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今回は、約款型の英文契約書であるGeneral Terms and Conditions(一般取引条件)をめぐって問題となりうるBattle of Forms(書式の争い)について解説します。
1.Battle of Forms(書式の争い)とは
Battle of Forms(書式の争い)とは、契約交渉の場面で、両当事者がお互いに、自社に有利になる内容の契約の書式を相手方に送って、契約を成立させようと競い合うことをいいます。
Battle of Formsは、約款タイプの契約書であるGeneral Terms and Conditions(一般取引条件)をめぐっておきます。
2.Battle of Formsが起きる例
売買契約を例にとります。
売買契約は、売主の申込みと買主の承諾で成立します。
最初に、売主が見積書を買主に提示します。見積書の裏面には、契約の条件を示す売主の約款が記載されています。
これが売主からの申込みとなります。
売主の申込みである見積書に対して、買主が注文書を送付します。注文書にはその裏面に、契約の条件を示す買主の約款が記載されています。
この時点で、買主は、売主の申込みである見積書と約款に対して、注文書の裏面に記載された買主の約款を提示しています。
ここで、買主は、売主の申込みを拒絶して、新たな申込みをしていることになります。
そして、この次に、売主は、買主の注文書に対して、注文請書を送ります。注文請書にはその裏面に、契約の条件を示した売主の約款が記載されています。
この時点でも、売主は、買主の注文書と約款に対して、注文請書の裏面に記載された買主の約款を提示しています。
今度は、売主が買主の申込みを拒絶して、新たな申込みをしていることになります。
裏面の約款をめぐって、以上のような状態がつづくと、いつまでたっても、売主と買主の合意がなされず、契約が成立しないままとなります。
3.表面条項と裏面約款
見積書、注文書、注文請書の表面に記載されている条項は、製品の品質、価格、数量、支払条件など、当事者間で協議・合意された取引条件であり、通常、問題は生じません。
しかし、裏面の条項(約款)は、補償、紛争解決、準拠法、知的財産権、製造物責任など、当事者双方の利害に直接係わる条項を多く含んでおり、また自社にできるだけ有利になるよう詳しく規定して作成されてことがほとんどであり、合意は困難であることが多いといえます。
4.契約成立の取り扱いルール
Battle of Formsについて、契約の成立をどうするかの取り扱いについては、いくつかのルール・考え方があります。
そのひとつが、最後に相手方に送った当事者の約款が優先されるとするもので、Last Shot Ruleと呼ばれます。
5.留意点と対処
相手からおくられてきた約款をそのままにして、異議を唱えないとLast Shot Ruleが適用されるリスクがあります。
対処としては、以下のようなやり方が考えられます。
①相手の約款を受けたままにしない。相手が折れるまで、こちらの約款を最後まで送り返す。
②相手の約款に異議を表明する。約款で同意できない条項について相手に書面で通知する。
③約款で同意できない条項について、Amendment Agreement(変更合意書)を締結することにより、双方が合意できる内容に修正する。(最良の策ですが、実現が容易でないのも事実です。)
④双方の約款でどうしても合意できない場合は、取引のメリット・デメリットを検討して、裏面約款の不一致を残したままにして、表面条項の合意した条件のみで取引を開始する。
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