perform its obligationsの意味と例文

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英文契約書で履行に関する表現であるperform its obligationsについて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳と語注をつけました。

1.解説:

1)perform its obligationsとは

perform its obligationsは、英文契約書によく使われる基本表現のひとつです。

perform its obligationsは、

perform(履行する)its obligations(義務)の組み合わせで、

義務を履行する

という意味になります。(下記の例文①例文②例文③をご覧ください)

(ご参考):performは、他に(業務を)遂行するという意味もあります。詳しくは、performとperformanceの意味と例文をご覧ください。

2)関連表現

関連表現として、the performance of its obligations があります。

the performance of its obligationsは、

義務の履行

という意味です。(下記の例文④をご覧ください)

3)なぜ「義務の履行」が重要なのか?

契約の本質は、当事者がそれぞれに合意した「義務」を適切に「履行」することにあります。

この「履行」という行為が、契約の目的達成、そしてビジネス関係の維持に直結します。

契約の根幹:

「義務を履行する」という言葉は、契約書全体を通して、当事者間の基本的な約束事を表現するために不可欠です。

売主は商品を納品する義務、買主は代金を支払う義務、サービス提供者はサービスを提供する義務など、あらゆる契約において義務の履行が中心となります。

違反時の影響:

義務の不履行は、契約違反(Breach of Contract)となり、相手方からの損害賠償請求や契約解除のリスクに直結します。

そのため、「いかに義務を履行するか」は、契約実務において常に意識すべき最重要事項です。

4)契約レビューの重要ポイント:義務の「履行」を巡る
リスクと注意点

「perform its obligations」(義務を履行する)という表現は、契約書では当たり前のように使われますが、その背後には当事者にとっての重大なリスクと注意点が潜んでいます。

このフレーズを含む条項をレビューする際は、以下の点を徹底的に精査することで、将来のトラブルを未然に防ぎ、自社の利益を最大限に保護できます。

ア.「履行」の具体的な内容と範囲を徹底的に明確化する

なぜ問題になるのか?:

「義務の履行」という言葉だけでは、具体的に「何を」「いつまでに」「どのような品質で」行うべきかが不明確なままになりがちです。

これが不明確なままだと、後になって「履行した/していない」「履行の質が低い」といった紛争の温床となります。

特に、複雑なサービス契約や開発契約ではこの点が致命的なリスクとなり得ます。

確認すべきポイント:

義務の特定:

その義務が具体的に何を指すのか(例:商品の納品、ソフトウェアの開発、月次レポートの提出など)が、条項や別紙で明確に特定されているか

曖昧な表現(例:「適切なサポート」)は避け、「サポート内容一覧」「SLA(サービスレベル合意)」などで具体化されているか確認します。

期限・期間の明確化:

「いつまでに」履行するのか、継続的な義務であれば「いつからいつまで」行うのかが、日付、日数、または特定のイベントを基準に明確に定められているか(例:「契約締結後30日以内」「毎月末日」「製品出荷後」)。

Time is of the Essence条項(時間厳守条項)との関連も意識し、期限遵守の厳格性を理解しておくことが極めて重要です。

品質・基準の明確化:

履行される成果物やサービスの「品質基準」が、客観的に測定可能な形で定められているか(例:「業界標準に従う」「特定の仕様書に合致する」「〇〇%のエラー率以下」)。

基準が不明確だと、相手方から「期待通りの履行ではない」と主張されるリスクが高まります。

イ.「履行を妨げる事由」とその責任分担を明確にする

なぜ問題になるのか?:

義務の履行が、当事者の制御できない外的要因や相手方の協力不足によって妨げられることは多々あります。

これらの事由が考慮されていないと、不可抗力や相手方の協力義務違反があった場合でも、自社が義務不履行の責任を負わされる不当なリスクが生じます。

確認すべきポイント:

不可抗力(Force Majeure)条項との連動:

自然災害、戦争、パンデミックなど、当事者の合理的な制御を超えた事由(不可抗力)によって義務が履行できない場合に、免責される旨が明確に規定されているか例文②例文④参照)。

また、不可抗力発生時の通知義務や、義務再開に向けた「最善の努力(best efforts)」義務(例文④参照)なども確認し、自社が対応可能か評価しましょう。

相手方の協力義務:

自社の義務履行が相手方(または第三者)の協力(例:情報提供、承認、施設利用の許可など)に依存する場合、相手方に明確な協力義務が課されているか、そしてその協力が得られない場合の自社の免責や履行期間の延長が規定されているかを確認することが不可欠です。

救済手段(Remedies):

義務不履行があった場合の救済手段が明確か(例:契約解除、損害賠償、履行の強制)。

特に、損害賠償の範囲については、Limitation of Liability(責任制限条項)極めて重要になります。

間接損害や懲罰的損害が除外されているか、賠償額の上限が設定されているかを徹底的に確認しましょう。

ウ.「責任の承継」と「義務の譲渡」に関する注意点

なぜ問題になるのか?:

