Indemnification(補償条項)の修正例:3つのパターン

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相手方の海外企業から提示された英文契約書のIndemnification(補償条項)について、どのように回答するべきか、その修正案について解説します。

(注):

分かりやすいようにポイントを解説しています。実際の契約書に適用する際には、通常、個々の契約内容や状況に合わせて、詳細に検討することが必要となります。

目次:
1.はじめに
2.問題のあるIndemnification(補償条項)の三つの例と修正案
 例1:自社に過失がなくても賠償責任を負う条項と修正案
 例2:相手方の間接損害や特別損害も自社が負担する条項と修正案
 例3:一方的な補償義務を要求する条項と修正案
3.まとめ

1.はじめに:

Indemnification(補償条項)とは、

契約上の責任を果たせなかった場合に、相手方に生じた損害を賠償することを定めた条項です。

Indemnification(補償条項)には、例えば、

「各当事者は、相手方が本契約に基づく義務違反により被ったすべての損害に対して、相手方を補償し、免責する」とか、

「相手方が損害を受けた場合、自社に過失がなくても賠償責任を負う」

といった内容をよく見かけます。

この条項は、契約交渉において当事者間の力関係を反映することが多く、注意が必要です。

ここでは、不利益を被りやすいIndemnification(補償条項)として、

よく見かける以下の三つの例とそれらに対する修正案について解説します。

1)自社に過失がなくても賠償責任を負う条項

2)相手方の間接損害や特別損害も自社が負担する条項

3)一方的な補償義務を要求する条項

2.問題のあるIndemnification(補償条項)の三つの例と修正案:

例1:自社に過失がなくても賠償責任を負う条項と修正案

相手方の条項例:

Each Party shall indemnify and hold harmless the other Party from and against any and all Losses arising out of or in connection with this Agreement, regardless of fault.

訳:

各当事者は、本契約に起因または関連して生じる一切の損害について、過失の有無にかかわらず、相手方を補償し、免責するものとする。

問題点:

この条項例では、

regardless of fault(過失の有無にかかわらず)

という記載が入っていることより、以下の二つのリスクが生じます。

①自社に過失がなくても、契約に関連する損害については、全て責任を負う、つまり自社が無過失責任を負うことになり、リスクが非常に高くなります。

②加えて、相手方の過失による損害であっても、自社が責任を負う可能性があります。

修正案:

Each Party shall indemnify and hold harmless the other Party from and against any and all Losses arising out of or in connection with this Agreement caused by the gross negligence or willful misconduct of such Party.

訳:

各当事者は、本契約に起因または関連して生じる一切の損害について、当該当事者の重大な過失または故意の不正行為によって生じた場合に限り、相手方を補償し、免責するものとする。

解説:

regardless of fault(過失の有無にかかわらず)を、

caused by the gross negligence or willful misconduct of such Party(当該当事者の重大な過失または故意の不正行為によって生じた場合に限り)

に修正することにより、

①自社が契約に関連する損害について、全て責任を負う(無過失責任)リスクを回避します。

②相手方の過失によって生じた損害については、相手方に責任を負わせます。

例2:相手方の間接損害や特別損害も自社が負担する条項と修正案

相手方の条項例:

Each Party shall indemnify and hold harmless the other Party from and against any and all Losses, including but not limited to, direct, indirect, incidental, special, consequential, and punitive damages.

訳:

各当事者は、直接損害、間接損害、付随的損害、特別損害、結果的損害、懲罰的損害を含むがこれらに限定されない一切の損害について、相手方を補償し、免責するものとする。

問題点:

この例文では、相手方が被る可能性のあるあらゆる種類の損害を自社が負担することを意味します。

間接損害や特別損害は、金額が膨大になる可能性があり、自社にとって大きなリスクとなります。

修正案:

Each Party shall indemnify and hold harmless the other Party from and against any and all Losses, including but not limited to, direct damages.

訳:

各当事者は、直接損害を含むがこれらに限定されない一切の損害について、相手方を補償し、免責するものとする。

解説:

direct, indirect, incidental, special, consequential, and punitive damages(直接損害、間接損害、付随的損害、特別損害、結果的損害、懲罰的損害)

direct damages(直接損害)

に修正することで、

賠償責任を直接損害に限定します。

これにより過大または不当な損害の負担リスクを回避できます。

例3:一方的な補償義務を要求する条項と修正案

相手方の条項例(売買契約の場合):

Seller shall indemnify Buyer against any and all losses, damages, and expenses arising out of or in connection with any defect in the Products.

訳:

売主は、製品の瑕疵に起因または関連する一切の損失、損害、費用について買主に補償するものとする。

修正案:

Seller shall indemnify Buyer against any and all losses, damages, and expenses arising out of or in connection with any defect in the Products caused by Seller’s gross negligence.

訳:

売主は、売主の重大な過失により生じた製品の瑕疵に起因または関連する一切の損失、損害、費用について買主に補償するものとする。

解説:

修正案では、

any defect in the Products(製品の瑕疵)を、

any defect in the Products caused by Seller’s gross negligence(売主の重大な過失により生じた製品の瑕疵)

に修正して、

「売主の重大な過失」という限定的な条件を加えることで、売主の負担を軽減しています。

3.まとめ:

上記3つの例は、Indemnification(補償条項)が、いかに当事者の権利義務関係に重大な影響を与えるか、を示しています。

特に、損害賠償の範囲を限定することにより、過大または不当な賠償責任を負うリスクを回避できるケースがあります。

例1と例2は、当事者双方が補償義務を負う内容ですが、

中小企業など、相対的に立場が弱い企業は、大手企業との取引において、特に不利益を被る可能性があります。

相手方の英文契約書を受け取った際には、Indemnification条項について、これらの例を参考に、自社が置かれている状況や業界の慣習を踏まえ、慎重に条文の内容を検討することが重要です。

 

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