訳:
権限
意味合い
power and authority(権限)は:
同義語を並べた強調表現です。企業や組織などの法人が、自らの名前で法的な契約を締結し、署名し、かつその契約に基づく義務を適法に履行するための「正当な法人としての能力および授権」を有していることを指します。通常、当事者の法的ステータスを保証し合う「表明保証条項(Representations and Warranties)」において、後から社内手続きの不備などを理由に契約の無効を主張されることを遮断するための核心的な定型表現として登場します。
法的解釈
power and authority(権限)は:
契約の締結行為が、その法人の設立定款や社内規定(取締役会決議など)に照らして「完全に合法かつ有効であること」を相互に担保する法的効果を有します。契約書内で「has all necessary corporate power and authority(必要なすべての法人としての権限を有している)」と表明・保証させることで、万が一相手方の代表者が無権代理であったり、必要な授権手続きを怠っていた場合でも、その不利益を相手方に帰属させ、こちらは表明保証違反に基づく損害賠償や救済措置を直ちに請求できる法的な拠点を形作ります。
実務のヒント
power and authority(権限)は:
実務上、多額の取引や重要なM&A契約を締結する際、相手方のサイン権者が本当にその契約を結ぶ正当な「権限」を持っているかは極めて重大です。もし社内決議を経ていない人物と契約を結んでしまうと、後から「あの契約は社内で承認されていないため無効である」と覆され、莫大な投資が無駄になる重大な不利益を被るリスクがあります。これを防ぐため、表明保証に「power and authority」を明記させるとともに、実務においては必要に応じて「取締役会議事録の写し」や「権限証明書(Certificate of Incumbency)」の提出をクロージング条件として求めておくことが、実務上最大の紛争予防策となります。
類似・関連する用語との違い
- capacity(能力・適格性)との関係:
capacityは、法人が法律上、権利の主体となり行為を行うことができるという「客観的な権利能力・行為能力」そのものを指す表現です。これに対してpower and authorityは、その能力を前提として、本契約という特定の取引を承認・実行するために必要な「具体的な組織内の授権(決議や権能の付与)」に焦点を当てます。法的な関係として、法人としての土台(capacity)と、個別の取引を実行する権能(power and authority)を包括的に保証させるという関係にあります。 - duly authorized(適法に授権されている)との関係:
duly authorizedは、本契約の締結および交付が、法人の定款や法律に定められた必要なすべての「しかるべき社内手続き(corporate actions)によって正当に承認された状態」を指す言葉です。法的な関係として、法人としての必要な権限(power and authority)を社内に有しており、かつそれが今回の契約のために正当に行使・授権された(duly authorized)ことを重ねて保証するという強固な補完関係にあります。 - execute and deliver(締結および交付する)との違い:
execute and deliverは、契約書にサインをして(execute)、それを相手方に引き渡す(deliver)という、契約を成立させるための具体的な物理的・法的行為そのものを指す言葉です。法的な関係として、この締結および交付(execute and deliver)を行うための大前提となる適法な資格として、法人としてのpower and authorityが要求されるという関係にあります。
用法
power and authority(権限)は:
主にRepresentations and Warranties(表明保証条項)で使われます。
- (文脈):契約締結時において、双方が法人として完全に存在し、今回の契約を有効に成立させるためのすべての内部承認手続きを適法に完了していることを相互に確認し合う文脈です。
- (例文での役割):各当事者が本契約を締結し履行するために必要な「法人としてのすべての権限(power and authority)」を有していること、およびその執行が必要な社内手続きによって正当に授権されている(duly authorized)ことを表明保証させ、将来の契約無効の主張を完全に封じる役割を果たしています。
例文 power and authority(権限):
【Representations and Warranties(表明保証条項)より】
Each party represents and warrants to the other party that it has all necessary corporate power and authority to enter into, execute, deliver, and perform its obligations under this Contract, and that the execution and delivery of this Contract have been duly authorized by all necessary corporate actions.
(日本語訳)
各当事者は相手方に対し、本契約を締結、実行、交付し、かつ本契約に基づく義務を履行するために必要なすべての法人としての権限を有していること、ならびに本契約の締結および交付が、必要なすべての法人としての手続きにより適法に授権されていることを表明し、保証する。
例文の注記:
- represents and warrants(表明し、保証する)は: 契約締結の前提となる重要事実が真実であることを約束し、万が一虚偽であった場合は過失の有無にかかわらず即座に厳格な法的責任を負わせるための防御文言です。
- has all necessary corporate power and authority(必要なすべての法人としての権限を有している)は: 本契約の締結・履行が法人の設立定款や内部規則に完全に合致していることを相互に保証させ、後から「社内手続きの不備による無効」を主張されるリスクを未然に封じる役割を持っています。
- perform its obligations(義務を履行する)は: 単に契約書にサインをするだけでなく、将来にわたって契約上の約束を最後まで実行し遂行する能力と権限をも有していることを厳格に指定する役割を持ちます。
- all necessary corporate actions(必要なすべての法人としての手続き)は: 株主総会や取締役会の決議など、法的に契約の有効性を基礎付けるための社内プロセスが完璧に完了していることを保証することで実務の確実性を維持する役割を持ちます。