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英文契約書の条と項の表現であるarticle, clause, provision, stipulation, section, paragraph, covenant, particularsについて、とりあげます。
解説:
1)日本語の契約書の条文
日本語の契約書では、法令の条文構造に従って、条文の区分は、
条、項、号
の順番となっています。
更に、ブレークダウンする場合は、
前段、中段、後段、本文、但し書き
と続きます。
2)英文契約書の条文
一方、英文契約書では、条と項を示すものとして
article, clause, provision, stipulation, covenant, section, paragraph, particulars
の表現があります。
しかし、英文契約書では、これらの表現の使い分けについては、明確なルールはありません。
実際、これらの表現がバラバラに使われています。
契約の当事者が、これら条と項の表示の仕方について、お互いに合意ができていることが重要で、この合意ができていれば、どのようにつかっても構いません。
(ご参考):
covenantについては、条と項以外の別の意味もあります。くわしくは、covenantの意味と例文をご覧ください。
3)法務省の表示方法(ご参考)
法務省の日本法令外国語訳推進会議が、法令の構成についての英語訳を以下のようにまとめています。
英文契約書を自ら起案・作成する場合は、条、項、号の統一的な表示方法として、これに従うやり方もあります。
目 次 Table of Contents
編 Part
章 Chapter
節 Section
款 Subsection
目 Division
条 Article
項 paragraph (1)(2)(3)
号 item (i)(ii)(iii)
イロハ (a)(b)(c)
(1) (2) (3) 1. 2. 3.
(i) (ii) (iii) i. ii. iii.
本 文 main clause
枝 番 号 -1, -2, -3
ただし書 proviso
前 段 first sentence
後 段 second sentence
附 則 supplementary provisions
別表第…(第…条関係)appended table … (Re: Article …)
項 row
欄 column
別記様式 appended form
4.実務でよく使われる条文構成の類型と使い分け
英文契約書の条文構成に厳格なルールがないとはいえ、実務においては、主に「Article/Section方式」と「Clause方式」という二つの主要な構成パターンが存在し、それぞれ異なる使われ方をします。
ア. Article/Section方式(北米・日本企業に多い)
大規模な契約や、法務省の推奨とも整合性が高い、階層的な構成パターンです。
条(大きな区切り):
Article
項(条の下の区切り):
Section
条をArticleとした場合、その下の項はSectionとするのが一般的です。
細分化:
Paragraph(paragraphは項以下のブレークダウンにも使われる)
この方式では、Article 5, Section 2(a) のように、階層を明確に区別し、参照の明確性(例:Section 5.2(a))を高めます。
なお、条の最上位にArticleを使うかSectionを使うかは契約書全体の規模や慣習によります。
イ. Clause方式(英国・ヨーロッパ企業に多い)
契約全体を通じてClauseという単語で条文を統一し、番号で階層を示すパターンです。
条・項のすべて:
Clause
例:
Clause 1.1、Clause 2.3
細分化:
Paragraph
Clauseの下の細分化として、paragraphやsub-paragraphを用いることがあります。
ウ. 抽象的な「規定・条件」を表す用語
provisionとstipulationは、特定の条や項を指す言葉ではなく、契約の「規定」や「条件」という抽象的な意味合いで使われます。
provision:
契約の「規定」や「条項」全般を指す最も一般的な言葉。
例:
The provisions of this Agreement shall govern…(本契約の規定が適用される…)
stipulation:
特定の合意事項や厳密な条件を指す、やや硬い表現。
例:
This contract includes a stipulation regarding confidentiality.(本契約には秘密保持に関する規定(条件)が含まれる。)
実務では、一つの契約書内でarticleとclauseを混在させると混乱を招くため、どちらかの構成パターンに統一することが重要です。
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