訳:
① 重大な、重要な
② 資料
③ 材料
意味合い:
① material(重大な、重要な)は:
契約の目的を達成する上で、あるいは当事者の意思決定において、無視できないほど大きな影響や価値を持つ状態を指します。単なる些細な過失や形式的な不備とは一線を画し、契約全体の基盤を揺るがすような決定的な重みを持つ事象を表す際に使用されます。
② material(資料)は:
秘密保持契約(NDA)などにおいて、開示当事者から受領当事者へ提供される、文字情報や図面、データなどの有形・無形の情報媒体そのものを指します。所有権や著作権などの知的財産権が随伴する、保護されるべき有体物またはデータ資産というニュアンスを含みます。
③ material(材料)は:
製造委託契約(OEM)や売買契約において、製品を製造・加工するために必要となる原材料、部品、または構成要素を指します。仕様書(Specifications)に適合すべき物理的な対象物としての物品を直接的に意味します。
法的解釈(Legal Interpretation):
① material(重大な、重要な)は:
法的には、その違反や事実の不備が「契約の核心(Essence of the Contract)」に触れるものであるかを判断する基準となります。英米法においては、軽微な違反(Breach of Warranty)と、契約解除や損害賠償請求を正当化する重大な違反(Material Breach)を峻別する法的境界線として機能し、司法判断における重要な考慮要素となります。
② material(資料)は:
法的には、営業秘密(Trade Secrets)や専有情報(Proprietary Information)を内包する法的な保護対象(Property)としての位置付けを持ちます。これが開示された場合、受領当事者には厳格な善管注意義務(Duty of Care)が課され、契約に基づかない無断の複製や開示、配布は明らかな権利侵害を構成することになります。
③ material(材料)は:
法的には、給付義務の対象物として、契約上の仕様適合義務(Warranty of Conformity)および品質保証義務の客観的な基準となります。不適合があった場合は、契約不適合責任(Liability for Non-conformity)を発生させ、買主による受領拒否や追完請求、減額請求などの法的救済手段の引き金となります。
実務のヒント(Practical Tip):
① material(重大な、重要な)は:
実務において最も紛争の原因となりやすい抽象的な文言の筆頭です。何が「重大」であるかは主観に左右されるため、実務では「30日以上の履行遅延」や「一定金額以上の損害」のように、可能な限り客観的な数値や具体的な事由を後続の条項で補足し、解釈の余地を狭める防衛策が不可欠です。
② material(資料)は:
実務において、何が「提供された専有資料」に該当するのかを明確にするため、資料の目録を作成したり、提供時に「CONFIDENTIAL(秘密)」のスタンプを押したりする実務が一般的です。こうした明確な識別措置を踏むことにより、後日の漏洩発生時に「秘密の資料とは認識していなかった」という言い逃れを完全に封じることができます。
③ material(材料)は:
実務において、サプライチェーンの寸断や品質不良のリスクを回避するための責任の所在を明確にする要となります。材料の調達費用、検査義務、および万が一欠陥があった場合の調達先への求償権を含め、どちらの当事者が自己の費用とリスクで対応すべきかを、別紙(Exhibit)の仕様書と連動させて厳密に構築しておくことが極めて有効です。
類似・関係する用語との違い:
- important(重要な)との違い:
important(重要な)がビジネス一般において主観的・感情的に価値がある、または優先度が高いという意味で広く使われるのに対し、material(重大な、重要な)は「それが欠けていたら結論や法的効力が変わる」という客観的かつ法的な因果関係の重みを伴う場面に限定して使用されるという違いがあります。 - document(文書)との関係:
document(文書)が主にテキストや記述された書面そのものを指すのに対し、material(資料)は文字情報にとどまらず、デザイン、サンプル、独自のノウハウを含む有形物まで広く包括する、より財産的価値に焦点を当てた表現であるという違いがあります。 - component(部品)との関係:
component(部品)がすでに一定の形状に加工され、製品の一部として組み込まれる特定のパーツを指すのに対し、material(材料)は加工前の原材料(Raw Material)から複合的な資材までを広く含み、製造のインプットとなる素材全般を網羅する概念であるという違いがあります。
用法:
① material(重大な、重要な)は:
主にTermination(契約解除条項)やRepresentations and Warranties(表明保証条項)で使用されます。
- (文脈):契約解除条項においては、単なる軽微な義務違反ではなく、契約の継続を不可能にするほどの重大な義務不履行が発生したという文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文では、直ちに契約を解除するための正当な理由(Cause)となる違反を、単なる違反(Breach)から「重大な不遵守(Material Non-compliance)」へと限定・厳格化する役割として機能しています。
② material(資料)は:
主にConfidentiality(秘密保持条項)やIntellectual Property(知的財産権条項)で使用されます。
- (文脈):開示当事者から相手方に渡される一切の機密データや有体物を、第三者への開示や複製から厳重に保護する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文では、複製や配布を一切禁止する対象物として、開示当事者が所有権を持つ「専有資料(Proprietary Material)」を包括的に指定する役割として機能しています。
③ material(材料)は:
主にSupply of Materials(材料の供給条項)やManufacturing(製造委託条項)で使用されます。
- (文脈):製品の製造プロセスにおいて、必要な部資材を調達し、その品質を担保する責任の所在を規定する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文では、製造業者が自己の費用とリスクで調達・検査を行わなければならない対象としての「原材料(Raw Material)」を指定する役割として機能しています。
例文1 material(重大な、重要な):
【Termination(契約解除条項)より】
Either party may terminate this Agreement immediately upon written notice if the other party fails to perform any obligation under this Agreement, provided that such failure constitutes a material non-compliance with the terms hereof that remains uncured for thirty days after the defaulting party receives written notification detailing the specific breach.
