infringementの意味と例文

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英文契約書で、知的財産権に関係する用語であるinfringementについて解説します。例文をとりあげ要点と対訳をつけました。例文中の基本表現に語注をつけました。

1.解説:

1)infringementとは

infringementは、権利侵害という意味です。

英文契約書の知的財産権に関係する用語のひとつです。

2)infringementが使われる場面

infringementが使われる場面は、以下のような規定や条項です。

・Third Party Infringements(第三者の権利侵害)

ライセンス契約などにおいて、第三者によるinfringement(権利侵害)があった場合の対処・手順についての規定するときに使われます。次の項目2の例文①をご覧ください。

Indemnification(補償条項)

『第三者からのinfringement(権利侵害)の申立てで損失があった場合は補償する』というような内容で使われます。例文②をご覧ください。

No Warranty/Warranty Disclaimer(非保証条項)

『 売主やライセンサーが目的物にinfringement(権利侵害)がないことを保証しない 』 というような内容で使われます。例文③をご覧ください。

3)infringementが規定する「知的財産権リスクの分配」と「防御・補償義務」

infringement(権利侵害)という用語は、英文契約書において単に「権利が侵害された状態」を指すだけでなく、知的財産権を巡るビジネス上のリスクを当事者間でどのように分担し、そのリスクが顕在化した場合にどのような義務が生じるかを明確にするための根本的な概念です。

この用語が登場する条項は、企業が予期せぬ法的紛争から自社を守り、事業の継続性を確保する上で極めて重要です。

リスクの分担を明確にする:

製品の製造、販売、またはサービスの提供において、第三者の知的財産権を侵害していないことを保証できるか、あるいは、侵害があった場合に誰が責任を負うべきか、という点は常に大きなリスクとなります。

infringementという言葉を用いることで、契約当事者間で「どの権利侵害リスクを誰が負うのか」「侵害発生時の対応義務は誰にあるのか」といったリスクの分担が明確にされます。

これは、特に技術や製品が複雑化する現代のビジネスにおいて、予見可能なリスクと責任の範囲を限定し、予期せぬ高額な損害賠償から企業を守る上で非常に重要です。

防御・補償義務の規定:

infringementという用語は、しばしばIndemnification(補償条項)と組み合わせて使用されます(例文②)。

これは、当事者の一方(通常は製品の提供者やライセンサー)が、提供した製品やサービスが第三者の知的財産権を侵害しているとの申し立てがあった場合に、他方当事者(通常は製品の受領者やライセンシー)を「防御(defend)」し、その結果生じる「費用、損害、損失(claims, costs, damages and losses)」を「補償(indemnify and hold harmless)」する義務を負うことを定めます。

この条項は、買主やライセンシーが安心して製品を利用できるようにする上で極めて重要であり、売主やライセンサーにとっては潜在的に高額なリスクを伴うため、その範囲(例:特許、著作権、商標などどの権利を対象とするか、故意・過失の有無など)を厳密に交渉する必要があります。

「非保証(No Warranty)/保証の排除(Warranty Disclaimer)」との関連:

一方、No Warranty条項(例文③)では、売主やライセンサーが提供物について「第三者の知的財産権を侵害していないことを保証しない」と明示的に定める場合があります。

これは、提供する側が、将来発生しうる第三者からのinfringementの申し立てに関する責任を限定または排除しようとするものです。

このような条項がある場合、買主やライセンシーは、自らがinfringementのリスクを負うことを承諾したことになり、補償を求めることが難しくなるため、契約締結前に慎重な検討が必要です。

この条項は、特にオープンソースソフトウェア(ソースコードが公開され、誰でも使用できるソフトウェア)の提供など、責任範囲を限定したい場合に用いられることが多いです。

対応義務の明確化:

Third Party Infringements条項例文①)のように、契約の目的物に関するinfringementを当事者の一方が発見した場合に、「直ちに相手方に通知し、証拠を提示する」といった対応義務を定めることも重要です。

これにより、両当事者が協力して迅速に対応し、侵害による損害の拡大を防ぐことが可能になります。

 

