breach of obligationの意味と例文

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英文契約書で、義務の違反を表す表現であるbreach of obligationとその関連表現ついて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳と語注をつけました。

1.解説:

1)breach of obligationとは

breach of obligationは、英文契約書の義務の違反を表す表現のひとつです。

breach of obligationは、義務の違反、債務不履行と訳されます。(下記の例文①をご覧ください)

2)breach of obligationの関連表現

関連表現として、以下のものがあります。

breach or threatened breach:

 違反又は違反のおそれという意味です。(下記の例文②をご覧ください)

in breach of~:

 ~に違反してという意味です。(下記の例文③をご覧ください)

in contravention of~:

 in breach of~と同じく、~に違反してという意味です。(下記の例文④をご覧ください)  

3)契約レビューの重要ポイント:Breach of Obligation
条項の戦略的理解

breach of obligation(義務の違反)は、契約の履行におけるリスク管理の根幹をなす概念です。

英文契約書において、この「違反」という事象がどのように定義され、その結果としてどのような影響が生じるのかを正確に理解することは、紛争発生時の自社の権利保護に直結します。

契約レビュー時には、以下の点を戦略的に検討することが極めて重要です。

ア.「違反」の定義と重大性

なぜ問題になるのか?:

「違反」の定義が曖昧だと、些細なミスが重大な契約解除事由とされたり、逆に重大な義務違反が見過ごされたりするリスクがあります。

確認すべきポイント:

「重大な違反(material breach)」の有無:

契約によっては、通常の「breach」と区別して「material breach」(重大な違反)という概念を設けることがあります。

契約解除や損害賠償の請求には「material breach」が必要とされることが多く、その定義(例:履行遅延の期間、損害額の基準など)を明確にしましょう。

軽微な違反の扱い:

例文①のように、軽微な違反(negligible)の場合に特定の救済手段が制限されるケースもあります。

自社が受領者側の場合、いかなる違反も看過しない姿勢を示すべきか、または一定の許容範囲を設けるべきかを検討しましょう。

違反の通知と是正期間:

違反があった場合に、相手方に書面で通知する義務や、違反を是正するための合理的な期間(cure period)を設ける条項が一般的です。

これは、直ちに契約解除や損害賠償に移行するのではなく、是正の機会を与えることで、契約関係の維持を図るための重要なメカニズムです。

イ.違反に対する救済措置(Remedies for Breach)

なぜ問題になるのか?:

義務違反があった場合の救済措置が明確でないと、紛争解決が長期化したり、適切な補償が得られなかったりする可能性があります。

確認すべきポイント:

損害賠償(Damages):

直接損害(Direct Damages):

違反によって直接的に発生した損害(例:未払い代金、修繕費用)は通常、請求可能です。

間接損害・派生損害(Consequential Damages, Indirect Damages):

逸失利益(lost profits)、機会損失(loss of opportunity)など、違反の結果として間接的に発生する損害の請求は、通常、免責条項(Exclusion of Consequential Damages)で制限または排除されることが多いです。

自社の立場(開示者か受領者か)に応じて、この免責の範囲を慎重に交渉しましょう。

liquidated Damages(予定損害賠償):

違反の種類に応じて、あらかじめ損害賠償額を定めておく条項です。

損害の算定が困難な場合に有効ですが、金額が不合理に高すぎると、ペナルティとみなされ無効となる可能性があります。

特定履行(Specific Performance):

金銭的損害賠償では十分な救済とならない場合に、裁判所が契約の履行を強制する措置です。

特に、代替不可能な物品やサービスの場合に考慮されます。

差止め命令(Injunctive Relief):

breach or threatened breach(違反又は違反のおそれ)があった場合に、違反行為を差し止めるよう裁判所に求める措置です(例文②)。

特に秘密保持義務違反など、情報漏洩による回復不能な損害(irreparable harm)が生じる恐れがある場合に不可欠な救済手段です。

without the need to show irreparable harm or the inadequacy of monetary damages(回復不能の損害又は金銭的損害賠償の不足を示す必要もなく – 例文②)という文言は、差止め命令の取得を容易にするために非常に重要です。

契約解除(Termination):

重大な違反があった場合の契約解除権は、重要な救済手段です。

解除後も存続する義務(Survival条項)も確認しましょう。

ウ.不可抗力(Force Majeure)と責任制限

なぜ問題になるのか?:

地震、戦争、パンデミックなど、当事者の合理的な支配が及ばない事象(beyond its reasonable control – 例文③)によって義務の履行が不可能または遅延した場合、通常の違反として扱われると、不当な責任を負うことになります。

確認すべきポイント:

不可抗力事由の定義:

不可抗力に該当する事由(天災、戦争、ストライキなど)を具体的に定義しましょう。

履行遅延/不履行の影響:

不可抗力事由が発生した場合、義務の履行が免除されるのか、それとも期間が延長されるのかを明確にしましょう(例文③)。

通知義務と是正努力:

不可抗力事由が発生した場合の相手方への通知義務や、事由の解消に向けての合理的な努力義務を規定することが一般的です。

エ.帰責性(Attribution)と免責(Exculpation)

なぜ問題になるのか?:

義務違反の責任がどちらの当事者にあるのか、また特定の状況下で責任が免除されるのかを明確にしないと、紛争解決が複雑になります。

確認すべきポイント:

