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英文契約書においてライセンス許諾条項として置かれるGrant of Licenseについて解説します。例文をとりあげ、対訳をつけました。例文中の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)Grant of Licenseとは
Grant of Licenseは、ライセンス許諾とか実施権の許諾と訳されます。
License Agreement(ライセンス契約)においてライセンス許諾条項として設けられます。
Grant of License(ライセンス許諾条項)では、以下の①~⑤ような内容が規定されます。
①ライセンサーがライセンシーに対して行う特許、ノウハウ、著作権の実施権の許諾
②独占的実施権の許諾の有無
③実施許諾の地域
④再許諾権(サブライセンス)の有無
⑤ソフトウエアの場合は、その用途・使用場所・複製の制限など
2)Grant of License(ライセンス許諾条項)が使われる場面
Grant of License(ライセンス許諾条項)は、License Agreement(ライセンス契約)に置かれます。
License Agreement(ライセンス契約)のPrincipal Provisions(主要条項)のひとつを構成します。
(ご参考):Principal Provisions(主要条項)については、英文契約書の構成(structure of contract )をご覧ください。
3)Grant of License条項が担保する「権利範囲の明確性」と「事業戦略の基盤」
Grant of License条項は、単に「ライセンスを許諾する」という事実を述べるだけでなく、ライセンサーとライセンシー双方の知的財産権に関する権利と義務の範囲を極めて明確にし、将来の事業展開における予測可能性と法的安定性を担保するための、最も基本となる条項です。
この条項の記載内容は、両当事者のビジネス戦略とリスク管理に直接的に影響します。
ライセンサーの権利コントロール:
ライセンサーにとって、Grant of License条項は、自社の知的財産権の利用をきめ細かくコントロールするための主要なツールです。
許諾の範囲の限定:
どの知的財産(特許、著作権、商標、ノウハウなど)を、どの範囲(地域、期間、用途、使用目的、複製権の有無など)で許諾するのかを細かく規定することで、ライセンサーは自社の知的財産権の価値を最大化しつつ、意図しない利用や競合他社への拡散を防ぐことができます。
例えば、例文にある「for its own internal business purposes, and for no other purpose whatsoever」や「shall not sell or distribute the Software in any way」といった記載は、ソフトウェアの用途を厳しく制限し、ライセンサーのビジネスモデルを保護する明確な意思表示です。
独占性の設定:
「独占的(Exclusive)」か「非独占的(Non-exclusive)」かの選択は、ライセンサーの収益機会と将来的な事業戦略に大きく影響します。
独占許諾は通常、より高額なロイヤリティやコミットメントと引き換えに、特定の市場におけるライセンシーの優位性を確立しますが、ライセンサーの他のライセンス機会を制限します。
非独占許諾はより広範な市場へのアクセスを可能にしますが、ライセンシーの独占性は保証されません。
サブライセンス権の管理:
「再許諾権(right to sublicense)」の有無は、ライセンシーが第三者にライセンスを付与できるかどうかを規定します。
ライセンサーは、自社の知的財産が意図しないルートで広がることを防ぐため、サブライセンス権を厳しく制限するか、事前に承認を義務付けるのが一般的です。
ライセンシーの事業展開の基盤:
ライセンシーにとって、Grant of License条項は、許諾された知的財産を合法的に利用し、自社の事業を展開するための法的根拠となります。
利用範囲の明確化:
ライセンシーは、この条項によって、許諾された知的財産をどこまで利用できるのかを正確に把握できます。
例えば、ソフトウェアライセンスであれば、使用できるデバイス数、ユーザー数、部署、用途などが明確になることで、事業計画を立てやすくなります。
将来の紛争防止:
許諾範囲が曖昧だと、将来的にライセンサーから「契約外の利用だ」と主張され、権利侵害の紛争に発展するリスクがあります。
Grant of License条項が詳細であればあるほど、このような誤解や紛争を防ぐことができ、ライセンシーは安心して投資や開発を進めることができます。
法的安定性と予見可能性:
この条項は、知的財産という無形資産の利用に関する両当事者の関係を法的に安定させ、将来のビジネス活動における予測可能性を高めます。
不明確な許諾範囲は、ビジネス機会の損失や法的紛争のリスクに直結するため、Grant of License条項の正確性と網羅性は、ライセンス契約全体の成功に不可欠な要素と言えます。
