契約書の条項 - 期限の利益の喪失とは

期限の利益喪失条項は、継続的取引基本契約などに書かれる条項です。

1.期限の利益とは

期限とは、債権者と債務者が、たとえば、代金を「9月末日までに支払う」ということを定めたその期限のことです。この場合、債務者は9月末日になって支払えばよいことになります。つまり、債務者は、9月末日までの期間支払わなくてもよい利益を与えられたことになります。

このような期限が来るまでは債務の履行を請求されない債務者の利益のことが「期限の利益」ですこの場合、債権者が請求しても、債務者は9月末日までに支払いを拒否できることになります。

しかし、債務者に信頼関係を壊すような行為があった場合にまで債務者に利益を与える必要はなく、期限の利益をなくしてしまう必要があります。

2.期限の利益喪失条項 

民法は、債務者が①破産手続開始の決定を受けたり、②担保を滅失減少させたり、③担保提供義務があるのに提供しなかった場合に、期限の利益を喪失できると定めています。(民法137条)

しかし、この規定だけでは、債務者が商品を受け取った直後に最初の不渡り手形を出したとしても、債権者は何もできず、支払期日まで不安の中で待たなければなりません。また、債務者の財状況が悪化し、他の債権者から仮差押えを受けた時でも同様のことがいえます。

そこで、債権者としては、債務者に一定の事由が発生したときに期限の利益を喪失するという特約をして、その結果、内金と残金支払いの約定や、代金の分割払いの約定があったとしても、直ちに支払いを受けられる条項を設けておくことが重要となります。

3.期限の利益喪失条項 - 書き方の例

甲が以下の各号のいずれかに該当した場合、甲は乙からの通知催告等がなくても、当然に本契約及びその他乙との間で締結した契約から生じる一切の債務について期限の利益を失い、甲は乙に対して、その時点において甲が負担する一切の債務を直ちに弁済しなければならない。

① 本契約の一つにでも違反したとき
② 監督官庁から営業停止又は営業免許もしくは営業登録の取消等の処分を受けたとき
③ 差押、仮差押、仮処分、強制執行、担保権の実行としての競売、租税滞納処分その他これらに準じる手続きが開始されたとき
④ 破産、民事再生、会社更生又は特別清算の手続開始等の申立てがなされたとき
⑤ 自ら振り出し又は引き受けた手形もしくは小切手が1回でも不渡りとなったとき、又は支払停止状態に至ったとき
⑥ 合併による消滅、資本の減少、営業の廃止・変更又は解散決議がなされたとき
⑦ その他、支払能力の不安又は背信的行為の存在等、本契約を継続することが著しく困難な事情が生じたとき