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英文契約書において記録保存条項として置かれるRecord Keepingについて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳をつけ基本表現に語注をつけました。
1.解説:
Record Keepingとは、英文契約書に設けられる
記録保存条項
のことを意味します。
Record Keeping(記録保存条項)は、以下のような英文契約書の主要条項として置かれます。
*リンクをクリックすると各英文契約書についての解説記事にとびます。
・Manufacturing Agreement(製造委託契約)
Record Keeping(記録保存条項)に定められる内容は、以下のようなものになります。
受託先のサービス会社が行うサービス業務の質の維持を目的として、そのサービス業務の履行に関する完全な記録の保持と記録の保存期間を規定します。
② License Agreement(ライセンス契約) :
ライセンシーが支払うロイヤリティ額の根拠となる正確な記録の保持と記録の保存期間を規定します。
サブライセンスされる場合は、サブライセンシーに対する同様の記録保存義務をライセンシーを介して行います。(下記の例文をご覧ください)
③ Manufacturing Agreement(製造委託契約) :
製造委託先の製造者の製品の製造に関する完全な記録の保持と記録の保存期間を規定します。
※実務上の視点:
記録保存条項(Record Keeping)は、業務の履行状況、製品の製造履歴、あるいはロイヤリティ計算の根拠となる数値を一定期間にわたり正確に作成・保管することを義務付ける記録保存条項という条項タイプ(clause type)です。
この条項の最も大切な機能(specific function)は、契約履行の透明性を担保し、万が一の計算誤り、品質トラブル、または法令違反が発生した際に、客観的な記録に基づいて事実関係を正確に検証・追跡できるようにすることにあります。
リーガルチェックの現場では、この条項によって自社に「相手方の報告内容を事後的に検証し、正確な履行を確認・要求できる権利(rights of use)」が実効性をもって確保されているかを精査します。
具体的には、自社がロイヤリティを受け取るライセンサーや業務を発注する委託元の立場であれば、取引の安全を確保する防衛線として「完全かつ正確な記録(complete and accurate records)の作成義務」や「相手方のみならず再委託先・サブライセンシーにも同様の義務を負わせる権利(rights of use)」(例文)を定めておくことが不可欠です。
さらに、保存期間(例:作成後少なくとも3年間)を明確にし、関連する法例上の要請(税法や規制等)に耐えうるデータ管理を求めることが、後日の紛争予防とコンプライアンス維持のための必須の設計となります。
記録保存条項(Record Keeping)と 監査権条項(Audit Rights)の比較:
英文契約の実務において、「記録保存条項(Record Keeping)」と「監査権条項(Audit Rights)」はセットで規定されることが極めて多いですが、それぞれの法的な役割と機能には明確な役割分担が存在します。
取引の厳格な管理を図るため、両概念の相互関係を整理しておきましょう。
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記録保存条項(Record Keeping):
検証の対象となる「証拠の作成・保管義務」-
特徴:
主に受託者やライセンシーに対し、日々の取引、製造、または売上に関する「正確なデータや書類を作成し、消去せずに残しておくこと」を課す受動的・基盤的な義務です(例文)。
監査が実施されるか否かにかかわらず、常に客観的な証拠を維持させることで、不正報告に対する心理的な抑止力としても機能します。
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監査権条項(Audit Rights):
保存された記録を確かめる「権利の行使」-
特徴:
保存された記録や帳簿に対し、委託元やライセンサーが「実際に立ち入って閲覧・検査・複写する積極的な権利」を指します。
記録保存条項(Record Keeping)によって証拠が適切に維持されていることを前提として初めて、監査権条項(Audit Rights)という権利行使が実効性を持つという「裏表(補完)の関係」にあります。
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【選択の指針】
自社が自社の権利や技術を許諾する、あるいは業務を委託する「権利者・発注者」の立場であれば、単に相手方に「報告書」を提出させるだけでなく、必ず「記録保存条項(Record Keeping)」と「監査権条項(Audit Rights)」をペアで盛り込み、報告の裏付けとなる一次データの保存を義務付けることが鉄則となります。
一方、自社が報告を行う「受託者・ライセンシー」の立場であれば、過度なデータ管理費用や永久的な保管義務による負担を回避するため、「保存期間の明確化(例:3年間)」や「保管対象となる書類の範囲の限定」を交渉し、実務上対応可能な範囲へ調整することが極めて重要となります。
2.例文:
(注):よく使われる基本表現をハイライトし語注をつけています。
Record Keeping(記録保存条項)– 例文
ライセンシーは、ロイヤリティ額の支払いの根拠となる販売の正確な記録を保持し、3年間保存します。サブライセンシーも同様の記録保存義務を負います。
Record Keeping
Licensee shall keep and shall cause its Sublicensees to keep complete and accurate records in connection with the sale of the Product in sufficient detail to permit accurate determination of all figures necessary for verification of milestone payments and royalties to be paid hereunder. Licensee shall maintain and shall cause its Sublicensees to maintain such records for a period of at least three (3) years after the end of the period for which they were generated, or longer if required by any law or regulation.
(訳):
記録保存
ライセンシーは、自ら、及びサブライセンシーに、本契約に基づくマイルストーンの支払いとロイヤリティの検証に必要なすべての数値を正確に決定できるようにするために、製品の販売に関しての完全かつ正確な記録を保持し、保持させるものとする。 ライセンシーは、自ら、及びサブライセンシーに、これらの記録を、作成された期間の終了後少なくとも3年間、または法令で要求される場合はそれよりも長い期間保持し、保持させるものとする。
(注):
*cause ~ to ~は、使役の表現で、~に~をさせるという意味です。詳しくは、cause to do の意味と例文をご覧ください。
*complete and accurateは、完全かつ正確なという意味です。
*in connection withは、~に関してのという意味です。
*permitは、ここでは~できるようにする、~を可能にするという意味です。
*milestone paymentsは、(販売進捗に応じた)マイルストーンの支払いという意味です。
*if required by any law or regulationは、法令で要求される場合はという意味です。
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