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英文契約書の保証条項で使われるas is、as is where is、with all faultsの表現について解説します。いくつかの例文に訳をつけています。例文中の他の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)as isとは
as isは、売買取引の英文契約書において、warranty(保証条項)で用いられる表現です。
なお、warranty(保証条項)とは、
売主やメーカーなどが販売する物品の性能や品質の保証範囲を定めるもので、特に、物品を対象物とする英文契約書に置かれる契約条項です。
as isは、
中古製品や不動産などの売買において、売主による品質保証がない状態で、目的物や物件を引き渡す
ことを意味します。
売主は、目的物に不具合があっても責任を負わないことになるので有利となりますが、買主にとっては、慎重な判断が求められる取引となります。
通常、as isは、
現状有姿でとか現状ありのままで
と訳されます。
as is(現状有姿で)は、このまま単独の表現(例文②をご覧ください)でも、次に解説する組み合わせの表現でも用いられます。
2)WHERE ISとwith all faults
as is(現状有姿で)は、
WHERE IS(現状のままで)や、
with all faults(あらゆる不具合のついた状態で、不具合を問わない状態で)
と組み合わせて表現されることも多いです。
with all faults(あらゆる不具合のついた状態で、不具合を問わない状態で)はきつい表現ですが、法的には、as isだけの場合と効力は同じです。(例文③をご覧ください)
以下が、組み合わせの表現の例です:
・ “AS IS”, with all faults:
不具合を問わず、現状有姿でと訳されます。(例文①をご参照ください)
・“AS IS, WHERE IS” :
as isと同じです。 現状有姿でと訳されます。(例文③をご参照ください)
・ON AN “AS IS, WHERE IS” BASIS:
ON AN “AS IS, WHERE IS” BASISは、単に
ON AN “AS IS” BASIS
と表現されることもあります。
現状有姿のままの状態でとか、現状有姿の引渡し条件でと訳されます。(例文④をご参照ください)
3)大文字の表記について
warranty(保証条項)には、大文字の表記が多く見られます。
相手に不利になる部分は、明確に書くことを規定しているUniform Commercial Code(UCC:米国統一商事法典)を考慮しているためです。
なお、Uniform Commercial Code(米国統一商事法典)とは、
米国において、各州が制定する州法が基本法となっており、州と州の間では、異なる法律が存在しているため、ビジネスが複数の州をまたぐ場合に、各州の企業が互いにビジネスを行いやすくするために制定された法律です。
4)「as is」取引における買主のリスクと注意点(デューデリジェンスの重要性)
「as is」条項は、売主にとっては売却後の責任を限定できる非常に有利な条項です。
しかし、裏を返せば、買主にとっては非常に大きなリスクを伴う取引であることを意味します。
買主が「as is」の条件で物品や不動産を取得する場合、以下のようなリスクと注意点があります。
予期せぬ不具合や欠陥の発見:
「as is」取引では、売主は通常、品質や性能に関する保証を一切行いません。
そのため、購入後に物品や不動産に予期せぬ故障、損傷、あるいは隠れた欠陥(例えば、中古機械の内部的な不具合、不動産の構造上の問題など)が発見されても、買主自身がその修理費用や損失を負担しなければならないことになります。
売主に対して損害賠償を請求することは、非常に難しくなります。
目的物の法的適合性の問題:
場合によっては、購入した物品や不動産が、特定の用途や現地の法規制(例:建築基準法、環境規制など)に適合しないといった問題が後から発覚するリスクもあります。
これも、買主が「as is」条件を承諾していれば、売主の責任を追及することは困難です。
これらのリスクを回避するためには、買主は契約締結前に「デューデリジェンス(Due Diligence)」を徹底的に行うことが極めて重要です。
デューデリジェンスとは?:
デューデリジェンスとは、取引の対象となる物品や不動産の価値、状態、法的リスクなどを、買主自身が徹底的に調査することを指します。
具体的には、専門家(例:機械であればエンジニア、不動産であれば建築士や不動産鑑定士、弁護士など)を雇い、以下のような調査を行うことが考えられます。
物理的な検査:
目的物の現状を詳しく調べ、損傷や故障がないか、機能が正常かを確認する。
法的調査:
目的物に関する所有権の履歴、担保権の有無、法規制への適合性などを調べる。
書類の確認:
メンテナンス記録、修理履歴、許認可証など、関連するあらゆる書類を確認する。
「as is」条項が含まれる契約では、買主の徹底したデューデリジェンスこそが、最も重要なリスクヘッジの手段となります。
もし十分な調査を行わずに契約を締結した場合、後で問題が発覚しても、買主がそのリスクを全て負うことになる、という点を十分に理解しておく必要があります。
2.例文と基本表現:
(注):as isの関連表現は、青文字で示し、他の基本表現をハイライトしています。
1)“AS IS”, with all faultsの例文 ①:
AS ISとwith all faultsの組み合わせの表現(不具合を問わず、現状有姿で)で使われています。
The execution and delivery of this Lease by Tenant shall be conclusive evidence, as against Tenant, that Tenant accepts the Premises “AS IS”, with all faults.
