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英文契約書でよく使われる用語のcureについて解説します。 例文をとりあげ要点と対訳をつけました。例文中の基本表現に語注をつけました。
1.解説:
1)cureとは
cureは、英文契約書でよく使われる用語のひとつです。
cureは、英文契約書で是正する、治癒するという意味で用いられます。
同義語に、correctやrectifyなどがあります。
2)cureの使い方
cure(是正する)の典型的な使われ方は、契約義務の違反や不履行の是正です。
たとえば、 Termination(契約解除条項) において、以下のように使われます。(青字部分)
『当事者の一方に、重大な義務の違反があった場合に、相手方は、事前に一定期間を指定して、違反した当事者に通知を行い、その期間内に違反が是正(cure)されなかった場合、契約を解除できる』
このように、cure(是正する)には、契約解除の前に、違反した当事者に「問題を修正する機会」を与えるという重要な意味合いがあります。
これは、契約関係を直ちに終了させるのではなく、できる限り継続させたいという意図が背景にあります。
項目2.例文と基本表現に、Termination(契約解除条項)とForce Majeure(不可抗力条項)から、それぞれ、cure(是正する)が使われている例文をとりあげました。
3)Cure Period(是正期間)が持つ法的役割
cureは、実務上、違反の通知から是正が完了するまでの期間を定めたCure Period(是正期間)という概念とセットで用いられます。
この是正期間条項は、契約の安定性と公平性を保つ上で重要な役割を果たします。
ア. 契約の安定性の確保
是正期間を設けることは、以下の点で契約の安定性に貢献します。
過剰な解除の防止:
軽微な違反や、相手方に予期せぬ事情があった場合でも、直ちに契約を解除されるリスクを防ぎます。
特に長期契約では、是正期間の存在がビジネスの継続性を保証します。
違反の明確化:
違反通知を受け取った側は、是正期間内にcureを完了できれば契約解除を回避できるため、何を、いつまでに是正すべきかが明確になります。
イ. Cure Periodの長さの交渉ポイント
是正期間(例:within thirty (30) days:例文①)の長さは、契約の種類や違反の性質によって交渉されます。
是正が容易な違反:
支払遅延など、金銭的な義務違反は、比較的短い期間(例:5日〜10日)とされることが多いです。
是正に時間を要する違反:
ソフトウェアの瑕疵(バグ)修正や設備の不備修正など、技術的または物理的な作業が必要な違反は、長い期間(例:30日〜90日)が設定されます。
是正不能な違反(Non-curable Breach):
倒産や機密情報の重大漏洩など、是正によって回復が不可能な違反に対しては、cureの機会を与えず、with immediate effect(直ちに解除)が適用されます(例文①の例外規定を参照)。
このcureの概念は、「違反があったとしても、まずは是正の努力を尽くし、契約関係の維持に努めるべきである」という英米法的な契約精神を反映しています。
2.例文と基本表現:
(注):上記で解説したcureは青文字で示し、他の基本表現をハイライトしています。
1)cure(是正する)– 例文①
Termination(契約解除条項)からです。当事者が重大な違反を犯し、非違反当事者から通知を受領後、30日以内に是正されない場合、当該当事者への通知により直ちに契約は終了します。
This Agreement may be terminated by either Party immediately upon notice to the other Party if such other Party commits a material breach of any of the material provisions of this Agreement, and such breach is not cured within thirty (30) days after written notice of such breach is received from the non-breaching Party, except that the time period shall be fourteen (14) days for breaches in respect of Confidential Information that result or are reasonably likely to result in a material adverse effect on the non-breaching Party.
(訳):
本契約は、いずれかの当事者が本契約の重要な条項につき重大な違反を犯した場合、違反をしていない当事者から当該違反の書面通知を受領してから30日以内に是正されない場合、機密情報に関する違反により違反をしていない当事者に重大な悪影響を及ぼすとき又は合理的にその可能性が高いときは14日間とする場合を除き、他の当事者への通知により直ちに解除することができる。
(注):
*upon notice toは、~への通知によりという意味です。
*commits a material breachは、重大な違反を犯すという意味です。material breachと、例文内のmaterialを使った各表現については、くわしくは、material breachの意味と例文をご覧ください。
*the material provisionsは、重要な条項という意味です。
*the non-breaching Partyは、違反をしていない当事者という意味です。 Partyについては、くわしくは、partyとpartiesの関連表現の意味と例文をご覧ください。
*in respect ofは、に関するという意味です。
*a material adverse effectは、重大な悪影響という意味です。
2)cure(是正する)– 例文②
Termination(契約解除条項)からです。 当事者が重大違反をした場合、他の当事者は、違反当事者に対し、その違反を可能な限り是正するよう要請します。
In the event that either Party commits a material breach or default of any of its obligations hereunder, the other Party shall give the breaching Party written notice of such material breach or default, and shall request that such material breach or default be cured as soon as reasonably practicable.
(訳):
いずれかの当事者が本契約に基づく義務の重大な違反または不履行を犯した場合、他の当事者は、違反した当事者に対し、かかる重大な違反または不履行について書面で通知を行い、かかる重大な違反または不履行を実行可能な限り速やかに是正することを要請するものとする。
(注):
*defaultは、不履行という意味です。
*hereunderは、本契約に基づくという意味です。 くわしくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
*the breaching Partyは、違反した当事者という意味です。
3)cure(是正する)– 例文③
Force Majeure(不可抗力条項)からです。 不可抗力が発生した場合、義務違反とはなりませんが、影響を受けた当事者は、それを是正するための、合理的な努力をしなくていけません。
Neither Party shall be liable for failure or delay in performing obligations set forth in this Agreement, and neither shall be deemed in breach of its obligations, if such failure or delay is due to natural disasters or any causes beyond the reasonable control of such Party. In event of such force majeure, the Party affected thereby shall use reasonable efforts to cure or overcome the same and resume performance of its obligations hereunder.
(訳):
いずれの当事者も、本契約に定められた義務の不履行または履行の遅延が、自然災害または当該当事者の合理的な支配の及ばない原因によるものである場合、かかる義務の不履行または履行の遅延について責任を負わず、いずれもその義務の違反とみなされないものとする。 かかる不可抗力が発生した場合、影響を受けた当事者は、それを是正または克服し、本契約に基づく義務の履行を再び遂行するために、合理的な努力を行うものとする。
(注):
*be liable forは、~に対して責任を負うという意味です。
*failure or delay in performing obligationsは、義務の不履行または履行の遅延という意味です。
*set forth in this Agreementは、本契約に定められたという意味です。
*be deemed in breach of its obligationsは、 その義務の違反とみなされるという意味です。
*beyond the reasonable control ofは、~の合理的な支配の及ばないという意味です。
*use reasonable efforts は、合理的な努力をするという意味です。 詳しくは、best efforts と reasonable effortsの意味と例文をご覧ください。
*force majeureは、不可抗力という意味です。
*as soon as reasonably practicableは、実行可能な限り速やかにという意味です。
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