契約の条項 - 相殺条項

英文契約書・日本語契約書の作成・翻訳・チェックの専門事務所です。電話:042-338-2557 宇尾野行政書士事務所

1.相殺

① 相殺とは

売主が、買主に対して100万円の売掛金債権をもっていたとします。逆に買主は、売主に対して100万円の貸金債権を持っているとします。

この場合において、売主または買主が一方的な意思表示をすることにより、対等の金額である100万円にて、両者の債権債務を消滅させることができます。これを相殺といいます。

② 相殺適状

民法では、相殺は、両者の債権債務が弁済期にあること、つまり支払い期日にきていることを条件に行うことができるとされています。 このようにお互いの債権が相殺できる状況にあることを相殺適状といいます。(民法505条)

③ 相殺の担保的機能

債権者にとって、相殺は、いつでも支払いを簡略にする便宜的な決済機能であるといえます。加えて、いつでも相殺することにより自己の債権の弁済を確保できるという担保的機能をもっていることがあげられます。

2.相殺条項

① 相殺条項とは

相殺条項は、売買取引基本契約などに利用されます。債権債務を随時、相殺により精算できることについて定めており、債権回収のリスクを軽減するための条項です。

② 相殺予約 

債務を負ったときは、相殺適状であるかどうかにかかわらず、自社の債権と相殺できる旨を定めます。

民法の相殺の規定は、双方の対立する債権が弁済期にあることが要件となっています。そのため、弁済期まで待たなければならず、迅速な相殺は難しくなります。

そこで、取り決めによりお互いが対立する債権を持った場合には、弁済期であるかどうかにかかわらず、いつでも相殺できるようにしておくと迅速な債権回収ができることになります。 

たとえば、継続的売買取引を行っている最中、売主が買主に対して債権を有することがあり得ます。その際に、速やかに相殺という手段で決済することができれば、売主としては債権回収の手間が省けます。また、債権を回収できないというリスクを回避することができます。

2.相殺条項の書き方

② 一方当事者を双債権者にする - 売主に相殺権をもたせる場合

「第○条 (相殺)
 は、本契約又は本契約に限らないその他の契約等に基づきに対して負担する債務と、本契約又は本契約に限らないその他の契約等に基づきに対して有する債権とを、その債権債務の期限にかかわらず、いつでもこれを対当額において相殺することができる。」

② 双債権者を変更する - 買主に相殺権を認める場合

「第○条 (相殺)
 は、本契約又は本契約に限らないその他の契約等に基づきに対して負担する債務と、本契約又は本契約に限らないその他の契約等に基づきに対して有する債権とを、その債権債務の期限にかかわらず、いつでもこれを対当額において相殺することができる。」

③ 双債権者を変更する - 双方に相殺権を認める場合

金銭債権であれば、当事者の一方のみが、いつでも相殺できるとするのは相殺の本来の趣旨からいって問題があるかもしれません。したがって、当事者の双方が相手方に対して金銭債権を持っているときはいつでも相殺できるようにします。

「第○条 (相殺)
 甲又は乙は、本契約又は本契約に限らないその他の契約等に基づき相手方に対して負担する債務と、本契約又は本契約に限らないその他の契約等に基づき相手方に対して有する債権とを、その債権債務の期限にかかわらず、いつでもこれを対当額において相殺することができる。」