責任の範囲:

「liable for」(~に責任を負う – 例文③)などの表現で、どのような状況で責任が発生するのかを確認しましょう。

過失の有無:

故意(willful misconduct)や重過失(gross negligence)の場合には、責任制限が適用されない旨を規定することがあります。

第三者行為の帰責:

再委託先や関連会社などの第三者の行為が、契約当事者の義務違反とみなされるかどうかも重要な論点です。

breach of obligation に関連する条項は、将来の紛争発生時の当事者の立場を大きく左右するため、契約の類型、取引の性質、自社のリスク許容度に応じて、極めて慎重に検討し、必要に応じて外部の専門家の助言を求めることが不可欠です。

これらの条項を深く理解することで、契約リスクを最小化し、安定的なビジネス関係を築くことができるでしょう。

2.例文と基本表現:

(注):breach of obligationは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。

1)breach of obligation(義務の違反、債務不履行)– 例文①

会社の義務の違反が取るに足らない場合、顧客は、損害賠償請求できません。

The customer shall not be entitled to claim for damages in lieu of performance, should our breach of obligations be negligible.

(訳):

会社の義務の違反が取るに足らない場合、顧客は、履行の請求の代わりに損害賠償を請求する権利を有しないものとする。

(注):

*be entitled toは、~する権利を有するという意味です。

*in lieu ofは、~の代わりにという意味です。詳しくは、in lieu ofの意味と例文をご覧ください。

*shouldは、(~の)場合はという意味です。

performanceは、履行という意味です。詳しくは、performとperformanceの意味と例文をご覧ください。

2)breach or threatened breach(違反又は違反のおそれ)– 例文②

契約に違反若しくは違反のおそれがある場合、非違反当事者は、裁判所からエクイティ上の救済を受けることができます。

In the event of a breach or threatened breach of this Agreement, the non-breaching party shall be entitled to obtain equitable relief from any court of competent jurisdiction, whether preliminary or permanent, without the need to show irreparable harm or the inadequacy of monetary damages as a remedy and without the requirement of having to post bond or other security.

(訳):

本契約に違反若しくは違反のおそれがある場合、非違反当事者は、一時的若しくは最終的にも、救済策として回復不能の損害又は金銭的損害賠償の不足を示す必要もなく、且つ担保若しくはその他の保証を預託する必要もなく、正当な管轄権のある裁判所からエクイティ上の救済を受ける権利を有する。

(注):

*equitable reliefは、エクイティ/ 衡平法上の救済という意味です。詳しくは、remedy at law(コモンローによる救済)とremedy in equity (エクイティによる救済)をご覧ください。

*any court of competent jurisdictionは、正当な管轄権のある裁判所という意味です。詳しくは、Jurisdiction(裁判管轄条項)をご覧ください。

*monetary damagesは、金銭的損害賠償という意味です。

*irreparable harmは、回復不能な損害という意味です。詳しくは、irreparable harmの意味と例文をご覧ください。

3)in breach of~(~に違反して)– 例文③

履行の遅延や不履行が、合理的な支配の及ばない原因に起因する場合、いずれの当事者も、契約に違反しません。

Neither party shall be in breach of the Contract nor liable for delay in performing, or failure to perform, any of its obligations under it if such delay or failure results from an event, circumstance or cause beyond its reasonable control.

(訳):

本契約のいずれかの義務の履行の遅延又は不履行が、合理的な支配の及ばない出来事、状況若しくは原因に起因する場合、いずれの当事者も、本契約に違反せず、かかる履行の遅延又は不履行については、責任を負わないものとする。

(注):

liable forは、責任を負うという意味です。詳しくは、liable forの意味と例文をご覧ください。

*failure to perform, any of its obligationsは、いずれかの義務の不履行という意味です。 failureについては、詳しくは、failureの意味と例文をご覧ください。

*beyond its reasonable controlは、合理的な支配の及ばないという意味です。詳しくは、beyond the reasonable control の意味と例文をご覧ください。

4)in contravention of~(~に違反して)– 例文④

契約の条項に違反する使用は、顧客自らの責任となります。

Any use in contravention of this provision or any provision of this agreement is at your own risk, and, if any part of this agreement is invalid or unenforceable under applicable law, the invalid or unenforceable provision will be deemed superseded by a valid, enforceable provision that most closely matches the intent of the original provision and the remainder of the agreement shall govern such use.

(訳):

本条項又は本契約の条項に違反する使用は、顧客の責任で行われ、本契約の一部が、適用法に基づき無効又は執行不能である場合、無効又は執行不能の条項は、元の条項の意図に最も近く有効で執行可能な条項に取って代わられたとみなされ、本契約の残りの部分は、かかる使用が適用されるものとする。

(注):

*unenforceableは、法的強制力がない、執行力のないという意味です。enforceableは、法的強制力がある執行力のあるという意味です。詳しくは、bindingとenforceableの意味と例文をご覧ください。

*applicable lawは、適用法という意味です。詳しくは、applicable lawの意味と例文をご覧ください。

be deemedは、とみなされという意味です。詳しくは、deemとconsiderの意味と例文をご覧ください。

superseded byは、に取って代わられるという意味です。

 

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