このように、Grant of License条項は、単なる権利付与の記述に留まらず、ライセンサーの知的財産戦略とライセンシーの事業戦略、双方のリスク管理を包括的に規定する、ライセンス契約の最も重要な部分であると理解することが重要です。
※実務上の視点:
ライセンス許諾条項(Grant of License)は、知的財産権を持っている側が、相手に対して「これこれの範囲内なら使っていいですよ」と許可を与える条項タイプ(clause type)です。
この条項の一番の大切な機能(specific function)は、自社の大事な技術やデザインの「所有権」自体は手放さないまま、相手の使い道をしっかりコントロールして、勝手に他社へ広められたり悪用されたりするリスクを防ぎながら安全に利益を生み出すことにあります。
リーガルチェックの現場では、この条項によって自社に「どこまでの利用を許し、範囲外の勝手な使い方をどうやって差し止めるかという権利(rights of use)」がきちんと確保できているかを精査します。
具体的には、自社がソフトウェアや特許を提供するライセンサーの立場なら、ビジネスを守るための防衛線として「ライセンシーが勝手に転売したり配ったりすることを禁止し、あらかじめ認めた社内での目的だけに限定して使わせる非独占的・譲渡不能なライセンスに絞り込むこと」、そして「もし範囲外の使い方をされたら、すぐに契約違反や権利侵害として差し止めや損害賠償を請求できる権利(rights of use)」(例文)をしっかり握っておくことが鉄則です。
逆に、自社が大きなお金を投じて海外の技術を日本で広めるようなライセンシー(買い手)の立場であれば、投資した分をしっかり回収するための防衛線として、「その地域で他社を排除してビジネスができる独占的な営業権や、事業を進める上で必要な外部の協力会社にも一部使わせることができる再許諾権(Sublicense Rights)をきちんと確保する権利(rights of use)」を戦略的に組み込んでおくことが、国際ビジネスで利益と安全を守るための必須の設計となります。
独占的ライセンス(Exclusive License)と非独占的ライセンス(Non-exclusive License)の違い:
英文契約の実務でライセンスの条件を決めるとき、その内容が「独占的(Exclusive)」か、それとも「非独占的(Non-exclusive)」かによって、市場での強さやライセンサー側の義務の重さが180度変わってきます。
この2つのアプローチの本質的な違いを押さえておくことは非常に重要です。
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独占的ライセンス(Exclusive License):
特定の市場を丸ごと独り占めさせる強力な権利-
特徴:
特定の地域や用途において、ライセンシー(借り手)が「世界で自分だけがその権利を使える」という状態になります。
これは非常に強力な権利で、ライセンスをあげた側のライセンサー自身であっても、その市場で自社製品を売ることができなくなってしまいます。
借り手にとっては投資をしっかり回収できる最高の防衛線になりますが、貸し手(ライセンサー)にとっては「もし相手が思うように売ってくれなかったら、他の会社にも売れず、市場を丸ごと凍結されてしまう」という大リスクになります。
そのため実務では、「最低でもこれだけは売ってください」という最低販売目標(Minimum Sales Target)などの条件と引き換えに付与するのが定番です。
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非独占的ライセンス(Non-exclusive License):
自由度を保ちながら、広くみんなに使ってもらう権利-
特徴:
ライセンサーは、同じ地域や用途であっても、何社に対してでも自由に同じライセンスを重ねて発行することができます(例文)。
ソフトウェアのダウンロード販売やSaaSビジネスのように、たくさんのユーザーに広く普及させて、薄く広く利用料を集めるビジネスモデルに最適です。
借り手(ライセンシー)側から見ると、ライバル企業も同じツールを使って参入してくる可能性があるため、利用目的(自社内での使用に限るなど)や価格の面で、自社が不利にならないようしっかりと契約上の防衛線を引いておく必要があります。
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【選択の指針】
もし自社が、他社の参入を法的にシャットアウトして特定の市場を独占したいライセンシー(借り手)の立場なら、地域や期間を区切った「独占的ライセンス」を勝ち取るのが定石です。
反対に、汎用的なソフトウェアやノウハウを提供するライセンサー(貸し手)の立場であれば、ビジネスの可能性を狭められないよう、今回の例文のように「非独占的かつ譲渡不能(Non-exclusive, Non-transferable)」という条件を大前提にして、例外を安易に認めない厳格な文言で相手の行動を確定させることが、知財ビジネスにおける標準的なアプローチとなります。
2.例文と基本表現 :
(注):英文契約書によく出る基本表現をハイライトし語注を入れてます。
Grant of License(ライセンス許諾条項) – 例文
