訳:
① (契約の)頭書(とうしょ )
② 前提
③ 施設
意味合い:
① premises((契約の)頭書)は:
契約書の冒頭(前文・Recitals)に記載される、契約締結に至った背景、当事者の目的、取引の経緯などの記述部分そのものを意味します。古風な英語で「前述の事項」を指すことに由来します。
② premises(前提)は:
ある合意や条項を成立させるための基礎となる、当事者間の合意事項や特定の事実状態を意味します。「この事実が満たされていることを前提として、初めてこの義務が生じる」という論理的な土台を指します。
③ premises(施設)は:
土地、建物、店舗、工場、敷地など、当事者が所有または管理している具体的な「物理的場所・不動産」を意味します。名詞の複数形(premises)としてこの意味を持ち、実務上の立ち入りや安全管理の文脈で多用されます。
法的解釈:
① premises((契約の)頭書)は:
通常、前文(Recitals)に書かれた背景事情は直接的な法的義務を持ちませんが、この言葉を用いて「頭書に合意する」と本文中に明記(約因として取り込み)することで、背景事情を契約の有効な解釈基準、あるいは法的な合意内容の一部へと格上げする効力を持ちます。
② premises(前提)は:
その前提が崩れた場合に、契約全体の存続を揺るがす「解除事由」や「免責事由」を構成する法的根拠となります。前提の不成就が、即座に重大な契約違反(Material Breach)に直結するという論理関係を明確にします。
③ premises(施設)は:
敷地内における事故、秘密情報の漏洩、セキュリティ違反が発生した際の「損害賠償責任の範囲」や「安全管理義務・不法行為責任」の発生場所を法的に画定する基準となります。
実務のヒント:
① premises((契約の)頭書)は:
実務上、前文の最後(本文とのつなぎ目)にある「NOW, THEREFORE…」の決まり文句の中で用いられ、前文に並べた「WHEREAS…」の内容をすべて契約の公式な前提事実として一括して確定させるために配置されます。
② premises(前提)は:
「特定の許認可の維持」や「特定の財務状態の維持」など、ビジネスの根幹に関わる前提条件を条項化する際、単なる希望的観測ではなく、「これが満たされないなら即時解除する」という強力なペナルティと直結させて規定するのが実務の要諦です。
③ premises(施設)は:
受領当事者の従業員が、開示当事者の工場やオフィスに立ち入る場合のセキュリティ規定や、秘密保持条項において、敷地内での行動ルールや損害発生時の保険の適用関係を整理するために使用されます。
類似・関連する用語との違い:
①(契約の)頭書としてのpremisesと、recitals(前文)との違い:
recitalsは、契約書の構成要素として「〜という背景がある」と記述されたセクション全体を指す言葉です。これに対して、頭書としてのpremisesは、そのrecitalsの中に記載された「個々の背景事実や記述内容そのもの」を指し、本文中でそれを引用・合意対象とするための指示語として機能するという違いがあります。
②前提としてのpremisesと、condition precedent(停止条件、前提条件)との違い:
condition precedentは、特定の義務が発生したり契約が発効したりするために「事前に成就していなければならない客観的なイベント(融資の実行など)」を指します。これに対して、前提としてのpremisesは、契約期間を通じて「常に維持されているべき根本的な合意 the 土台や事実状態(ライセンスの保有など)」を指すという違いがあります。
③施設としてのpremisesと、facility(設備、施設)との違い:
facilityは、工場内の機械、通信インフラ、あるいは特定の目的のために建設された「機能的な設備・建物」を主眼に置く言葉です。これに対して、施設としてのpremisesは、法律上の不動産の概念に近く、境界線で区切られた「土地およびその上に建っている建造物を含む敷地全体」という空間的な範囲を指すという違いがあります。
用法:
① premises((契約の)頭書)は:
主に、Recitals(前文)から本文への移行部で使用されます。
- (文脈):前文に列挙された契約締結の背景や目的を、両当事者が真実であると認め、それを踏めて本文の義務へ進むことを宣言する文脈です。
- (例文での役割):「前述の頭書に相互に合意する」と明記することで、前文の背景記述を契約の正式な合意基礎(約因の一部)として組み込む役割です。
② premises(前提)は:
主に、Termination(解除条項)や契約の根幹をなす基本前提の確認で使用されます。
- (文脈):互いに特定の法的資格や能力を維持していることを大前提としてこの契約が成り立っていることを確認し、それが崩れた場合の処理を定める文脈です。
- (例文での役割):許認可の維持という「根本的な前提」を定義し、それが破られた場合には催告なしに直ちに契約を終わらせることができる解除権の発生要件としての役割です。
③ premises(施設)は:
主に、Confidentiality(秘密保持条項)の立ち入り規定や、現場作業を伴う業務委託条項で使用されます。
- (文脈):相手方の敷地、工場、オフィスに自社のスタッフが作業や打ち合わせのために出入りする際の、安全管理や規則遵守を義務付ける文脈です。
- (例文での役割):立ち入りの対象となる物理的な「敷地・場所」を特定し、その空間内では開示当事者のセキュリティ方針に全面的に従わなければならないという義務の適用範囲を画定する役割です。
例文1 premises((契約の)頭書):
【Recitals(前文)より】
NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual covenants, promises, and agreements contained herein, and for other good and valuable consideration, the receipt and sufficiency of all of which are hereby acknowledged by each party, the parties hereto mutually agree to the foregoing premises and further agree as follows.