(日本語訳)
いずれの当事者も、相手方が本契約に基づく義務を履行しない場合、書面による通知をもって直ちに本契約を解除することができる。ただし、当該不履行が本契約の条項に対する重大な違反であり、かつ、違反当事者が具体的な違反内容を詳述した書面による通知を受領した日から30日以内に当該違反が是正されない場合に限る。
例文1の注記:
- material non-compliance(重大な不遵守):単なる軽微な手続き上の遅延などではなく、契約の目的達成を阻害するほどの重大な違反であることを意味します。
- remains uncured for thirty days(30日以内に当該違反が是正されない):違反が発生しても即座にペナルティを科すのではなく、30日間の是正期間(Cure Period)を与える猶予措置を定めています。
- defaulting party(違反当事者):契約上の義務を怠り、不履行の状態(Default)に陥っている側の当事者を明確に指す言葉です。
- detailing the specific breach(具体的な違反内容を詳述した):抽象的な抗議ではなく、何がどのように違反しているのかを特定して通知することを解除の有効要件としています。
例文2 material(資料):
【Confidentiality(秘密保持条項)より】
The Receiving Party shall maintain all Confidential Information in strict confidence and shall not copy, disclose, or distribute any proprietary material provided by the Disclosing Party to any third party without obtaining the prior written consent of the Disclosing Party, except as expressly permitted under this Agreement.
(日本語訳)
受領当事者は、すべての秘密情報を厳重に秘密として保持し、本契約で明示的に許可されている場合を除き、開示当事者の事前の書面による同意を得ることなく、開示当事者から提供された専有資料を第三者に複製、開示、または配布してはならない。
例文2の注記:
- proprietary material(専有資料):開示当事者が独自の権利を保有し、勝手な使用や処分が許されない価値ある有形・無形の資料を指します。
- prior written consent(事前の書面による同意):口頭やメールでの曖昧な了解を認めず、事前に調印された正式な書面による許可を絶対的な条件として課しています。
- Disclosing Party(開示当事者):秘密情報を相手方に提供する(開示する)側の当事者を指し、受領当事者(Receiving Party)と対比されます。
- except as expressly permitted(明示的に許可されている場合を除き):契約書の中で例外として明確に言葉で書き込まれているルート以外の例外を一切認めない強い制限表現です。
例文3 material(材料):
【Supply of Materials(材料の供給条項)より】
The Manufacturer shall be solely responsible for purchasing and inspecting all raw material required for the production of the Products, ensuring that such components strictly comply with the specifications and quality standards set forth in Exhibit A attached hereto, at its own expense and risk except as otherwise agreed.
(日本語訳)
製造業者は、別途合意がない限り、製品の製造に必要なすべての原材料の購入および検査について単独で責任を負うものとし、かつ、当該部品が本契約に添付された別紙Aに規定された仕様および品質基準に厳密に準拠していることを、自己の費用およびリスクにおいて保証するものとする。
例文3の注記:
- raw material(原材料):製品の製造加工を行う前の、ベースとなる基礎的な部資材やコンポーネントを包括的に指す言葉です。
- strictly comply with the specifications(仕様に厳密に準拠していること):曖昧な品質ではなく、別紙に書かれた技術的な要求数値や条件を100%満たすことを要求しています。
- at its own expense and risk(自己の費用およびリスクにおいて):発生するコストや、途中で材料が破損・滅失した場合の損害を、すべて自社で背負い相手方に転嫁できないことを明確にしています。
- except as otherwise agreed(別途合意がない限り):契約全体の基本原則を示しつつも、当事者間で個別に別の約束を交わした場合にはそれが優先されるという含みを持たせる表現です。