英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック・翻訳の専門事務所です。
英文契約書で、権利、条項、法律を行使する、発動するという意味で用いられるinvokeについて、注意点を含め解説します。多数の例文もご紹介します。
目次:
1.解説
1)invokeとは
2)invokeのニュアンス
3)invokeとよく似た用語
2.invokeの例文
1)例文1:権利などを行使する
2)例文2:条項を発動する
3)例文3:条項を発動する
4)例文4:法律や規則などを適用する
3.invokeとよく似た用語の例文
4.invokeの注意点と例文
1)invokeされる権利や条項の明確かどうか
2)invokeの条件や手続きが明確かどうか
invokeは、英文契約書において、
権利、条項、法律などを行使する、発動する、適用する
という意味で用いられる動詞です。
日常会話では、あまりなじみがありません。
しかし、少し形式的な表現として、英文契約書でかなりの頻度で使用されます。
米国大統領や議会に関する政治・法律関係の英語ニュースでもよく耳にします。
invokeは、契約書の文脈により、以下のようなニュアンス・意味合いを含んでいます。
権利の行使:
正式な手続きや根拠に基づいて権利を行使する際に用いられます。
条項の発動:
契約条項や法律条項を発動させる場合にも用いられます。
法律や規則などの適用:
法律や規則などを適用する際に用いられます。
このように、invokeは、権利、条項、法律などを正式な手続きや根拠に基づいて行使する際に用いられるフォーマルな表現であるといえます。
invokeは、日常会話ではあまりなじみがありせん。
しかし政治・法律関係の英文ニュースなどでは、よく耳にします。
例えば、米国大統領が特定の法律や権限を発動する際や、議会が特定の条項や規則を発動する際にも、invokeが使われます。
invokeは、正式な手続きや権限に基づいて何かを発動する、行使する、というニュアンスがあります。
invokeとよく似た用語に、exercise、enforce、implementがあります。
exercise(行使する):
権利などを行使するという意味で、invokeと同様に使われますが、invokeよりも一般的な表現です。
enforce(執行する、実施する):
法律や契約などを執行する(=強制的に実行する)という意味で使われます。
implement(実施する、実行する):
契約や計画などを実行するという意味で使われます。
In the event of a material breach of this Agreement, the non-breaching party may invoke its right to terminate this Agreement upon written notice to the breaching party.
(訳):
本契約の重大な違反が発生した場合、非違反当事者は、違反当事者への書面による通知により、本契約を解除する権利を行使することができる。
The Company may invoke the arbitration clause of this Agreement to resolve any dispute arising out of or relating to this Agreement.
(訳):
会社は、本契約に起因又は関連する紛争を解決するために、本契約の仲裁条項を発動することができる。
If the Supplier fails to deliver the Products by the agreed delivery date, the Company may invoke the penalty clause of this Agreement and claim liquidated damages.
(訳):
サプライヤーが合意された納期までに製品を納品しなかった場合、会社は本契約の違約条項を発動し、損害賠償を請求することができる。
The court may invoke the provisions of the Uniform Commercial Code to determine the liability of the parties.
(訳):
裁判所は、当事者の責任を判断するために統一商事法典の規定を適用することができる。
(参考):
Uniform Commercial Code (UCC:米国統一商事法典)について:
米国のほとんどの州で採用されている商取引に関する統一法典です。
契約法、物品売買、手形、担保取引など、幅広い商取引を規律しています。
裁判所が商取引に関する紛争を解決する際に、UCCの規定が適用されることがよくあります。
(補足):
invokeは、以上のように、文脈によって「行使する」「発動する」「適用する」に使い分けられますが、分かりやすくするため、ひっくるめて「行使する」と言い換えることもできます。
例えば、上記の例文は、いずれも「行使する」に置き換えても意味が通じます。
例文1:権利などを行使する
→ 権利などを行使する(そのまま)
例文2:条項を発動する
→ 条項を行使する(言い換え)
例文3:条項を発動する
→ 条項を行使する(言い換え)
例文4:法律や規則などを適用する
→ 法律や規則などを行使する(言い換え)
このように、invokeは、権利、条項、法律などを正式な手続きや根拠に基づいて行使する際に用いられる形式的な表現であると理解することができます。
invokeとよく似た用語であるexercise、enforce、implementの例文をご紹介します。
例文:exercise(行使する)
The Buyer may exercise its right to inspect the Goods upon delivery.
(訳):
買主は、納品時に商品を検査する権利を行使することができる。
例文:enforce(執行する、実施する)
The court may enforce the terms of this Agreement by issuing an injunction.
(訳):
裁判所は、差止命令を発行することにより、本契約の条項を執行することができる。
例文:implement(実施する、実行する)
The Company shall implement a quality control system to ensure the safety of the Products.
(訳):
会社は、製品の安全性を確保するために品質管理システムを実施するものとする。
invokeが契約書で使用されている場合の注意点について、例文を参考に解説します。
invokeされる権利や条項が不明確な場合、当事者間で解釈の相違が生じ、紛争に発展するリスクがあります。
(修正前の例文):
The Company may invoke its rights under this Agreement.
(訳):
会社は、本契約に基づく権利を行使することができる。
(問題点):
この例文では、invokeされる対象の権利が不明確です。後々、当事者間で解釈の相違が生じ、紛争に発展するリスクがあります。
(修正後の例文):
The Company may invoke its right to terminate this Agreement pursuant to Section 10.1.
(訳):
会社は、第10.1条に基づき、本契約を解除する権利を行使することができる。
下線部のように修正することで、invokeされる権利が明確となり、紛争リスクを回避できます。
invokeの条件や手続きが不明確な場合、invokeの有効性が争われるリスクがあります。
(修正前の例文):
Either party may invoke its right to terminate of this Agreement.
(訳):
いずれの当事者も、本契約の解除権を行使することができる。
(問題点):
この例文では、invokeの条件と手続きが不明確であり、invokeの有効性が争われるリスクがあります。
(修正後の例文):
Either party may invoke its right to terminate of this Agreement by providing written notice to the other party within 30 days of the occurrence of a material breach.
(訳):
いずれの当事者も、重大な契約違反が発生してから30日以内に、相手方当事者に書面で通知することにより、本契約の解除権を行使することができる。
下線部のように修正することで、invokeの条件と手続きが明確となり、invokeの有効性を確保できます。
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