Service Agreement(業務委託契約)の解説と要点

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Service Agreement(業務委託契約)とは、どのような契約なのか、その基本となる一般条項主要条項の要点は何かについて、解説します。

(注記):本記事では、Service Agreement(業務委託契約)に基づく業務委託の内容を、製品のアフターサービスを例にしています。

(目次)
1.Service Agreementとは
2.Service Agreementの構成と要点
 1)Recitals(前文)
 2)Definitions(定義)
 3)Service and Service Fees(委託業務と報酬)
 4)Vendor Responsibilities(ベンダーの責任)
 5)Term and Termination(期間と解除)
 6)Standard of Services(サービスの基準)
 7)Recordkeeping, Audit and Reports(記録保存、
   監査及び報告書)
 8)No Services to Competitors(競業者に対する
   サービスの禁止)
 9)Confidentiality(秘密保持)
 10) Warranty and Limitation of Liabilities(保証
   及び責任制限)
 11) Non-Solicitation(勧誘の禁止)
 12) Exhibit A – Description of Services
   別紙A:サービスの詳細)
 13) Exhibit B – Spare Parts(別紙B:部品の詳細) 
3.Service Agreementにおける現代の重要課題と
       リスク管理  

1.Service Agreementとは

Service Agreementとは、

業務委託契約、サービス契約

のことを意味します。

たとえば、委託業務の内容が製品のアフターサービスであれば、

委託先であるベンダー受託先のサービス会社に対して、
ベンダーが販売した製品のアフターサービス業務を委託して、
サービス会社がこのサービス業務をベンダーに対して提供することにより報酬を受け取る合意をする契約

のことをいいます。

2.Service Agreementの構成と要点

Service Agreement(業務委託契約)において、基本となる一般条項と 主要条項の構成は、以下の項目1)から項目10)のとおりです。

これら各項目は、英文契約書の契約条項に該当します。

(ご参考):

一般条項主要条項については、くわしくは、

英文契約書の構成(structure of contract )

General Provisions(一般条項)とPrincipal provisions (主要条項)

をご覧ください。

以下に、各条項についての解説が続きます。

1)Recitals(前文):

Recitalsとは、英文契約書に置かれる前文のことをいいます。

Recitals(前文)とは、契約の締結に至るまでの経緯、背景などを説明したパートの条文です。

ここでは、ベンダーとサービス会社が、

Service Agreement(業務委託契約)を締結するに至った経過

を記載します。

(ご参考):

Recitals(前文)については、くわしくは、

RecitalsとWITNESSETHとWhereas clauseの意味と例文

をご覧ください。

Definitions(定義)

Definitions(定義)とは、

当事者間で、用語の意味を正確にして解釈に食い違いがおきないようにする

ための条項です。

Service Agreement(業務委託契約)においては、以下の①から⑤の用語がキーワードとなります。

項目3)Service and Service Fees(委託業務と報酬)で定める

用語 services(サービス業務)

項目3)Service and Service Fees(委託業務と報酬)で定める

用語:service fee(サービス業務の報酬)

項目7)Recordkeeping, Audit and Reports(記録保存、監査及び報告書)で定める

③用語:Reports(報告書)

そして、

用語:Territory(対象地域)

用語:Users(製品を使用するユーザー)

これらの①から⑤の用語の定義を行います。

(ご参考):

用語の定義については、くわしくは、Definitions(定義条項)の記事をご覧ください(例文あり)。

Service and Service Fees(委託業務と報酬):

以下について、取り決めます。

①サービス会社が別紙Aに記載するservices(サービス業務)を提供すること。

②ベンダーが有償で別紙Bに記載する部品を支給すること。

③サービス業務の対価としてベンダーがサービス会社に支払うService Fees(報酬)金額

Service Fees(報酬)支払い方法支払い期日、など。

Vendor Responsibilities(ベンダーの責任):

以下について、取り決めます。

サービス会社がサービス業務を履行するために必要となる技術情報技術支援を、ベンダーが無償提供する。

Term and Termination(期間と解除):

以下について、取り決めます。

①契約の有効期間自動更新の条件。

②いずれかの当事者に重大な債務不履行があり、
 是正の通知後債務不履行が解消しない場合
 契約解除期限の利益喪失

不可抗力が生じた場合の契約解除

(ご参考):