このように、infringementという言葉は、知的財産権に関連する契約において、「誰が、どのようなリスクを負い、そのリスクが現実のものとなった場合に、誰が、どのように行動し、誰が、どこまで責任を負うのか」という、極めて実務的かつ法的に重要な事項を規定する上で基本となる概念です。

infringementの意味と、関連する条項がどのように機能するのかを理解することは、知的財産権を巡るリスク管理において極めて重要です。

 

2.例文と基本表現:

(注):infringementは、青文字で示しています。

1)infringement(権利侵害)– 例文①

Third Party Infringements(第三者の権利侵害)の規定からです。当事者は、権利侵害を発見した場合、直ちに相手に通知し証拠を提示することに合意します。

Each Party agrees to immediately notify the other Party upon becoming aware of any infringement, misappropriation, illegal use or misuse of the Licensed Intellectual Property in connection with Products and provide to the other Party all available evidence of such infringement.

(訳):

各当事者は、製品に関連したライセンス知的財産の侵害、不正流用、違法使用又は誤用を発見した場合、直ちに相手方に通知し、かかる侵害について、あらゆる入手可能な証拠を相手方に提示することに合意する。

2)infringement(権利侵害)– 例文②

Indemnification(補償条項)からです。当事者は、第三者の知的財産権の侵害による相手方の損失を補償することに合意します。

The client warrants that is has all necessary right, title and interest to the intellectual property rights in content added by the client, such as designs, images, texts, drawings, etc. The client hereby agrees to indemnify and hold harmless the Company in respect of all claims, costs, damages and losses incurred by the Company in relation to any infringement by the client of the intellectual property rights of any third party.

(訳):

クライアントは、デザイン、画像、テキスト、図面など、クライアントが追加したコンテンツの知的財産権に必要な一切の権利、権原及び利益を保持することを保証する。クライアントは、クライアントが第三者の知的財産権を侵害した場合、当社が被った一切の請求、費用、損害及び損失について、当社を補償し免責することに合意する。

*right, title and interestは、権利、権原及び利益という意味です。詳しくは、rights, title, and interestの意味と例文をご覧ください。

*indemnify and hold harmlessは、補償し免責するという意味です。詳しくは、indemnify and hold harmlessの意味と例文をご覧ください。

3)infringement(権利侵害)– 例文③

No Warranty(非保証条項)からです。ライセンサーは、目的物に権利侵害がないことを保証しません。

The Software is provided “as is“. The Company specifically disclaims all warranties expressed or implied, including but not limited to, any warranty of design, or implied warranties of merchantability and fitness for a particular purpose with respect to the Software, operation of the Software, and any particular application or use of the Software, even if the Company has been informed of such purpose. The Company makes no warranties or representations, either express or implied, that the Software transferred hereunder is or will be free from infringement of any patent, copyright, or other rights of third parties. Licensee assumes the entire risk of using Software.

(訳):

ソフトウェアは、「現状のまま」提供される。 当社は、ソフトウェア、ソフトウェアの操作、特定のアプリケーション、ソフトウェアの使用に関する設計の保証、商品適格性及び特定目的の適合性の黙示の保証を含みこれらに限定されない、明示又は黙示の一切の保証については、かかる目的を当社が通知を受けている場合でも、明確に否認する。 当社は、本契約に基づき譲渡されたソフトウェアが、第三者の特許、著作権若しくはその他の権利を侵害していないことを、明示的又は黙示的にも表明保証しない。 ライセンシーは、ソフトウェアの使用について、一切のリスクを負う。

(注):

*as isは、現状のままという意味です。詳しくは、as isとas is where isの意味と例文をご覧ください。

*disclaimsは、否認するという意味です。

*including but not limited toは、を含みこれらに限定されないという意味です。詳しくは、including, but not limited to/including, without limitationの意味と例文をご覧ください。

*merchantabilityは、商品適格性という意味です。implied warrantyとexpress warrantyの意味と例文merchantabilityを解説しているので、ご参考にしてください。

*fitness for a particular purposeは、特定目的の適合性という意味です。詳しくは、fitness for a particular purpose(特定目的の適合性)の意味と例文をご覧ください。

*makes no warranties or representations は、表明保証しないという意味です。Representations and Warranties(表明保証条項)をご参考にしてください。

*free fromは、~がないという意味です。詳しくは、free fromの意味と例文をご覧ください。

 

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