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英文契約書と日本語契約書の違いについて解説します。
目次:
1.はじめに:
2.解説:
1)法体系(英米法と日本法)の違い
2)契約書の構造や内容の違い
契約書の違い – 例文での比較
3)契約書の作成や解釈の違い
4)契約に対する考え方の違い
3.まとめ:
国内取引から海外取引へ事業を拡大し英文契約書が必要になった企業の方、海外企業から英文契約書の提示を受けた企業の方から、英文契約書は日本語契約書とどこが違うのかという声を聞きます。
英文契約書と日本語契約書の違い・比較については、いくつかのポイントがあります。
この記事では、以下の要領にて、具体的な例文付きで、英文契約書と日本語契約書の特徴を比較して解説したいと思います。
1)法体系(英米法と日本法)の違い
2)契約書の構造や内容の違い – 例文付き
3)契約書の作成や解釈の違い
4)契約に対する考え方の違い
1)法体系(英米法と日本法)の違い:
①英文契約書の場合:
英文契約書は、主に英米法(コモンロー)に基づいて作成されます。
英米法(コモンロー)は、イギリス発祥の法律で、米国をはじめとする多くの国で採用されています。
英米法(コモンロー)では、
判例法が重視され、契約書に詳細な条項が盛り込まれる傾向
があります。
というのは、判例法は、
過去の裁判の判決が積み重なって形成される法体系であり、同じような案件でも、過去の判決によって異なる解釈がされる場合がある
ためです。
判例法のこのような性質から、
契約当事者は、将来の様々な状況を想定し、契約書に詳細な条項を盛り込むことで解釈の余地を少なくし、将来の紛争を予防する
ことを重視します。
②日本語契約書の場合:
日本の契約書は、
主に日本法(大陸法)に基づいて作成されます。
日本法(大陸法)では、
法典(注:民法や商法のことです)に法律の原則やルールが詳細に記載されています。
日本での契約書は、
法典に書かれている法条文を前提として、
契約で特に合意したい事項を中心に記載することが多く、比較的簡潔にまとめられます。
2)契約書の構造や内容の違い – 例文付き:
①英文契約書の場合:
詳細な条項:
契約の目的、当事者の権利義務、契約期間、違約金、紛争解決方法など、あらゆる可能性を想定した詳細な条項が盛り込まれます。
用語の明確な定義:
解釈の誤りを防ぐため、用語の定義が明確に記載されます。
不可抗力事由の規定:
自然災害など、当事者の責に帰さない事由による契約不履行について規定されます。
準拠法の明記:
契約に適用される法が明記されます。
②日本語契約書の場合:
簡潔な条項:
重要な事項を中心に記載され、詳細な部分は、業界の慣習や関係者の間での了解事項として扱われることがあります。
用語の定義:
英文契約書ほど詳細な定義は必ずしも記載されません。
不可抗力:
明確に規定されていない場合もあります。
準拠法:
日本法が適用されることが多いですが、明記されない場合もあります。
例えば、契約書の内容の違いについて、
契約の目的(Purpose)に関する条項と
不可抗力(Force Majeure)に関する条項
の各例文を取り上げて、英文契約書と日本語契約書の違いを比較してみます。
1) 契約の目的(Purpose)に関する条項:
英文契約書の場合:
一般的に、契約の目的を非常に具体的に、かつ専門用語を用いて詳しく記載します。
例:
“The purpose of this Agreement is to set forth the terms and conditions under which the Seller shall sell and deliver the Products to the Buyer, and the Buyer shall purchase and accept the Products.”
訳:
本契約の目的は、売主が買主に製品を販売し引き渡し、買主が製品を購入し受け入れる取引条件を規定することにある。
日本語契約書の場合:
契約の目的は比較的簡潔に表現されることが多く、専門用語の使用も控えめです。
例:
「本契約は、甲が乙に製品を販売し、乙が製品を購入することを目的とする。」
特徴的な違いは、
英文契約書は、
契約の目的を詳しくに規定し、将来発生する可能性のある紛争を未然に防ぐことを重視します。
また、英文契約書は、
専門用語を使って、厳密な法的意味合いを求めます。
一方、日本語契約書は、
目的を簡潔に表現し、当事者間の信頼関係を前提とする傾向があります。
また、日本語契約書は、
平易な言葉で表現され、一般的に理解しやすいような配慮があります。
2)不可抗力(Force Majeure)に関する条項:
英文契約書の場合:
不可抗力事由を詳細に列挙し、その発生した場合の当事者の義務や責任を明確に規定します。
例文:
“Neither party shall be liable for any delay or failure to perform its obligations under this Agreement due to any cause beyond its reasonable control, including, but not limited to, acts of God, war, terrorism, and natural disasters.”
訳:
いずれの当事者も、天災、戦争、テロ、自然災害など、合理的支配の及ばない、いかなる事由による本契約上の義務の履行遅滞又は不履行については、責任を負わない。
日本語契約書の場合:
不可抗力事由は、自然災害などに限定されることが多く、その発生した場合の当事者の義務や責任は、比較的抽象的に表現されます。
例文:
「天災地変などの不可抗力の事由により、本契約の履行が遅延または不可能となった場合、当事者は一切の責任を負わない。」
不可抗力(Force Majeure)条項の例文での比較から分かりますように
特徴的な違いは、その詳細さにあります。
英文契約書は、
不可抗力事由を具体的に列挙することにより、法的リスクを最小限に抑えることを重視します。
日本語契約書は、
不可抗力事由を抽象的に表現し、当事者間の信頼関係を前提とする傾向があります。
3)契約書の作成や解釈の違い:
①英文契約書の場合:
契約書の作成:
弁護士などの法律専門家によって作成されることが多く、専門用語や表現が多く使用されます。
契約書の解釈:
契約書に記載された文言が厳格に解釈されます。
②日本語契約書の場合:
契約書の作成:
契約書の作成の主体は、企業の規模や契約の内容によって異なり、必ずしも弁護士などの専門家とは限りません。(企業に法務部がある場合は、法務部スタッフが契約書の作成を担当することが多いです。)
契約書の解釈:
柔軟な解釈が特徴です。関係者間の信頼関係を重視し、契約書に記載されていない事項についても、実情に合わせて解釈されることがあります。
4)契約に対する考え方の違い:
①英文契約書の場合:
海外、特に英米では、
契約書は法的な拘束力を持つ厳格な文書と捉えられ、
契約書に記載された内容が厳密に履行されることが求められます。
②日本語契約書の場合:
日本では、
当事者の人間関係が重視され、契約書はあくまでも取引の記録と捉えられることがあります。
以上のように、
英文契約書と日本語契約書の違いはいくつかあるのですが、
基本的な違いは、
英米法と大陸法(日本法)の法体系の違いに起因する
と言えます。
英文契約書は、
英米法(コモンロー)に基づき、
判例法が重視されるため、契約書に詳細な条項が盛り込まれ、
将来起こりうる様々な状況を想定して、契約内容を明確にしようとする
特徴があります。
一方、日本語契約書は、
大陸法である日本法に基づき、
法典に明記された法条文が重視されるため、契約書は比較的簡潔で、
法典の規定を前提とした上で、契約に特有な事項を記載する傾向
があります。
なお、注意点として、
必ずしも全ての英文契約書が詳細で、全ての日本語契約書が簡潔というわけではありません。
契約の内容や当事者の意向、ビジネス慣習や業界によって、契約書の記載内容は大きく異なることがありえる
ことをご承知ください。
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