Counterparts(副本条項)

【この記事でわかること】

  • 英文契約におけるCounterparts(副本条項)の基本的役割と実務上の必要性
  • 正本(Original)と副本(Counterpart)の法的効力と署名手続きの違い
  • ファックス・PDF・電子署名(e-signature)時代における副本条項の現代的意義とリスク管理
  • 実務で頻出する全5パターンの具体例文と詳細対訳・語注解説

英文契約書の General Provisions(一般条項)である Counterparts(副本条項) について詳しく解説します。いくつかの例文に要点と対訳と語注をつけました。

1.解説:Counterparts(副本条項)とは?

英文契約書には、Counterparts(副本条項)と呼ばれる当事者の署名プロセスについて規定した条文がおかれることがあります。この条項は、日本語の契約実務には馴染みが薄く、英文契約書に特有かつ不可欠な条文の一つです。

1)日本語契約書と英文契約書の署名プロセスの違い

ア.日本語契約書の署名(押印)

日本語の契約書では、当事者の数にあわせて同じ契約書(正本)を複数作成し、そのすべての正本に対して当事者全員が署名または押印(連名)するのが一般的です。例えば2者間契約であれば、2通の正本を作成し、2通とも両者が署名・押印して各1通を保有します。

イ.海外取引における英文契約書の署名

英文契約書でも基本の考え方は同じですが、国や地域をまたぐ国際取引(遠隔地間の取引)では、当事者が一堂に会して同じ用紙に署名することが困難であったり、郵送で1つの書面を回覧して署名を集めるのに膨大な時間とコストがかかるという実務上の課題が生じます。

2)Counterparts(副本条項)の定義と機能

こうした遠隔地間における署名手続きの効率化とスピード化のニーズに応えるために置かれるのが Counterparts(副本条項) です。

副本条項を設けた英文契約書では、当事者全員が1つの用紙に署名するのではなく、同じ内容の契約書(写し・副本)を複数用意し、「各当事者がそれぞれの副本に個別に署名する」 形式をとります。つまり、各副本にはその当事者自身の署名しか入っていない状態となります。

そして副本条項とは、「別々に署名された各副本(counterparts)は、すべて正本(original)と同等の効力を持ち、それら全体で1つの有効な契約書を構成する」 ことを当事者間で法的に確認・約定する条項です。

3)正本(Original)と副本(Counterparts)の関係

副本条項の入った英文契約書における正本と副本の整理は以下の通りです。

  • 契約書は当事者の数(または必要部数)に応じて作成されます。
  • 正当な契約締結権限のある代表者によって署名されている限り、正本(Original)であっても副本(Counterpart)であっても、契約としての法的効力に一切の違いはありません。
  • ただし、単に署名済みの書面を後から複写機でコピーしただけのもの(=生署名ではない単なるコピー)は、適切な副本条項やファックス/電子署名認容規定がない限り、自立した副本として扱われない場合があるため注意が必要です。

4)現代におけるCounterparts(副本条項)の役割と電子署名

かつては国際郵送のタイムラグを減らすことが主目的であった副本条項ですが、近年の 電子署名(e-signature:DocuSignやAdobe Sign等) やPDFメール送受信の普及に伴い、その役割はさらに重要性を増しています。

ア.電子署名と副本条項

電子署名を利用する場合、紙の書類としての「物理的な副本」という概念は薄れます。しかし、クラウド上で各当事者が異なる場所・タイミングで電子署名を行うプロセスそのものが、「複数に分かれて署名されたものが全体として1つの契約を構成する」という副本条項の理念そのものです。

電子署名プラットフォームを通じて最終的に1つの合意済みPDFが生成される場合でも、署名プロセスが分離して行われるため、電子署名に対応した副本条項(例文⑤参照)を明記しておくことが現代の標準実務となっています。

イ.実務上のリスク管理と注意点

  • 署名の真正性確保:電子署名やファックス署名を採用する場合、署名権限者本人が署名したか(本人性)、改ざんされていないか(不可変更性)を確認できる信頼性の高いシステムを利用することが重要です。
  • 完全な契約書(完全体)の保管:当事者それぞれが署名した各副本のコピーや、全員の署名が揃った最終PDF(完全な契約書)を、当事者全員が確実に保存・管理しておく必要があります。これが曖昧だと、将来の紛争時に「どの時点で契約が成立したか」「どれが最終版か」が争点となるリスクがあります。
  • 効力発生日(Effective Date)の明確化:当事者が異なる日にちに署名する場合、最後の当事者が署名した日、または契約書内で定めた「Effective Date」をもって契約の効力が生じる旨を明確にしておくことが重要です。

【英文契約書の基礎知識:実務上の視点】
副本条項(Counterparts)は、遠隔地間の契約締結の段取りや電子署名プロセスを規定する一般条項という条項タイプ(clause type)であり、別々の場所で署名された各副本(または電子データ)を一体化させて「分割して行われた署名を集約し、一つの有効な契約書を成立させる機能(specific function)」を担います。

リーガルチェックの際は、この条項が自社に「どのような手続き上の権利や生存の権利(rights of use)」を付与しているかを精査します。具体的には、物理的な郵送を待たずに即座に契約を成立させるために「ファクシミリや電子署名による署名済みの副本を正本と同等の証拠力を持つものとして相手方に対抗・主張できる権利(rights of use)」(例文④、例文⑤)などを確保させることが、ビジネスのスピード感を損なわずに法的有効性を担保するための確実な防衛線となります。

2.例文と基本表現

実務で頻出するCounterparts(副本条項)の代表的な5つの例文です。基本表現を理解するための対訳と解説を付しています。

1)Counterparts(副本条項)の例文①

もっとも標準的かつシンプルな例文です。各副本が正本とみなされ、全体で1つの証書を構成することを規定しています。

This Agreement may be executed in two or more counterparts, each of which will be deemed an original, but all of which together will constitute one and the same instrument.

