willは、将来の事柄や単なる意思を表すため、shall(義務)ほどの強い法的拘束力は持ちません。

しかし、米国の一部の契約書では、shallの代わりにwillを「義務」の意味で使うこともあります。

ただし、解釈のブレを防ぐためにも、義務はshallまたはbe obligated toで明確に規定するのが安全です。

must:

mustは、shallよりもさらに強い「絶対的な義務」や「必要不可欠な条件」を表す場合があります。

例えば、The Party must notify the other Party in writing(書面で通知しなければならない)のように、書面での通知が唯一の方法であることを強調する際に使われます。

should:

shouldは、単なる「推奨」や「〜すべきである」という道徳的な義務を示すことが多く、法的義務としては弱いため、原則として契約書で使うべきではありません。

イ. shallの持つ二つの意味

shallには、厳密には「義務(You shall do X)」と「許可(You may do X)」という2つの意味があります。

しかし、現代の英文契約書では、後者の「許可」の意味でshallが使われることはほとんどありません。

義務はshall、権利はmayと使い分けるのが現在の主流です。

ウ. 義務と権利の混同を避ける

契約書のレビューにおいて最も注意すべき点は、「誰が何をshallし、誰が何をmayするのか」を明確にすることです。

自社が負う義務(shall):
義務は最小限に抑え、履行が不可能な義務が含まれていないか確認します。

自社が持つ権利(may):
権利は最大限に確保できるよう、条項が自社の権利を不当に制限していないか確認します。

相手が負う義務(shall):
相手の義務が明確かつ強制力を持つようにshallが使われているか確認します。

相手が持つ権利(may):
相手が持つ権利が、自社にとって不利益にならないか確認します。

shallとmayの使い分けは、「誰が何をする責任を負い、誰が何をする権利を持つか」という、契約における最も重要なパワーバランス(当事者間の力関係)を規定するものです。

この原則を理解していれば、契約書が当事者に何を求めているのかを正確に読み解くことができます。

2.例文

(注):shallとmayは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。

1)shall(~しなければならない、~するものとする)- 例文①

Seller shall sell to Buyer, and Buyer shall purchase from Seller the Product.

(訳):

売主は、買主に製品を販売し、買主は、売主から当該製品を購入するものとする

2)shall(~しなければならない、~するものとする)- 例文②

Buyer shall pay Seller the Purchase Price by wire transfer to a bank account designated by Seller.

(訳):

買主は、売主が指定した銀行口座への電信送金により、売主に購入金額を支払うものとする

(注):  

*wire transferは、電信送金という意味です

3)may(~する権利がある、~することができる)- 例文③

The Employee acknowledges that, except as otherwise expressly provided for in this Agreement, he/she will not be entitled to receive any overtime pay, bonus pay, or other cash compensation for performance of the Work Duties, in addition to the Salary, even if other employees of the Company may receive such compensation.

(訳):

従業員は、本契約で別途明示的に規定されている場合を除き、給与に加えて、勤務時間外の給与、ボーナス、またはその他現金報酬を受け取る権利は、たとえ会社の他の従業員がこのような報酬を受け取る権利がある場合であっても、有しないことを確認する。

(注):

acknowledgesは、確認するという意味です。くわしくは、acknowledgeの意味と例文をご覧ください。

*except as otherwise expressly provided forは、別途明示的に規定されている場合を除きという意味です。くわしくは、except asとexcept as provided inの意味と例文をご参考にしてください。

be entitled toは、~する権利を有するという意味です。

4)may(~することが許されている、~することができる)- 例文④

Licensee may request Licensor to provide technical training or technical assistance relating to the manufacture and sale of the Royalty Products.

(訳):

ライセンシーは、ロイヤリティ製品の製造および販売に関する技術トレーニングまたは技術支援の提供をライセンサーに要求することができる

5)may(~することが許されている、~することができる)- 例文⑤

The audit may be performed by Vendor personnel or by an accountant or accounting firm hired by Vendor.

(訳):

監査は、ベンダーの担当者、またはベンダーが雇用した会計士または会計事務所が実施することができる

 

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