契約上の義務は、会社が合併・買収されたり、事業が譲渡されたりした場合に、新しい主体に引き継がれることがあります(例文③参照)。

この「義務の承継」や「譲渡」に関する規定が不明確だと、予期せぬ主体が自社との契約義務を負うことになったり、逆に自社の義務が不適切に第三者に移転してしまったりする法的リスクが生じます。

確認すべきポイント:

譲渡制限条項(Assignment):

契約上の権利や義務を第三者に譲渡する際の条件(例:相手方の書面による事前の同意が必要か)が明確かを確認します。

自社にとって望ましくない相手に義務が承継されないよう、厳格な同意要件を設けることが極めて重要です。

義務の引受け(Assumption):

義務を譲渡する際には、譲受人がその義務を「引き受けること(assume)」が明確に規定されているかを確認しましょう(例文③参照)。

これにより、譲渡後も義務が確実に履行されることを担保できます。

「perform its obligations」という言葉は、契約の核心を表すものであり、その裏には多岐にわたる実務上および法的なリスクが隠されています。

契約レビューの際には、単に条項を読み流すのではなく、その文言が自社にどのような具体的な義務を課し、どのようなリスクをもたらし、いかなる状況で責任を免れることができるのかを、徹底的に掘り下げて検討することが、契約を成功に導くための鍵となります。

2.例文と基本表現:

(注):perform its obligationsは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。

1)perform its obligations(義務を履行する)– 例文①

当事者が義務を履行するときに支払う費用は、費用を被る当事者が負担します。

Except as otherwise provided herein, all expenses incurred by each Party in performing its obligations hereunder shall be borne by the Party incurring the expense.

(訳):

本契約に別段の定めがある場合を除き、本契約に基づく義務を履行する際に各当事者が負担するすべての費用については、費用を被る当事者が負担するものとする。

(注):

*Except as otherwise provided hereinは、本契約に別段の定めがある場合を除きという意味です。

2)perform its obligations(義務を履行する)– 例文②

Force Majeure(不可抗力条項)からです。不可抗力により、当事者の一方が契約の義務を履行できず、3か月を超えて継続する場合、他方当事者は、通知して直ちに契約を解除できます。

If either Party is not able to perform its obligations under this Agreement due to a force majeure as described in Article 13, and such force majeure continues in effect for more than three (3) months, the other Party shall have the right to terminate this Agreement effective immediately upon written notice to the non-performing Party.

(訳):

第13条に規定する不可抗力により、いずれかの当事者が本契約に基づく義務を履行できず、かかる不可抗力事由が3か月を超えて継続する場合、他方当事者は、不履行当事者書面通知をして、直ちに本契約を解除する権利を有する。

(注):

*force majeureは、不可抗力という意味です。

*more thanは、~を超えるという意味です。詳しくは、not more thanとnot less thanの意味と例文をご覧ください。

*upon written noticeは、書面通知をしてという意味です。

*the non-performing Partyは、不履行当事者という意味です。

3)perform its obligations(義務を履行する)– 例文③

Assignment(譲渡制限条項)からです。譲受人が契約に基づくライセンサーのすべての義務を履行することに同意すると、ライセンサーは、ライセンシーの同意なしに、契約の権利義務を第三者に譲渡できます。

Licensor shall have the right to assign this Agreement, and all of its rights and privileges hereunder to any Person without Licensee’s prior consent provided the assignee agrees to assume and thereafter perform all obligations of “Licensor” hereunder.

(訳):

ライセンサーは、譲受人が本契約に基づく「ライセンサー」のすべての義務引き受け、それ以降、履行することに同意することを条件に、ライセンシーの事前の同意なしに、本契約および本契約に基づくすべての権利と権限を、いずれの第三者に対しても譲渡する権利を有する。

(注):

*the assigneeは、譲受人という意味です。

*assumeは、(義務を)引き受けるという意味です。

4)the performance of its obligations(義務の履行)– 例文④

不可抗力の影響を受けた当事者は、影響が除去されるまで、義務の履行を停止できます。但し、当該当事者は、かかる障害を排除し、損失を最小限に抑える最善の努力義務を負います。

Subject to the provisions of this Article 12, the prevented Party may suspend the performance of its obligations under this Agreement within the duration and scope of the influence of Force Majeure until such influence is removed, provided, however, that such Party shall make its best efforts to eliminate the barriers in performing this Agreement caused by Force Majeure and minimize the losses resulting from Force Majeure.

(訳):

第12条の規定に従い、影響を受けた当事者は、不可抗力の影響の期間及び範囲内で、当該影響が取り除かれるまで、本契約に基づく義務の履行を一時停止することができる。 但し、不可抗力によって生ずる本契約の履行上の障害を排除し、不可抗力に起因する損失を最小限に抑える最善の努力を尽くすものとする

(注):

*provided, however, that は、但し~とするの意味です。詳しくは、provided thatとprovided, however, thatの意味と例文をご覧ください。

*make its best effortsは、最善の努力を尽くすという意味です。詳しくは、best effortsとreasonable effortsの意味と例文をご覧ください。

 

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