契約の条項 - 合意管轄

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1.合意管轄とは

取引にトラブルが発生して、訴訟を提起する必要が生じた場合、訴訟の提起は、その訴訟を管轄する裁判所にしなければなりません。

管轄する裁判所は、 法律(民事訴訟法、裁判所法など)で規定されています。 この法定管轄に従うと、自社に負担となる場合があります。

たとえば、契約当事者の住所地から離れた場所の裁判所に管轄がある場合、その裁判所に訴訟を提起しようとすると、その裁判所までの交通費や弁護士の日当、証人尋問の費用、などの費用の負担がのしかかかり、訴訟を断念することもなりかねません。また訴訟をするうえでの時間的なロスもあります。

このような場合、第一審に限って、当事者の書面による合意により管轄を定めることができます。(民事訴訟法11条)これを合意管轄といいます。 これにより、一方または双方に都合のよい管轄裁判所を定めることができます。

2.合意管轄にしない場合 - 法定管轄

合意管轄がない場合は、原則として、被告の所在地(本店所在地)を管轄する裁判所の管轄となります。(民事訴訟法41条)。

3.専属的合意管轄

合意管轄の条項を「〇〇裁判所を合意管轄裁判所とする」と記載すると、合意した管轄裁判所にならず、それ以外の裁判所になる可能性もあります。

そこで、「〇〇裁判所を専属的合意管轄裁判所とする」という記載にするやり方があります。 専属的合意管轄とすると特定の裁判所のみに管轄が認められ、他の裁判所に訴訟提起ができません(民事訴訟法13条)。

4.条項の記載例

1)自社に有利な特定の裁判所を管轄裁判所にしたいとき

この場合、その特定の裁判所について管轄裁判所とすることに双方の合意が必要です。

「(合意管轄) 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」

2)双方が要望する裁判所を管轄裁判所にしたいとき

この場合、契約上では合意管轄裁判所が2か所になります。訴訟を提起するにあたり、どちらの裁判所を合意管轄裁判所にするかについて、双方の合意が必要となり、時間がかかることが予想されます。

「(合意管轄) 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、東京地方裁判所及び名古屋地方裁判所を、いずれも第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」

3)本店所在地を管轄する裁判所を管轄裁判所にしたいとき

下記の例では、民事訴訟法41条に従って被告の本店所在地を管轄する地方裁判所としています。 原告の本店所在地を管轄する地方裁判所でも構いません。

「(合意管轄) 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、被告の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」