英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)英文契約書の 一般条項である Counterparts(副本条項)について解説します。いくつか例文をとりあげて、要点と対訳と語注をつけました。
1.解説:
英文契約書には、Counterparts(副本条項)と呼ばれる当事者の署名について規定した条文がおかれることがあります。
Counterparts(副本条項)は、日本語契約書にはない、英文契約書におかれる特有な条文です。
そこで、日本語契約書と英文契約書における署名のプロセスについてみてみます。
1)日本語契約書の署名
日本語契約書では、当事者の数にあわせて、その数の正本を作成してそれぞれの正本に当事者の全員が署名します。
2)海外での英文契約書の署名
英文契約書の署名も、日本語契約書と同じであり、上記のやり方が基本です。
ただし、国や地域をまたぐ遠隔地間の海外取引の場面では、英文契約書を締結する際に当事者が全員で署名するのが困難であったり、署名に時間がかかるという事情があります。
この手間を少なくして、より効率的に署名をすませたいというニーズから、英文契約書でCounterparts(副本条項)を設けるケースが多くなります。
3)Counterparts(副本条項)とは
Counterparts(副本条項)を入れた英文契約書では、
複数の当事者のために、同じ内容の写しであるcounterparts(副本)が用意されて、それぞれのcounterparts(副本)に各当事者が署名します。
つまり、counterparts(副本)には、各当事者のみが署名し当事者全員の署名は入らないことになります。
そしてCounterparts(副本条項)とは、
各当事者により署名されたcounterparts(副本)は、original(正本)と同じく契約書としての効力がある
ことを確認するための条文です。
4)original(正本)とcounterparts(副本)
Counterparts(副本条項)の入った英文契約書について、original(正本)とcounterparts(副本)をいま一度整理します。
契約書は、当事者の数にあわせて、最低2通以上、作成され締結されます。
そして、それらの契約書は、最初に作成された1通のoriginal(正本)と、その写しである1通以上のcounterparts(副本)から構成されます。
original(正本)もcounterparts(副本)も、それぞれ、当事者の正当な契約締結権限のある代表者によってサインされている限り、契約としての効力に違いはなく同じです。
だだし、サインされた契約書をコピーしたもの(=サインが本物でなくコピーしたもの)は、 counterparts(副本)としては扱われません。
5)現代におけるCounterparts(副本条項)の役割と電子署名
かつては遠隔地間の契約締結の効率化を主な目的としていたCounterparts(副本条項)ですが、
現代では、電子署名(e-signature)の普及により、その役割や重要性にも変化が見られます。
・電子署名と副本条項:
電子署名とは、オンライン上で契約書に署名する技術であり、物理的な書類のやり取りや郵送の手間を大幅に削減します。
Adobe SignやDocuSignといったサービスが代表的です。
電子署名を利用する場合、物理的な「副本」という概念は薄れますが、
契約当事者が別々の場所からオンラインで署名を行うという点では、Counterparts条項の考え方(複数に分かれて署名されたものが全体として一つの契約を構成する)が電子的な文脈で引き続き適用されると解釈できます。
多くの電子署名プラットフォームでは、最終的に署名済みの契約書がPDFなどの単一のファイルとして生成・保管されますが、
複数の当事者が別々に署名プロセスを完了させるため、電子署名を用いた契約でもCounterparts条項を盛り込むことが一般的です。
(下記の電子署名に対応した例文⑤をご参照ください)
これは、各当事者がそれぞれ署名した電子データが、最終的に一つの有効な契約書を構成することを明確にするためです。
・署名プロセスの確認と証拠性確保のリスク
Counterparts条項や電子署名を利用することで、契約締結は効率的になりますが、以下の点には注意が必要です。
・署名の真正性:
物理的な署名の場合、当事者が実際に署名したことを確認しやすいですが、電子署名の場合、技術的な真正性(署名者が本人であること、改ざんされていないこと)の確認が重要になります。
信頼できる電子署名サービスを利用することが不可欠です。
・署名済みの「完全な」契約書の確保:
複数の副本や電子署名プロセスを経て契約が成立した場合、すべての当事者が署名した「完全な契約書」のコピーを、関係者全員が確実に保管しているかを確認する必要があります。
これがあいまいだと、後々の紛争時に「どの版が最終的な契約書なのか」という問題が生じる可能性があります。
・日付の統一:
複数の副本に別々の日付で署名が行われる場合でも、契約の効力発生日(Effective Date)を契約書内で明確に定めておくことが重要です。
これにより、契約がいつから有効になったのかという認識のずれを防ぎます。
Counterparts条項は、複雑な署名プロセスを円滑に進めるための規定ですが、
その裏側にある署名の真正性や完全な契約書の管理といった実務上の注意点を理解し、適切に対応することが、将来的な法的リスクを回避する上で非常に重要です。
2.例文と基本表現:
(注):基本表現をハイライトしています。
1) Counterparts(副本条項) の例文①
標準的な例文です。各部の副本が正本とみなされ、それぞれが証書として証明力を持ちます。
This Agreement may be executed in two or more counterparts, each of which will be deemed an original, but all of which together will constitute one and the same instrument.
