契約不適合責任 - 追完請求権と代金減額請求権とは

英文契約書・日本語契約書の作成・翻訳・チェックの専門事務所です。電話:042-338-2557 宇尾野行政書士事務所

1.契約不適合責任

現行民法で規定されていた売買の「瑕疵担保責任」が、改正民法では「契約不適合責任」に変更されました。特定物売買の「瑕疵担保責任」についての「隠れた瑕疵」という要件はなくなり、特定物売買かどうかにかかわらず「目的物が契約内容に適合していないこと」という要件に変更されました。

そして、買主の救済手段として請求できる内容が増えました。

現行民法で規定されている損害賠償請求と契約の解除に加えて、「履行の追完請求」「代金減額請求」が新たに設けられました。

(改正民法562条1項、563条1項)

2.履行の追完請求権

1)履行の追完請求権とは

追完請求権とは、売買契約において売主が引渡した目的物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合の買主の請求権です。 改正民法では、以下の3つの方法が規定されています。(改正民法562条1項)

① 目的物の修補: 目的物に欠陥がある場合に、修理を行ってその欠陥を解消することです。

② 代替物の引渡し:目的物に欠陥がある場合に、その欠陥のある目的物と同様の代替物を引き渡すことです。

③ 不足分の引渡し:目的物に数量の不足がある場合に、その不足分を別途引き渡すことです。

2)履行の追完請求権のポイント

引き渡された目的物が契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます。

この場合、たとえ買主が一方を指定したとしても、買主に不相応な負担を課するものでないときには、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完(目的物の補修、代替物の引渡し又は不足分の引渡し)をすることができます。

たとえば、買主が、「不具合があるので新しい物と交換してほしい」といっても、売主は、「修理をして直せます」と返事して、修補を選択することができます。(改正民法562条1項但書)。

また、売主としては、民法の規定に従うと、上記のようなさまざまな追完の請求に応じなければなりません。そこで、契約書でその追完の請求を限定させることが考えられます。たとえば、追完請求の内容を特定したり、「修理費用が○○円以上になる場合は修補しない」と定めることも考えられます。

なお、注意点として、契約内容の不適合が買主の責めに帰すべき事由により発生している場合には、買主は追完請求を行うことができません。

3.代金減額請求権

1)代金減額請求権とは

売主が契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合には、買主の責めに帰すべき場合を除き、新たに代金減額請求権が認められました。

代金減額請求を行うには、買主は、 まずは、売主に対して相当の期間を定めて上記2の履行の追完を行うよう、催告をします。 その期間内に売主の追完がないときに、はじめて契約内容の不適合の程度に応じて、代金の減額を請求することができます。

ただし、次の場合は、催告する意味が失われているので、直ちに代金減額請求できます。

・履行の追完が不可能であるとき

・売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき

・契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約した目的を達することが出来ない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき

・その他、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

(改正民法563条1項2項)

2)代金減額請求権のポイント

・買主が、代金請求をもっと簡単に行いたいという場合には、契約書で、改正民法の手続きを得ることなく代金減額請求を行えるよう規定することが考えられます。

売主として、代金減額請求を拒否したい場合には、代金減額請求については、認めない旨を契約書に規定することも考えられます。

上記の改正民法規定の「特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約した目的を達することができない場合」については、契約書において、

・「契約をした目的」を特定する

・「特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ、目的を達することができない」ことについても同様に特定する

ことが重要です。

なお、注意点として、契約の不適合状態が、買主側の責めに帰すべき事由により発生した場合には、代金減額請求は行うことができません。