Anti Social Forces(反社会的勢力排除の条項)

【この記事でわかること】

本記事では、英文契約書における「反社会的勢力排除条項(Anti-Social Forces Clause)」の基礎知識、日本企業が当事者となる契約での必要性、条項の具体的構成(定義・表明保証・解除と損害賠償)、および実務でそのまま使える例文・和訳・重要英単語の解説を詳しくお届けします。

1.解説:Anti-Social Forces(反社会的勢力排除条項)とは

1)Anti-Social Forcesの概要と必要性

Anti-Social Forcesとは、英文契約書における「反社会的勢力排除条項」のことを意味します。

日本では、現在すべての都道府県で「暴力団排除条例」が制定・施行されています。この条例では、事業者に対して契約締結時に反社会的勢力の排除を書面に定めることを「努力義務」として課しているため、日本語の契約書では反社会的勢力排除条項を盛り込むことが一般的(実務上の必須事項)となっています。

一方で、海外のクロスボーダー取引における一般的な英文契約書(英米法ベースの標準書式等)では、概念として反社会的勢力(Anti-Social Forces)という独自のカテゴリー自体が一般的ではなく、同様の目的には「反腐敗防止(Anti-Bribery / FCPA)」や「経済制裁(Sanctions / OFAC)」の条項が用いられることが大半です。
しかし、日本企業が当事者となる英文契約書においては、日本の法規制遵守(コンプライアンス)や自社のレピュテーションリスク回避の観点から、英文であっても「Anti-Social Forces」条項を明記する必要性が非常に高くなります。


2)Anti-Social Forces(反社会的勢力排除条項)の実務上の構成

【英文契約書の基礎知識:実務上の視点】
反社会的勢力排除条項は、英文契約書の実務分類において「表明保証および誓約(Representations, Warranties and Covenants)」ならびに「解除・契約終了(Termination)」に直接連動する一般的な一般条項(General Provisions)の一種です。

この条項の最も大切な機能(specific function)は、契約当事者およびその経営陣・株主・関与者が反社会的勢力でないことを確定させ、万が一違反やその疑いが生じた場合に、催告なしで直ちに契約を解除し、生じた損害の全面的な補償を求める法定・約定手続を確保することにあります。

リーガルチェックの現場では、自社を守る権利(rights of use)として、「定義の網羅性」「表明保証の範囲」「違反・違反疑い時の即時無催告解除権および損害補償請求権」が明確に規定されているかを精査します。

具体的かつ実務的な規定内容は、主に以下の3つの要素で構成されます。

  1. 反社会的勢力に関係する個人・団体の定義: 暴力団、暴力団員・準構成員、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、知的財産犯罪集団、不当要求を行う者などの明確な定義
  2. 当事者が反社会的勢力に属さず、関与しないことの約束: 現在・過去・未来にわたる表明保証(Representations and Warranties)および誓約(Covenants)
  3. 違反時および違反の疑いがある場合の救済措置: 無催告での直ちにする契約解除(Immediate Termination)および損害賠償・補償(Indemnification)の請求権

2.例文と基本表現

以下は、売主が反社会的勢力の排除を買主の義務として規定している標準的な例文です。(※主要な基本表現を強調表示しています)

