bona fideの意味と例文

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英文契約書でラテン語の表現であるbona fideについて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳と語注をつけました。

1.解説

1) bona fide とは

bona fide は、ラテン語由来の表現で、二つの意味があります。

in good faith(誠実な善意の

特定の事情を知らない、詐欺行為や不正行為がなく信頼できる、という意味です。

これは、「悪意がない」「不当な意図がない」というニュアンスで使われます。

(例):

・bona fide purchaser/holder (善意の買受人/ 善意の 所有者):

利害関係のある第三者の関与や知識なしに購入・取得した善意の購入者や所有者。例えば、盗品とは知らずに購入した人などを指します。

authentic, legitimate(真正の、合法の):

本物である、正真正銘である、という意味です。

これは、「偽りがない」「実体がある」というニュアンスで使われます。

(例):

・bona fide merchants(真正な商人):

認可を受けた適格な商人

・bona fide marriage (真正な結婚):

たとえば、永住権をとるための偽りの結婚でなく婚姻の意思がある結婚

・bona fide residence(真正な住居):

偽りでない場所

2)契約レビューの重要ポイント:Bona Fideの解釈と戦略

bona fide は、契約書において、ある行為や状態が「誠実であること」「善意であること」「真正であること」を要求したり、それによって特定の法的効果を発生させたりする際に用いられる重要な表現です。

このフレーズの解釈は、当事者の義務、権利、そして紛争時の証明責任に直接影響を与えるため、契約レビュー時には以下の点を注意深く検討することが不可欠です。

ア.どちらの意味で使われているかの確認

なぜ問題になるのか?:

bona fide には「誠実・善意」と「真正・合法」という二つの主要な意味があり、文脈によってどちらの解釈をすべきか明確でない場合、当事者間で解釈の相違が生じ、紛争の原因となる可能性があります。

確認すべきポイント:

文脈の精査:

bona fide が使われている条項の前後関係を慎重に読み込み、どちらの意味が適切であるかを判断しましょう。

例えば、「bona fide offer」(例文②例文④)は通常「真正な申し出」を意味し、単なる探りや偽りのものではないことを強調します。

「bona fide employee」(例文①)は「真正な従業員」、つまり名義だけではなく実際に雇用されている従業員であることを指します。

定義条項の有無:

契約書内に bona fide または関連用語の定義(Definitions)が設けられていないか確認しましょう。

もしあれば、その定義に従います。

イ.「善意」または「真正」の証明責任と基準

なぜ問題になるのか?:

bona fide であることが、ある権利を行使するための条件となっている場合、その「善意」または「真正」であることを証明する責任が、その権利を行使したい当事者に課される可能性があります。

この証明が難しい場合、権利の行使が妨げられるリスクがあります。

確認すべきポイント:

証明基準の明確化:

もし可能であれば、bona fide であることを判断するための具体的な基準や客観的な要素を契約書に明記することを検討しましょう。

例えば、「合理的な第三者が通常行うような調査を行った結果、不正の事実を知り得なかった場合」といった記述があれば、証明のハードルが下がります。

証拠の準備:

将来の紛争に備え、bona fide であることを裏付けるための文書や記録(例:契約締結に至るまでの交渉経緯、デューデリジェンスの記録、内部承認プロセス)を適切に保管しておくことが重要です。

ウ.権利行使または義務履行への影響

なぜ問題になるのか?:

bona fide が特定の行為の条件となっている場合、その条件を満たさないと、意図した権利行使ができなかったり、義務が履行されなかったりする可能性があります。

確認すべきポイント:

「bona fide offer」の受領:

例文②例文④のように、売主がbona fide offer を受けた場合に特定のアクション(買主への通知など)を行う義務が生じる場合、その「bona fide」の判断基準が自社にとって有利か不利かを検討しましょう。

例えば、第三者からのオファーが「bona fide」であると判断できる十分な客観的証拠が要求されるかなどです。

「bona fide price」での売却中止:

例文③のように、売主がbona fide price の申し出を拒否した場合でも、代理人に手数料支払い義務が生じるケースでは、「bona fide price」の定義が重要です。

これが市場価格と大きく乖離していないか、また売主が拒否できる「正当な理由」が契約に明記されているかなどを確認しましょう。

エ.法的リスクの軽減策

なぜ問題になるのか?:

bona fide という表現自体は、ある程度の柔軟な解釈を許容しますが、同時に曖昧さも伴います。

この曖昧さが、紛争の火種となることがあります。

確認すべきポイント:

