業務委託契約の注意点

英文契約書・日本語契約書の作成・翻訳・チェックの専門事務所です。電話:042-338-2557 宇尾野行政書士事務所

1.業務委託契約とは

業務委託契約とは、委託者が、ある一定の業務・サービスの遂行を第三者である受託者に委託する契約をいいます。

業務委託契約は範囲の広い契約です。 業務委託契約は、経理、集金、清掃、運送、ソフトウエア開発、コンサルティングなど様々な分野で使用されます。企業のアウトソーシング化とともに需要が増えている契約です。

2.委任契約と請負契約

業務委託契約は、その内容によって、法律的に委任契約や請負契約に分類することができます。

請負契約:仕事の成果物の納品が行われる場合の契約をいいます。受託者は、成果物の完成に対して責任を負います(民法632条)。

例えば、建物の完成を目的とする建設工事契約や、ソフトウエアの納品を目的とするソフトウエア開発契約です。

委任契約:一定の業務の実施が行われる場合の契約です。受任者は、「委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」を負います(民法644条)。

例えば、仕事の完成責任を要件とぜず、業務の提供のみを目的とするコンサルティング契約や技術指導契約です。

3.業務委託契約の主な条項と注意点

業務委託契約の重要な条項と注意点は、以下のとおりです。

1)委託業務

この条項は、委託業務の内容を定めるものです。

委託業務の内容が明確になっているか、委託業務の内容に漏れがないかが、重要です。

委託業務の内容については、抽象的なものでなく、できる限り具体的に明確に記載しておくべきです。必要に応じて、委託業務の詳細を記した別紙資料を契約書に添付するという方法で、委託業務の内容を特定する方法もあります。

また、委託業務の内容を定める際には、「これに付随する一切の業務」という規定を加えます。この規定により、当初予想していた業務以外の付随業務が生じても、それも、委託業務の範囲に含めることができます。

条項の記載例:

「第○条 (委託業務)
甲は、乙に対して、以下の業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
① ○○○○
② ○○○○
③ これらに付随する一切の業務」

2)委託料

委託業務の対価を定める委託料の規定は、業務委託契約の重要な条項です。

委託料の金額、委託料の計算方法、支払い方法、実費の負担額等、全て明確に契約書に記載する必要があります。

条項の記載例:

「第○条 (委託料等)
1 本契約の委託料は、月額金○○円(消費税込)とする。
2 甲は、乙に対し、翌月末日までに当月の委託料を下記振込口座に振り込んで支払う(振込手数料は甲負担)。
 ○○銀行○○支店  普通預金
 口座番号  ○○○○○○
 口座名義  ○○○○○○
3 本件業務の遂行に必要な交通費、宿泊費は甲が負担し、その他本件業務の遂行に通常発生する実費は乙が負担するものとする。」

3)報告

委託者としては、受託者が委託業務の履行を確実に行っているかについて、できる限り、把握しなくてはいけません。

受託者が委託者の名前を勝手に使うなどして、委託者の信用を害するような業務遂行を行うことも考えられます。

委託者は、受託者の業務の遂行状況を随時報告させることが必要です。

記載例:

「第○条 (報告)
乙は、本件業務の履行の状況に関して、甲からの請求があったときは、その状況につき直ちに報告しなければならない。」

4)再委託の禁止

業務委託契約は、受託者の業務能力を信頼して契約するものです。

受託者が委託業務を勝手に第三者に再委託した場合、委託者としては、期待していた業務遂行の結果を得られない可能性があります。また、受託者を十分監視することができなくなる可能性もあります。

受託者に責任を持って委託業務を遂行してもらいたい場合には、再委託禁止条項を入れます。

条項の記載例:

「第○条 (再委託)
乙は、本件業務の全部又は一部を第三者に対し再委託することはできない。ただし、甲が書面による再委託の許可を事前にした場合はこの限りでない。」

5)契約期間

業務委託契約は、業務を一定期間遂行するものなので、契約の有効期間を明確に定めなくてはいけません。

以下の例では、当事者から異議が出なければ自動延長されるとしています。

条項の記載例:

「第○条 (契約期間)
本契約の有効期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までとし、期間満了日の1か月前までに甲乙いずれからも異議がなされないときには、本契約は期間満了日の翌日から起算して、同一内容にて更に1年間延長されるものとし、それ以後も同様とする。」