Anti-Social Forces(反社会的勢力排除条項)– 例文

【英文】

ANTI SOCIAL FORCES.
The term “Anti Social Forces” shall mean one or more persons or entities coming under any of the following items: a. “Bouryokudan” as defined in Article 2 of the Act on Prevention of Unjust Acts by Organized Crime Group Members in Japan and/or any organization affiliated to any Bouryokudan; b. Member or quasi-member of any Bouryokudan and/or organization as described in a, above; c. Sokaiya (professional extortionist or corporate racketeer attending shareholders’ meetings), a person or a member of an entity engaging in criminal activities under the pretext of conducting a social campaign or political activities, or a criminal group specialized in intellectual property crime, etc.; d. Any other person or entity that makes unreasonable demands accompanied by threat of violence, use of force, intimidating words, or fraudulent means for the purpose of obtaining unjust financial gain; or e. Any other person or entity that demands, acts, or behaves in a manner that makes use of the influence of any of the above.
Buyer represents, warrants and covenants to Seller that (a) Buyer is not now, nor has ever been, nor will exploit, an Anti Social Forces; and (b) No board member, executive officer or other employee substantially involved in the management of, leading shareholder, or sponsor of Buyer is an Anti Social Force or is engaged in a relationship with any Anti Social Forces. In the event that Buyer discovers that it is in breach of any of the representations or covenants set forth in this Section, Buyer shall immediately report such fact to Seller. If Buyer breaches or is suspected of any violation of any of the representations or covenants set forth in this Section, Seller may immediately terminate this Agreement, in whole or in part, without giving any notice or taking any other procedure and may seek from Buyer indemnification for any damages suffered as a result of such breach or violation.

【和訳】

反社会的勢力排除
「反社会的勢力」とは、以下のいずれかに該当する一つ以上の個人または団体を意味する。a. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条に定義する暴力団または暴力団の関連団体。b. 上記aの暴力団または関連団体の者もしくはこれに準ずる者。c. 総会屋(株主総会に出席する職業的恐喝者または企業に対するゆすり屋)、社会運動もしくは政治活動を実施することを口実にして犯罪活動に従事する者もしくは団体の構成員または知的財産犯罪などを専門とする犯罪集団; d. 不正な金銭的利益を得るために、暴力の脅威、武力の行使、脅迫的な言動または詐欺的な手段により不当な要求を行うその他の者もしくは団体; e. 上記のいずれかの影響を利用する方法で要求し活動するその他の者または団体。
買主は、売主に対し、(a)買主が現在も過去も反社会的勢力ではなく、または今後も関与しないこと (b)買主の経営、主要株主もしくは出資者に実質的に関与する取締役、執行役員もしくは従業員が反社会的勢力でなく、または反社会的勢力との関係に従事していないこと、について表明し、保証し、誓約する。本セクションに規定する表明または誓約のいずれかに違反することを買主が発見した場合、買主は直ちにその事実を売主に通知する。買主が本セクションに規定する表明もしくは誓約のいずれかに違反し、または違反の疑いがある場合、売主は、なんら通知その他の手続きを要することなく、本契約の全部もしくは一部を直ちに終了し、買主に、かかる違反の結果として被った損害の補償を求めることができる。

【注記・語注解説】

  • persons or entities: 「個人または団体」という意味です。個人と団体のいずれも契約当事者や反社会的勢力となり得るため、英文契約書では頻出する包括的な表現です。
  • the Act on Prevention of Unjust Acts by Organized Crime Group Members: 日本の「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)」の英文公式名称です。
  • any organization affiliated to: 「〜の関連団体」という意味です。
  • extortionist: 「恐喝者」を意味します。
  • corporate racketeer: 「企業に対するゆすり屋(総会屋)」を意味します。
  • shareholders’ meetings: 「株主総会」を意味します。
  • under the pretext of: 「〜を口実にして / 〜という名目で」という意味の重要フレーズです。
  • for the purpose of: 「〜のために / 〜を目的に」という意味の定型表現です。
  • makes use of the influence: 「〜を利用する」を意味する makes use of と、「影響(力)」を意味する the influence の組み合わせで、「影響力を利用する」という意味になります。
  • represents, warrants and covenants to: 「〜に対し表明し、保証し、誓約する」という意味です。事実の表明(represent)、内容の保証(warrant)、および将来の約束・義務(covenant)を並べる英文契約書の厳格な定型構文です。
  • in breach of: 「〜に違反して / 〜違反で」という意味です。
  • the representations or covenants: 「(契約上の)表明保証または誓約」という意味です。
  • breaches or is suspected of any violation: 「違反し、または違反の疑いがある」という意味です。「違反の確定」だけでなく「疑い(suspected)」の段階で解除手続きに入れるようにする点が実務上の防御ポイントです。
  • in whole or in part: 「全部または一部」という意味です。
  • seek from Buyer indemnification for any damages: 「買主に(被った)損害の補償を求める」という意味です。

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