(訳):
本契約は、それぞれが正本とみなされる2通以上の副本で締結することができるが、それらは全部あわせて、ひとつ且つ同一の証書を構成する。
(注):
*be deemed は、みなされるという意味です。詳しくは、deemとconsiderの意味と例文をご覧ください。
*all of which togetherは、all of which(それらは全部)とtogether(あわせて)の組み合わせで、それらは全部あわせてという意味です。
*one and the same は、ひとつ且つ同一のという意味です。
*instrument は、証書(契約書)を意味します。
2) Counterparts(副本条項) の例文②
必要な数の副本を作って締結でき、それぞれが契約として有効となります。
This Agreement may be executed in any number of counterparts, all of which shall be considered one and the same agreement.
(訳):
本契約は、任意の数の副本で締結することができ、それらは全部ひとつの且つ同一の契約とみなされるものとする。
(注):
*in any number of counterpartsは、任意の数の副本でという意味です。
3) Counterparts(副本条項) の例文③
サインされた複数の副本は、いずれも、正本と証明力は同じであることを確認しています。
This Agreement shall become binding when any one or more counterparts of it, individually or taken together, shall bear the signatures of each of the Parties hereto. This Agreement may be executed in any number of counterparts, each of which shall be an original as against either Party whose signature appears thereon, but all of which taken together shall constitute but one and the same instrument.
(訳):
本契約は、いずれか1通以上の副本が、個別又はまとめて、本契約の各当事者の署名がある場合に拘束力を持つものとする。 本契約は、任意の部数の副本にて締結することができる。各副本は、署名が表示されたいずれかの当事者に対する正本となるが、すべてをまとめたものは、ひとつの且つ同一の証書を構成するものとする。
(注):
*bindingは、拘束力を有する、拘束力を持つという意味です。
*bear the signatures of each of the Parties heretoは、bear the signatures(署名がある)とof each of the Parties hereto(本契約の各当事者の)の組み合わせで、本契約の各当事者の署名があるという意味です。
*each of which shall be an original as against either Party whose signature appears thereonは、each of which(各副本)とshall be an original(正本となる)とas against(に対する)とeither Party whose signature appears thereon(署名が表示されたいずれかの当事者)から成り、各副本は、署名が表示されたいずれかの当事者に対する正本となるという意味です。
*all of which taken togetherは、すべてをまとめたものという意味です。
*constitute but one and the same instrumentは、constitute(を構成する)とbut one and the same(ひとつの且つ同一の)とinstrument(証書)から成り、ひとつの且つ同一の証書を構成するという意味です。
4) Counterparts(副本条項) の例文④
遠隔地の当事者のために、ファックスで送信して、これにサインした副本も有効であるとするものです。(このように確認した条項があれば、ファックスでのサインも有効となります。)
This Agreement may be executed by facsimile signature and in one or more counterparts, all of which shall be considered one and the same agreement and shall become effective when one or more counterparts have been signed by each of the parties and delivered to the other parties.
(訳):
本契約は、ファクシミリの署名により、1通以上の副本で締結することができるが、そのすべてが全部ひとつの且つ同一の契約とみなされ、 1通以上の副本が各当事者によって署名され、他の当事者に配信されたときに、効力を持つものとする。
(注):
*all of which shall be considered one and the same agreementは、all of which(そのすべてが全部)とshall be considered(とみなされる)とone and the same agreement(ひとつの且つ同一の契約)から成り、そのすべてが全部ひとつの且つ同一の契約とみなされるという意味です。
電子署名による契約締結に対応した例文です。ファクシミリ署名と同様に、電子署名された副本も有効とみなされます。
This Agreement may be executed in any number of counterparts, including by facsimile or electronic signature, each of which shall be deemed an original, but all of which together shall constitute one and the same instrument.
(訳):
本契約は、ファクシミリまたは電子署名を含む任意の数の副本で締結することができる。各副本は正本とみなされるが、それらはすべて合わせて、ひとつの且つ同一の証書を構成する。
英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。
納品後1年間は、契約締結が完了するまで追加費用なしで、サポートいたします。
お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。