訳:
個人データ
意味合い:
personal data(個人データ)は:
英文契約書において、識別された、または識別され得る特定の個人に関するあらゆる情報を指します。通常、データ保護条項(Data Protection)において、契約履行に伴って當事者間で授受される顧客情報や従業員情報などのプライバシー資産を、各国の法令に従って厳格に管理するための対象を画定する定型キーワードとして登場します。
法的解釈:
personal data(個人データ)は:
欧州のGDPR(一般データ保護規則)をはじめとする、世界各国のデータ保護法令(Applicable Law)に基づく厳格な法的遵守義務を当事者に課す対象となります。本条項に定める適切な技術的・組織的措置を怠ってデータの漏洩や違法な処理(processing)が発生した場合、その事象が直接的な契約違反を構成すると同時に、巨額の行政罰則金や相手方への損害賠償責任を発生させる法的な違反根拠を形作ります。
実務のヒント:
personal data(個人データ)は:
実務上、クロスボーダー取引やクラウドサービスの提供において、このデータを扱う際は、単に「秘密情報として扱う」という約束だけでは不十分です。法令が求める水準(技術的な暗号化、組織的なアクセス権の制限、監査体制の維持など)を具体的に契約へ落とし込み、リスクの大きさに応じたセキュリティ対策(technical and organizational measures)を常時維持することを義務付けることが、実務上最大の紛争予防策となります。
類似・関連する用語との違い:
- personal information(個人情報)との違い:
personal informationは、主として米国法や日本の個人情報保護法などで一般的に用いられる、特定の個人を識別できる情報を指す表現です。これに対してpersonal dataは、欧州(GDPR)の法域で好んで使用され、個人の行動履歴や識別子(IPアドレス等)までを含む、より広範で厳密な法的定義を持つことが多いという違いがあります。 - Confidential Information(秘密情報)との関係:
Confidential Informationは、企業の財務データや技術情報など、秘密として管理されている情報全般を包括する言葉です。これに対してpersonal dataは、その中に含まれる「個人のプライバシーに係わる情報」に特化したものです。法的な関係として、秘密情報は当事者間の合意(契約)で保護されますが、個人データは契約に加えて「国家の強制法(データ保護法)」が重層的に適用されるため、より厳格な管理体制が義務付けられるという責任の重さにおける明確な違いがあります。 - Anonymized Data(匿名化データ)との違い:
Anonymized Dataは、特定の個人を識別できないように完全に復元不可能な処理を施した情報を指します。これに対してpersonal dataは、他の情報と照合することで個人を特定できる可能性(識別可能性)が少しでも残っている情報すべてを指します。法的な相違点として、各国の厳しいデータ保護法の規制対象から完全に外れる前者に対し、後者は厳格な安全管理措置と法令遵守が100%義務付けられ続けるという法的な取扱いの違いがあります。
用法:
personal data(個人データ)は:
主にData Protection(データ保護条項)で使用されます。
- (文脈):契約に基づいて取得・処理される個人を識別可能な情報を、各国の法令に合致したセキュリティ水準で安全に管理し、漏洩を防止する文脈です。
- (例文での役割):本契約に基づくデータの処理に関して、適用されるすべてのデータ保護法令を遵守すること、およびリスクに見合った適切なセキュリティ措置を継続的に講じる義務を当事者に強いる役割を果たしています。
例文 personal data(個人データ):
【Data Protection(データ保護条項)より】
Without prejudice to any other obligations under this Agreement, each party shall comply with all applicable data protection laws and regulations regarding the processing of personal data obtained hereunder, and shall implement and maintain appropriate technical and organizational measures to ensure a level of security appropriate to the risks.
(日本語訳)
本契約に基づく他のいかなる義務をも妨げることなく、各当事者は、本契約に基づき取得した個人データの処理に関し、適用されるすべてのデータ保護法令を遵守し、かつ、リスクに見合った適切なセキュリティ水準を確保するために、適切な技術的および組織的措置を講じ、維持するものとする。
例文の注記:
- Without prejudice to(~を妨げることなく)は: 本規定を適用することによって、契約内の他の条項(一般的な秘密保持義務など)に基づく権利や義務が縮小されたり、無効化されたりしないことを保証する、実務上必須の並列規定表現です。
- comply with all applicable data protection laws and regulations(適用されるすべてのデータ保護法令を遵守する)は: 契約の有効期間中に法令が改正された場合であっても、その時々の最新の法的基準に対して寸分の狂いもなく追随することを要求する厳格な表現です。
- processing of(~の処理)は: データの収集、記録、保管、移転、消去など、個人データに対して行われるあらゆる実務上の操作・行為を網羅する広範な定義語です。
- implement and maintain(講じ、維持するものとする)は: 契約締結時に一度だけ対策を行うだけでなく、契約が終了するまでの全期間にわたって、そのセキュリティ水準を落とさずに稼働させ続ける継続的な義務を課すための定型文言です。