より具体的な表現への変更:

可能であれば、bona fide という抽象的な表現を避け、より具体的で客観的な基準に置き換えることを検討しましょう。

例えば、「真正なオファー」ではなく、「市場価格の〇%以上の、書面による、法的拘束力のある申し出」といった具体的な条件を定めることで、解釈の余地を減らすことができます。

裁判管轄と準拠法:

bona fide の解釈は、準拠法(適用される法律)によって異なる場合があります。

また、紛争が生じた場合にどの国の裁判所で争うか(裁判管轄)も重要です。

これらの条項が自社にとって有利な選択となっているか、再確認しましょう。

bona fide は、契約当事者間の信頼関係や公平性を確保するために重要な役割を果たす表現です。

そのレビューにおいては、単語の意味だけでなく、それが契約全体の権利義務、リスク配分にどのような影響を与えるかを総合的に判断し、必要に応じてより具体的で客観的な条項に修正交渉を行うことが、契約の実効性を高め、将来的な法的リスクを最小限に抑える上で不可欠となります。

2.例文と基本表現

(注):以下の①~④の例文は、いずれも真正なの意味で使われています。

(注):bona fideは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。

1) bona fide の例文 ①:

受託者は、真正な従業員以外の個人を雇用していません。

Contractor agrees that its firm has not employed or retained any company or person, other than a ABC Services Contract bona fide employee working for Contractor, to solicit or secure this contract  

(訳):

受託者は、本契約を獲得するため、受託者で働くABCサービス社の真正な従業員以外の会社または個人を雇用し、または有していないことに同意する。

(注):

other thanは、以外のという意味です。

solicit or secureは、獲得するという意味です。類語による強調です。

2) bona fide の例文 ②:

売主が不動産物件の真正なオファーを受領した場合、買主に通知することができます。

The Buyer and Seller agree that the Seller may continue to market the Property for sale. If Seller receives an acceptable bona fide offer, Seller or Seller’s Agent may deliver written notice of the offer to the Buyer or the Buyer’s Agent.

(訳):

売主と買主は、売主が販売に向けて物件を継続して販売することに同意する。 売主が満足できる真正なオファーを受領した場合、売主または売主の代理人は、買主または買主の代理人に、当該オファーを書面にて通知することができる。

(注):

Agentは、代理人という意味です。

deliver written noticeは、書面にて通知するという意味です。

3) bona fide の例文 ③:

売主が不動産の売却中止を決定しても、代理人契約の終了前に、買主から真正な申し出があると、申し出が受けられたものとして、代理人に売却手数料の支払い義務が生じます。

In the event the Seller should decide not to sell the property prior to this real estate agency agreement’s terms ending, and the Seller is offered a Bona fide price from a buyer which they decline, the Agent shall be owed the commission for said sale as though the offer was accepted.

(訳):

売主が、この不動産代理契約の条件が終了する前に、不動産を売却しないことを決定し、売主が拒否する買主から真正な価格の申し出を受けた場合、代理人は、あたかも当該申し出が受け入れられたものとして、その売却の手数料支払いを受ける権利を有する。

(注):

In the eventは、~の場合にはという意味です。

be owed the commissionは、手数料支払いを受けるという意味です。

4) bona fide の例文 ④:

株主が、会社株式を購入する真正な申し出を受領し、申し出を受ける場合、購入条件について、会社と投資家に通知しなくてはいけません。

If any Principal Stockholder receives a bona fide offer from any person or entity to purchase from such Principal Stockholder any shares of the Company’s capital stock and any right or option to acquire any of such capital stock held by the Principal Stockholder upon specific terms and conditions, and if the Principal Stockholder proposes to accept such Purchase Offer, then the Principal Stockholder shall notify the Company and the Investors within ten days, of the terms and conditions of the Purchase Offer 

(訳):

主要株主が、個人または法人から当該主要株主から会社の資本株式を購入するという真正な申し出、および特定の条件で当該主要株主が保有する当該資本株式を取得する権利またはオプションを受け取った場合、そして、当該主要株主がそのような購入の申し出を受け入れることを提案する場合、当該主要株主は、購入提案の条件について、10日以内に会社と投資家に通知するものとする。

(注):

Principal Stockholderは、主要株主という意味です。

person or entity は、 個人または法人という意味です。 くわしくは、entityとpersonの意味と例文をご覧ください。

terms and conditionsは、条件という意味です。

 

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