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英文契約書の補償条項で使われる基本表現であるindemnify and hold harmlessについて解説します。いくつかの例文に要点と対訳と語注をつけました。
1.解説:
1)indemnify and hold harmlessとは
indemnify and hold harmlessの表現は、
indemnify and hold harmless A from Bの形式で使われ、
(一方当事者に契約違反や義務違反があり、相手方当事者に損害を生じさせた場合に)
BからAを補償し免責する
という意味になります。
補償し免責するとは、
損害を補ってその損害の責任を負わせない、つまり損害を与えない
ということです。
indemnify and hold harmless A from B(BからAを補償し免責する)は、
以下のように表現されることもありますが、意味は同じです。
・indemnify and hold harmless A against B
・indemnify and hold harmless A from and against B
そして
Aに、補償を受け免責される相手方当事者
Bに、補償の対象となる損害
がそれぞれ入ります。
2)indemnify and hold harmless(補償し免責する)が使われる場面
indemnify and hold harmless(補償し免責する)は、英文契約書のIndemnification (補償条項)で使われます。
Indemnification (補償条項)とは、
一方当事者に契約違反や義務違反があり、
相手方当事者が損害を被った場合に、一方当事者が相手方当事者に損害を補うことを約束する、
つまり損害が生じた場合のリスクを一方当事者から相手方当事者に移転させる
ことを目的とした契約条項です。
3)注意点と対応
ここで注意したい点があります。
前の項目1)で述べた、
Aの補償を受け免責される当事者と、Bの補償の対象となる損害
のそれぞれの範囲がどこまで及ぶのかということです。
Aの補償を受け免責される当事者は、
『契約の相手方当事者』だけのこともあれば、
その範囲が『その従業員や役員、関連会社、株主、代理人、コンサルタント』
などにまで及ぶこともあります。
Bの補償の対象となる損害も、
文字通り『損害』だけのこともあれば、
『契約違反から生じる第三者からの訴訟を含めたあらゆる請求、責任、損害、損失、弁護士費用』
などと範囲を広げて規定されることもあります。
Aの補償を受け免責される当事者と、Bの補償の対象となる損害
のそれぞれの範囲が広い場合、
自社が補償を受ける当事者Aの立場であればよいのですが、
もし補償する側の当事者であれば、その責任の負担が大きくなり不利となります。
この場合は、以下の二通りの対応が考えられます。
①ひとつは、Aは相手方当事者のみ、Bは直接の損害のみ
にとどめるなどして、補償する範囲・責任をできるだけ限定するやり方があります。
②もうひとつは、自社のみが補償する義務を負う契約書になっている場合は、契約違反の結果生じた損害について、
双方の当事者が相手方を補償する内容に変更できないかを検討します。
2.例文と基本表現:
(注):indemnify and hold harmlessは、青文字で示しています。
(注):他の基本表現をハイライトし語注をつけています。
1) indemnify and hold harmless の例文①:
ライセンサーは、第三者の訴訟等で被るライセンシーの損害から、ライセンシーを補償します。
Licensor will indemnify, defend, and hold harmless Licensee from and against any and all losses incurred by Licensee arising from any third-party action, suit, or claim that alleges the Licensed Software, or any use of the Licensed Software infringes any Intellectual Property Rights.
(訳):
ライセンサーは、ライセンスソフトウェアを主張する第三者の訴訟もしくは申し立てまたはライセンスソフトウェアの使用による知的財産権の侵害から生じて被るライセンシーのすべての損害から、ライセンシーを補償し防御し免責する。
(注):
*この例文では、indemnify and hold harmlessとdefend(防御する)の組み合わせになっています。
*any and allは、すべての、一切のという意味です。
*arising fromは、から生じてという意味です。詳しくは、arising out ofとarising fromの意味と例文をご覧ください。
*action, suit,は、訴訟という意味です。類義語を並べた強調表現です。
*allegesは、~を主張するという意味です。詳しくは、allegeの意味と例文をご覧ください。
2) indemnify and hold harmless の例文②:
売主は、売主の表明・誓約の違反に起因した請求等から、買主を補償します。
Seller agrees to indemnify and hold Buyer harmless from any and all claims, damages and liabilities arising from Seller’s breach of its representations and/or covenants set forth herein.
(訳):
売主は、本契約に規定する売主の表明または誓約の違反に起因したすべての請求、損害および責任から、買主を補償し免責することに合意する。
(注):
*Seller’s breach of its representations and/or covenantsは、売主の表明または誓約の違反という意味です。
*set forth hereinは、本契約に規定するという意味です。
3) indemnify and hold harmless の例文③:
ベンダーは、第三者の知的財産権を侵害する旨の訴訟から、販売店を補償します。
Vendor will indemnify and hold Distributor harmless against any claim or legal action brought by a third party alleging that Distributor’s use or sale of the Products infringes the intellectual property or other proprietary rights of the third party.
(訳):
ベンダーは、販売店による製品の使用もしくは販売が、第三者の知的財産権もしくはその他財産権を侵害する、と主張する第三者による申し立てまたは法的措置から、販売店を補償し免責する。
(注):
*allegingは、~と主張するという意味です。
*intellectual property or other proprietary rightsは、知的財産権もしくはその他財産権という意味です。
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