ソフトウェアについての非独占的かつ譲渡不能なライセンス許諾です。ソフトウェアの用途と複製を厳格に制限しています。
Grant of License
Licensor hereby grants to Licensee, in accordance with the terms and conditions of this Agreement, a non-exclusive, non-transferable license to use the Software in the course of its business and for its own internal business purposes, and for no other purpose whatsoever without the express written permission of the Licensor. Licensee shall not sell or distribute the Software in any way. Licensee may copy the Software in accordance with the terms of this Agreement, for general advertising materials and point of sale displays, advertising, and other promotional materials for the Software, and for its own internal business purposes. Any other use made by Licensee shall only occur upon the receipt of prior written approval from Licensor.
(訳):
ライセンス許諾
ライセンサーは、本契約の条件に従って、本ソフトウェアを、ライセンシーに対し、その事業の過程において又自らの内部事業目的のために使用し、ライセンサーの書面による明示的な許可なしに他のいかなる目的にも使用しないことを条件に、非独占的かつ譲渡不能なライセンスをここに許諾する。 ライセンシーは、いかなる方法でも本ソフトウェアを販売又は配布してはならない。 ライセンシーは、本契約の条件に従って、本ソフトウェアの一般的な広告資料、販売時の表示、広告及びその他の販促資料のために、並びに自らの内部事業目的のために、本ソフトウェアをコピーすることができる。 ライセンシーによるその他の用途は、ライセンサーからの事前の書面による承諾を取得した場合にのみに行われものとする。
(注):
*Licensorは、そのままライセンサーと訳されます。ライセンスする者、実施許諾者のことを意味します。これに対してLicenseeはライセンシーと訳されます。ライセンスを受ける者、実施権者のこと意味します。
*herebyは、ここに(本契約により)という意味です。くわしくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
*in any wayは、いかなる方法でもという意味です。同じ意味の契約表現に、in any mannerがあります。
*grants licenseは、ライセンスを許諾するという意味です。くわしくは、grant licenseとgrant sublicensesの意味と例文をご覧ください。
*in accordance withは、~に従ってという意味です。同じ意味の契約表現に、pursuant toやsubject toなどがあります。
*the terms and conditionsは、(本契約の)条件という意味です。
*non-exclusive, non-transferableは、非独占的かつ譲渡不能なという意味です。 non-exclusiveとnon-transferableについては、くわしくは、それぞれ、exclusiveとnon-exclusiveの意味と例文とnon-transferableの意味と例文をご覧ください。
*in the course of its businessは、その事業の過程においてという意味です。in the course ofについては、くわしくは、in the course ofの意味と例文をご覧ください。
*for its own internal business purposesは、自らの内部事業目的のためにという意味です。
*whatsoeverは、いかなる~もない、少しの~もないという意味の強調表現です。 くわしくは、whatsoeverの意味と例文をご覧ください。
*without the express written permission ofは、の書面による明示的な許可なしにという意味です。
*upon the receipt ofは、を受領したときにという意味ですが、意訳(を取得した場合に)しています。
*prior written approvalは、事前の書面による承諾という意味です。
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