(訳)
本契約は、それぞれが正本とみなされる2通以上の副本で締結することができるが、それらは全部あわせて、ひとつ且つ同一の証書を構成する。

  • be deemed:~とみなされる(※確定的解釈を表す重要表現)
  • all of which together:それらは全部あわせて
  • one and the same:ひとつ且つ同一の
  • instrument:法的証書(契約書)

2)Counterparts(副本条項)の例文②

当事者の数に限らず、任意の数の副本で締結できることを明確にした簡潔な表現です。

This Agreement may be executed in any number of counterparts, all of which shall be considered one and the same agreement.

(訳)
本契約は、任意の数の副本で締結することができ、それらは全部ひとつの且つ同一の契約とみなされるものとする。

  • in any number of counterparts:任意の数の副本で
  • shall be considered:~とみなされるものとする

3)Counterparts(副本条項)の例文③

契約の拘束力(効力発生)のタイミングと、各当事者に対する正本としての効力をより厳密に規定した詳細な条文です。

This Agreement shall become binding when any one or more counterparts of it, individually or taken together, shall bear the signatures of each of the Parties hereto. This Agreement may be executed in any number of counterparts, each of which shall be an original as against either Party whose signature appears thereon, but all of which taken together shall constitute but one and the same instrument.

(訳)
本契約は、いずれか1通以上の副本が、個別又はまとめて、本契約の各当事者の署名がある場合に拘束力を持つものとする。本契約は、任意の部数の副本にて締結することができる。各副本は、署名が表示されたいずれかの当事者に対する正本となるが、すべてをまとめたものは、ひとつの且つ同一の証書を構成するものとする。

  • binding:法的拘束力のある
  • bear the signatures of:~の署名がある
  • each of the Parties hereto:本契約の各当事者
  • as against either Party whose signature appears thereon:署名が表示されたいずれかの当事者に対して(に対する正本となる)
  • taken together:すべてをまとめたもの
  • constitute but one and the same instrument:ひとつの且つ同一の証書を構成する(※butは「~に過ぎない/まさに」という強調)

4)Counterparts(副本条項)の例文④

ファクシミリ(FAX)による署名送信を明確に認容し、遠隔地間での即時締結に対応させた実務的条文です。

This Agreement may be executed by facsimile signature and in one or more counterparts, all of which shall be considered one and the same agreement and shall become effective when one or more counterparts have been signed by each of the parties and delivered to the other parties.

(訳)
本契約は、ファクシミリの署名により、1通以上の副本で締結することができるが、そのすべてが全部ひとつの且つ同一の契約とみなされ、1通以上の副本が各当事者によって署名され、他の当事者に配信されたときに、効力を持つものとする。

  • by facsimile signature:ファクシミリ署名により
  • shall become effective:効力を生じる
  • delivered to the other parties:他の当事者に交付(送信)された

5)Counterparts(副本条項)の例文⑤

現代の国際ビジネスで最も推奨される、電子署名(e-signature)およびPDF等による電子送信に完全対応した最新の標準例文です。

This Agreement may be executed in any number of counterparts, including by facsimile or electronic signature, each of which shall be deemed an original, but all of which together shall constitute one and the same instrument.

(訳)
本契約は、ファクシミリまたは電子署名を含む任意の数の副本で締結することができる。各副本は正本とみなされるが、それらはすべて合わせて、ひとつの且つ同一の証書を構成する。

  • including by facsimile or electronic signature:ファクシミリまたは電子署名による場合を含め
  • each of which shall be deemed an original:各副本は正本とみなされる

知識補強:副本条項(Counterparts)と連動する重要契約概念

Counterparts条項によって別々に署名された副本を一体化させる際、契約書全体の構造や効力を補強するために、以下の契約概念および関連条項をあわせて理解しておくことが実務上極めて重要です。

  • 完全合意条項(Entire Agreement):各当事者が離れた場所で個別に署名(Counterparts)した場合であっても、最終的に集約された契約書のみが「唯一・完全な合意」であり、それ以前のメールのやり取りや口頭合意を排除することを確定させる重要な役割を果たします。
  • 業務委託契約(Service Agreement)における適用:海外企業やリモート環境下で業務委託契約を締結する際、Counterparts条項と電子署名規定を組み合わせることで、郵送トラブルを回避しつつ即時に有効な契約関係を構築することができます。
  • みなし規定(Deem):例文①や⑤で使用される「shall be deemed an original(正本とみなす)」の「deem」は、事実関係の如何にかかわらず法的に確定的な効力を与える強力な表現です。推測を表す「consider」とのニュアンスや効果の違いを理解しておくことで、契約レビューの精度が格段に向上します。