(日本語訳)
以上のことを踏まえ、本契約に含まれる相互の約定、約束および合意、ならびにその他の正当かつ価値ある対価(その受領および十分性は各当事者によりここに確認される)を約因として、本契約の当事者は、前述の頭書に相互に合意するとともに、さらに以下の通り合意する。
例文1の注記:
- in consideration of the mutual covenants…(相互の約定…を約因として)は: 契約が法的な拘束力を持つために必要な、お互いの約束という対価関係(約因)がこの契約に確かに存在していることを形式的に宣言する定型表現です。
- receipt and sufficiency of all of which are hereby acknowledged(その受領および十分性はここに確認される)は: 契約成立後に、一方の当事者が「十分な対価をもらっていないから契約は無効だ」と主張して契約をひっくり返すのを防ぐための法的な確認文言です。
- agree to the foregoing premises(前述の頭書に相互に合意する)は: 本文が始まる前に書かれた「WHEREAS…(〜の背景があるため)」などの背景事情や経緯を、単なる説明書きではなく、双方が合意した正式な契約の基礎事実として確定させる役割を持っています。
- further agree as follows(さらに以下の通り合意する)は: 前文の確認という準備段階を終え、ここから先(本文)に並ぶ具体的な契約条項が、当事者を法的に縛る真の義務であることを示すための境界線の役割を果たしています。
例文2 premises(前提):
【Termination(解除条項)より】
The parties acknowledge and agree that this Agreement is entered into upon the express premises that both parties shall at all times maintain their respective regulatory licenses, and any breach of such fundamental premises shall entitle the non-breaching party to terminate this Agreement immediately without any further liability.
(日本語訳)
両当事者は、本契約が、両当事者が常にそれぞれの規制上の許認可を維持することを明示的な前提として締結されるものであることを認め、これに合意する。当該の根本的な前提に違反があった場合、非違反当事者は、何らの追加的な責任を負うことなく、直ちに本契約を解除する権利を有するものとする。
例文2の注記:
- entered into upon the express premises(明示的な前提として締結される)は: 許認可の維持が、このビジネスを共同で行うための「大前提・大原則」であり、それが欠けた状態での契約存続はあり得ないという強い論理的関係を敷く表現です。
- fundamental premises(根本的な前提)は: 単なる軽微な義務違反ではなく、契約の目的を完全に根底から覆すような重大な前提事実の不成立であることを法的に定義しています。
- terminate this Agreement immediately without any further liability(何らの追加的な責任を負うことなく、直ちに本契約を解除する)は: 前提が崩れた以上、事前の通知や是正期間の猶予(30日前の催告など)を与えることなく、その瞬間に契約を終わらせて、それ以上の義務から解放される権利を与える機能を持っています。
- parties acknowledge and agree(両当事者は認め、これに合意する)は: 許認可の維持という前提条件の重要性について、後から「そんなに大事なことだとは知らなかった」という言い訳を封じるための、双方の確定的な認識を示す文言です。
例文3 premises(施設):
【Confidentiality(秘密保持条項)より】
When receiving party’s personnel enter the disclosing party’s premises for any purpose related to this Agreement, such personnel shall strictly comply with all security, safety, and health regulations or policies established by the disclosing party regarding the operation and maintenance of such facilities.
(日本語訳)
受領当事者の担当者が、本契約に関連するいかなる目的であれ開示当事者の施設に立ち入る場合、当該担当者は、当該施設の運営および保守に関して開示当事者が定めたすべてのセキュリティ、安全、および衛生に関する規則または方針を厳守しなければならない。
例文3の注記:
- enter the disclosing party’s premises(開示当事者の施設に立ち入る)は: 相手方の本社オフィス、研究所、工場、倉庫などの物理的な管理区域に足を踏み入れる具体的な行為を指します。
- strictly comply with all security, safety, and health regulations(すべてのセキュリティ、安全、および衛生に関する規則を厳守しなければならない)は: 機密エリアへの立ち入りや社内ネットワークへの接続に際し、情報漏洩や労働災害を防ぐための社内ルールを100%守ることを強制する義務を設定しています。
- regarding the operation and maintenance of such facilities(当該施設の運営および保守に関して)は: 規則が適用される対象が、その場所の物理的な設備や空間の維持管理に関わるものであることを示し、義務の範囲をその敷地内の事象に限定する役割を持っています。
- personnel(担当者、人員)は: 役員や正社員だけでなく、実際の業務に携わる派遣社員、下請業者の作業員、コンサルタントなど、自社の管理下で動くすべての人員を含めることで、義務の主体を広くカバーしています。