消滅時効は、権利を行使しない債権者を、保護しない制度です。
現行民法では、債務者が債務を承認すると、消滅時効の期間をゼロにする「時効の中断」 の制度があります。(改正民法では、「時効の更新」 に呼ばれます。)
しかし債権者と債務者が解決策を話し合っていても、債務の承認となるわけではなく、そのような場合にも消滅時効は止まらず、時効の完成が近づきます。時効の完成が近くなると時効の進行を止めるには、債権者は裁判に持ち込まざるを得ず、平穏な解決への妨げになります。
改正民法では、債権者と債務者が権利について話し合いを行っている間は、時効の完成が猶予されるという「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」制度が設けられました。これにより裁判に持ち込むのでなく、話し合いによる解決への道が可能となりました。
この場合、話し合いが債権者の口約束だけのこともありえるので、債権者と債務者が話し合っていることを書面に残す必要があります。
最初に、話し合いを行う旨の合意を書面にすると、消滅時効の完成が最長1年まで猶予されます。
1年の期間が満了するまでに、再度、話し合いをする旨の書面を作成すれば、最大で5年間、時効の完成が猶予されます。
(改正民法151条)