契約の有効期間自動更新については、くわしくは、

Term/Duration(契約期間条項)

term and renewal(契約期間の更新条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

契約解除については、くわしくは、

Termination(契約解除条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

期限の利益喪失については、くわしくは、

Acceleration(期限の利益喪失条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

不可抗力については、くわしくは、

Force Majeure(不可抗力条項)

をご覧ください(例文あり)。

Standard of Services(サービスの基準):

以下について、取り決めます。

①サービス会社が提供するサービス業務の水準

②サービス会社は、サービス業務を提供することについて、商業的に合理的な努力を払うこと。

(ご参考):

商業的に合理的な努力については、くわしくは、

best efforts と reasonable effortsの意味と例文

をご覧ください。

Recordkeeping, Audit and Reports(記録保存、監査及び報告書):

以下について、取り決めます。

①サービス会社が行ったサービス業務の記録の保存

②サービス会社によるサービス業務のReports(報告書)の定期的な提出。

③サービス会社が保存するサービス業務に関する原本のベンダーによる監査

(ご参考):

記録保存、監査及び報告書については、

Audit Rights(監査権条項)

をご参考にしてください(例文あり)。

No Services to Competitors(競業者に対するサービスの禁止):

契約の期間中は、

サービス会社とその従業員が、ベンダーの競業者に対して、サービス業務を提供することを禁止する

ことを取り決めます。

(ご参考):

競業者に対するサービスの禁止については、

Non-Competition(競業避止条項)

をご参考にしてください(例文あり)。

Confidentiality(秘密保持):

ベンダーとサービス会社との間で、

秘密情報についての秘密保持目的外利用の禁止

を取り決めます。

(ご参考):

秘密保持については、くわしくは、

Confidentiality(秘密保持条項)

をご覧ください(例文あり)。

10Warranty and Limitation of Liabilities(保証及び責任制限):

Warranty(保証)は、ベンダーがサービス会社に支給する部品について、別紙Bに記載するとおり一定期間保証することを定めます。

Limitation of Liabilities(責任制限)は、重要な契約違反を除き、一方当事者が他方当事者の債務不履行により被った損害賠償の制限について取り決めます。

(ご参考):

保証については、くわしくは、

Warranty(保証条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

責任制限については、くわしくは、

Limitation of Liability(責任制限条項)

をご覧ください(例文あり)。

11Non-Solicitation(勧誘の禁止)

契約の期間中、期間満了後及び解除後の一定期間における、お互いの従業員の雇用勧誘を禁止します。

(ご参考):

勧誘の禁止については、くわしくは、

Non-solicitation(勧誘禁止条項)

をご覧ください(例文あり)。 

Exhibit A – Description of Services(別紙A:サービスの詳細):

別紙Aにて、

項目3)Service and Service Fees(委託業務と報酬)

に従って、

サービス会社が行うservices(サービス業務)の詳細を定めます

(ご参考):

別紙については、

exhibitとappendixの意味と例文

をご参考にしてください。

Exhibit B – Spare Parts(別紙B:部品の詳細)

別紙Bにて、

項目3)Service and Service Fees(委託業務と報酬)と、

項目10Warranty and Limitation of Liabilities(保証及び責任制限)

に従って、

ベンダーがサービス会社に支給する部品の価格部品の限定保証

などを定めます。

3.Service Agreementにおける現代の重要課題と
リスク管理

現代のビジネス環境において、Service Agreement(業務委託契約)は、単なる業務の切り出しだけでなく、専門性の活用、コスト効率化、グローバル展開など、多岐にわたる重要な意義を持ちます。

しかし、その一方で、品質管理、情報セキュリティ、知的財産権の保護、個人情報保護といった、より複雑で高度なリスク管理が求められるようになっています。

ここでは、特に現代の業務委託契約で重視すべき課題と、それらに対するリスク管理のポイントを深掘りします。

ア.サービス品質の確保とパフォーマンス管理

Service Level Agreement(SLA)の組み込み:

現在の「Standard of Services(サービスの基準)」条項をさらに強化するため、具体的なService Level Agreement(SLA)を別紙として組み込むことが一般的です。