(訳):
賃借人による本賃貸借契約の締結は、賃借人に対して、賃借人が、不具合を問わず「現状有姿で」、本不動産を受け入れる確定的な証拠とする。
(注):
*The execution and deliveryは、(契約の)締結という意味です。類語による強調表現です。
2)as is の例文 ②:
as is(現状有姿で)が単独で使用されています。
Except as specifically provided in this Contract, Seller makes no representations or warranties to Buyer with respect to the condition of the Property and Buyer shall take title to the Property in its “as is” condition as of the date of Closing.
(訳):
本契約で個別に規定されている場合を除き、売主は物件の状態に関して、買主に対し一切の表明保証を行わず、買主は、締結日時点の「現状有姿」の状態で、物件の所有権を取得するものとする。
(注):
*Except as specifically provided inは、で個別に規定されている場合を除きという意味です。くわしくは、except asとexcept as provided inの意味と例文をご参考にしてください。
*makes no representations or warrantiesは、一切の表明保証を行わないという意味です。
*take title toは、の所有権を取得するという意味です。
3)AS IS, WHERE ISとWITH ALL FAULTSの例文 ③:
AS IS, WHERE IS(現状有姿で)と WITH ALL FAULTS(不具合を問わない)の組み合わせで使われています。
Subject to the express representations and warranties of Seller set forth in this Agreement and in the documents executed and delivered by Seller in accordance with this Agreement, the Property is being sold in an “AS IS, WHERE IS” condition and “WITH ALL FAULTS” as of the date of this Agreement and of Closing.
(訳):
本契約と本契約に基づき売主が締結し交付する文書に規定される売主の明示の表明保証に従い、本物件は、本契約日付および締結日現在の「現状有姿のまま」ならびに「不具合を問わない」状態で売買される。
(注):
*Subject to the express representations and warrantiesは、明示の表明保証に従ってという意味です。
*set forth inは、に規定されるという意味です。
*in accordance withは、~に従って、~に基づきという意味です。
4)ON AN “AS IS, WHERE IS” BASISの例文 ④:
ON AN “AS IS, WHERE IS” BASIS( 現状有姿のままの状態で)が使われています。
BUYER ACKNOWLEDGES THAT AS A MATERIAL CONDITION OF THE TRANSACTIONS CONTEMPLATED BY THIS AGREEMENT, BUYER IS ACQUIRING THE PROPERTY ON AN “AS IS, WHERE IS” BASIS EXCEPT AS OTHERWISE EXPRESSLY PROVIDED IN THIS AGREEMENT.
(訳):
買主は、 本契約で明示的に規定される場合を除き、 本契約で予定されている取引の重要な条件として、「現状有姿のまま」の状態で物件を取得することを確認する。
(注):
*MATERIALは、重大な、重要なという意味です。くわしくは、material breachの意味と例文をご参考にしてください。
*CONTEMPLATED BY THIS AGREEMENTは、本契約で予定されている、本契約に基づく目的であるという意味です。くわしくは、contemplateの意味と例文をご覧ください。
*EXCEPT AS OTHERWISE EXPRESSLY PROVIDED INは、で明示的に規定される場合を除きという意味です。
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