契約書の条項 - 危険負担

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1.危険負担とは:

危険負担の条項は、危険負担をどう処理するかについて定めています。

危険負担とは、 売買契約などの双務契約において、 債務者の一方の債務の履行が、その債務者の過失によらないで不可能となって消滅する危険(たとえば、商品が火災などにより滅失したときです。)を契約当事者のいずれが負担するのかという問題をいいます。

双務契約とは、契約当事者の双方が債務を負担する契約のことをいいます。たとえば、売買契約では、売主は商品の引渡債務を負い、買主は代金の支払い債務を負います。

2.現行民法の規定:

現行民法は、指定された中古車のような特定物の売買契約締結後に、契約当事者の帰責事由がないのに商品が滅失しときは、その危険を買主が負担すると定めています。(現行民法534条1項)

つまり、売買契約が締結された後、商品が当事者の責任でなく滅失したときでも、買主が売主に代金を支払わなければならないとされています。買主としてみれば、商品は受け取ることができないのに、代金を支払わなければなりません。

3.改正民法の規定:

このように現行民法の規定は、通常の取引の公平さを欠くことから、改正民法では、特定物の商品の滅失の危険が、その引渡し時に移転する旨に変更されています。

(改正民法567条)

4.危険負担の条項の書き方:

1)通常の場合:

例①:「本件物品の引渡前に、乙の責めに帰さない事由により、本件物品に生じた滅失、毀損、減量、変質、その他一切の損害は、甲が負担する。」

例②:「本件物品の引渡前に生じた本件物品の滅失、毀損、減量、変質、その他一切の損害は、乙の責に帰すべきものを除き、甲が負担し、本件物品の引渡後に生じたこれらの損害は、甲の責に帰すべきものを除き、乙が負担する。」

2)危険の移転時期を変更する場合(買主に有利にした場合):

「本件物品の代金完済前に生じた本件物品の滅失、毀損、減量、変質、その他一切の損害は、乙の責に帰すべきものを除き、甲が負担し、本件物品の代金完済後に生じたこれらの損害は、甲の責に帰すべきものを除き、乙が負担する。 」