SLAでは、応答時間(response time)、解決時間(resolution time)、稼働率(uptime percentage)など、サービスの具体的な数値目標(metrics)と測定方法、達成できなかった場合のペナルティ(penalties)やサービスクレジット(service credits)を明確に定めます。これにより、サービスの品質が客観的に評価され、受託側の責任が明確化されます。

パフォーマンスレビューと是正措置:

定期的なパフォーマンスレビューの実施を義務付け、SLAの達成状況を評価する仕組みを設けます。

基準を下回った場合の是正計画(corrective action plan)の提出義務や、改善が見られない場合の契約解除権(termination right)など、委託側のコントロールを担保する条項を検討すべきです。

イ.情報セキュリティとデータ保護の強化

データ保護条項の具体化:

業務委託において個人情報や機密データを取り扱う場合、GDPR(EU一般データ保護規則)や各国の個人情報保護法、情報セキュリティ基準への準拠を明確に定めます。

これには、データの収集・処理・保存・消去に関する具体的な手順、アクセス制御、暗号化、監査体制などが含まれます。

サービス会社がサブコントラクター(再委託先)を利用する場合、そのサブコントラクターにも同等のセキュリティ義務を課す条項(flow-down clause)も不可欠です。

セキュリティ侵害時の対応義務:

データ侵害(data breach)が発生した場合のサービス会社の報告義務、協力義務、損害賠償責任について、詳細に規定します。

通知の迅速性(例:発覚後〇時間以内)や、インシデント対応計画(incident response plan)の共有なども盛り込むべきです。

ウ.知的財産権(IP)の帰属と利用

成果物のIP帰属:

業務委託契約において、サービス会社が新たなソフトウェア、報告書、デザインなどの成果物(deliverables)を作成する場合、その知的財産権の帰属を明確にすることが非常に重要です。

通常は、委託側(ベンダー)にすべての権利が帰属する(works made for hire)旨を規定しますが、サービス会社の既存のIPや汎用的なツールが使用される場合は、そのライセンス条件を詳細に定める必要があります。

既存IPの使用許諾:

業務遂行のために、ベンダーがサービス会社に提供する既存のソフトウェア、商標、ノウハウなどについて、サービス会社がどこまで利用できるか(scope of license)を明確にする必要があります。

これは通常、業務遂行目的のみに限定されます。

エ.紛争解決と責任制限の戦略的活用

段階的紛争解決(Escalation Clause):

万が一の紛争に備え、訴訟に至る前に、まずは両社の担当者、次いで上級管理職による協議、さらに調停(mediation)など、段階的な紛争解決プロセスを定める条項(escalation clause)を設けることで、友好的かつ迅速な解決を促します。

補償(Indemnification)条項の検討:

サービス会社の過失や不履行によってベンダーが第三者から損害賠償請求を受けた場合の補償義務(indemnification)について、責任制限条項とのバランスを考慮しつつ、その範囲と条件を明確に定めます。

特に、情報漏洩や知的財産権侵害に関する補償は、重点的に検討すべきポイントです。

責任制限条項の再確認:

「Warranty and Limitation of Liabilities(保証及び責任制限)」条項(上記10))において、責任制限の適用外となるケース(例:故意または重過失、情報セキュリティ違反、秘密保持義務違反)を具体的に明記することで、ベンダーのリスクを適切にヘッジします。

オ.出口戦略(Exit Strategy)と移行計画

契約終了時の移行義務:

契約が終了または解除された場合、サービス会社が保管する情報の返還・消去、進行中の業務の引き継ぎ、後任のサービス会社への協力など、円滑な業務移行(transition)に関する義務を詳細に定めます。

これは、ベンダーの事業継続性を確保するために非常に重要です。

終了時のデータ移行とアクセス権限:

特にクラウドサービスやIT関連の業務委託では、契約終了後のデータの移行方法、移行期間、必要なフォーマット、そしてアクセス権限の抹消について具体的に定めることが求められます。

これらの現代的な課題とリスク管理の視点を取り入れることで、Service Agreementは、単なる業務委託の枠を超え、企業の戦略的なパートナーシップとリスク管理の中核をなす、より堅固で実用的な契約書とすることができます。

 

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