訳:
重大な契約違反
意味合い:
material breach(重大な契約違反)は:
契約で定められた数ある義務のうち、その契約を締結した本来の目的や、当事者が得られるはずであった本質的な利益を根底から奪い去るような致命的な約束違反を指します。軽微な手続きの遅延や、本質に影響しない書類の不備といった些細な違反(Immaterial Breach)とは明確に区別されます。
法的解釈(Legal Interpretation):
material breach(重大な契約違反)は:
法的には、英米法における契約解除(Rescission / Termination)の成立要件として決定的な意味を持ちます。相手方に違反があったとしても、それが軽微なものである場合は損害賠償請求しか認められませんが、違反が「重大な契約違反」に達していると認められた場合に初めて、非違反当事者は自らの義務履行を拒絶し、契約そのものを将来に向かって解除する権利を獲得します。
実務のヒント(Practical Tip):
material breach(重大な契約違反)は:
契約書内で単に「重大な契約違反」とだけ書いていると、実際に違反が起きた際に「これくらいは重大ではない」という水掛け論が必ず発生します。実務上の防衛策として、例えば「支払期日から14日以上の未払い」「ライセンスの無断再許諾」「秘密情報の第三者への漏洩」といった、会社にとって致命傷となる特定の違反行為を「重大な契約違反とみなす」とあらかじめ明記しておくことが極めて重要です。
類似・関係する用語との違い:
- breach(違反)との違い:
breach(違反)が契約上のあらゆる義務(重要性を問わない細かな規定も含む)に対する不履行を広く指すのに対し、material breach(重大な契約違反)は「その違反によって契約を維持する意味がなくなる」という本質的なレベルの不履行のみを厳選して指すという違いがあります。 - default(債務不履行)との関係:
default(債務不履行)が特に期限までに金銭を支払わない、または明確な義務を果たさないという「状態」に焦点が当たるのに対し、material breach(重大な契約違反)は金銭以外の表明保証違反や不作為の誓約違反も含め、その違反の内容が契約の本質を害しているかという「質的な重大さ」に焦点が当たるという違いがあります。 - non-compliance(不遵守)との関係:
non-compliance(不遵守)が法律、規制、または契約の手続き的なルールに従っていないという事実を比較的客観的・ニュートラルに示すのに対し、material breach(重大な契約違反)は当事者間の信頼関係を破壊し、法的な救済手段(解除)を直接作動させるという強力な法的非難のニュアンスを含むという違いがあります。
用法:
material breach(重大な契約違反)は:
主にEvents of Default(債務不履行事由の条項)やTermination(契約解除条項)で使用されます。
- (文脈):当事者が守るべき様々な約束事の中で、万が一これを破った場合には、契約の打ち切りや期限の利益の喪失といった最も重いペナルティを科すと宣告する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文では、表明保証や誓約に対する違反が「重大なレベル」に該当し、かつ催告後30日以内に是正されない場合に、正式な「債務不履行事由(Event of Default)」を構成して法的救済手段へと直結させるための核心的なキーワードとして機能しています。
例文 material breach(重大な契約違反):
【Events of Default(債務不履行事由の条項)より】
An Event of Default shall be deemed to have occurred under this Agreement if either party commits a material breach of any representation, warranty, covenant, or agreement contained herein and fails to cure such breach within thirty days after receiving a written notice demanding that the breach be remedied.
(日本語訳)
いずれかの当事者が、本契約に含まれる表明、保証、誓約または合意に対する重大な契約違反を犯し、かつ、当該違反の是正を求める書面による通知を受領した後30日以内に当該違反を是正しなかった場合、本契約に基づく債務不履行事由が発生したものとみなされるものとする。
例文の注記:
- representation, warranty, covenant, or agreement(表明、保証、誓約または合意):契約書に記載されている過去・現在の事実の保証から、将来の義務、一般的な合意事項にいたるすべての約束ラインを網羅しています。
- fails to cure such breach(当該違反を是正しなかった場合):違反発覚後、ただちにペナルティを科すのではなく、自発的に事態を修復・キャッチアップするチャンス(是正の機会)を与えています。
- demanding that the breach be remedied(是正を求める):違反を指摘するだけでなく、「具体的にどのように元に戻すべきか」を明確に請求・催告するプロセスを踏むことを義務付けています。
- shall be deemed to have occurred(発生したものとみなされる):条件が満たされた場合、もはや弁解の余地なく法律上自動的に「債務不履行」という重いステータスが確定することを意味する厳格な表現です。