訳:
同じ順位で
意味合い:
pari passu(同じ順位で)は:
元々はラテン語に由来する法的な格言(「等しい歩調で」の意)であり、複数の債権や義務が、優劣の差がなく「全く同一の権利順位、同じ比率、かつ同時に」扱われるべき状態を指します。英文契約においては、主に国際金融取引やローン契約、社債発行の文脈で使用され、債務者が他の債権者に対して、対象となる今回の債務を、他の無担保債務よりも低い順位(劣後する順位)に置かないことを確約するために用いられる重要な専門表現です。
法的解釈:
pari passu(同じ順位で)は:
債務の弁済順位における平等の原則(同順位性)を法的に拘束する効力を持ちます。この概念が契約に組み込まれることで、仮に債務者が破産や法的倒産手続き(Insolvency)に陥った場合であっても、対象債務の債権者は、他の一般の無担保債権者(unsecured creditors)と全く等しい割合(プロラタ、按分比例)で資産の分配を受ける法的な権利が保障されます。特定の一方の債権者を不当に有利に扱い、自らの債権の回収順位を勝手に引き下げられることを法的に阻止する遮断効果を有します。
実務のヒント:
pari passu(同じ順位で)は:
実務上、債務の地位条項(Status of Obligations Clause)や同順位差入条項(Pari Passu Clause)において、貸主(Covenantee)が自らの債権回収リスクを最小限に抑えるための最優先の防衛策として機能します。実務では、単に「同順位とする」と定めるだけでなく、in right of payment(支払順位において)という限定を付し、さらに present and future(現在および将来の)という時間的な文言をセットで配置することで、現在発生している他社からの借入金のみならず、将来的に債務者が他社から新たに調達するあらゆる無担保債務に対しても、自らの債権の支払優先順位が永久に劣後しない法的ポジションを強固にロックします。
類似・関連する用語との違い:
- pro rata(按分比例で)との違い:
pro rataは、具体的な財産の分配や費用の負担などを「各自の持分や金額の割合に応じて比例計算する」という数式的な計算方法に焦点がある言葉です。pari passuは、割合だけでなく「権利の順位や格付けそのものが法的に同一である」という法的な格位・順位の平等を指すため、pari passuの順位に基づいて現実に資産を分ける際に pro rata(按分比例)の計算が適用されるという補完的な関係にあります。 - subordinated(劣後した)との違い:
subordinatedは、他の特定の債権者(シニア債権者など)への支払いが全額完了するまでは、自らへの弁済を一切受けることができないという「低い順位に甘んじる」状態を指す言葉です。すべての無担保義務と「全く並びの同じ順位(同等)」を要求する pari passu とは、権利の優先順位の設計においてベクトルの強さが180度真逆であるという違いがあります。 - senior(優先的な)との違い:
seniorは、他の一般債権者よりも先に、最優先で弁済を受けることができる「上位の権利順位」を指す表現です。pari passuが「他の奴らに後れを取らない(同等)」という横並びの防衛線を張る表現であるのに対し、seniorは他者よりも一歩前に出る権利を主張するものであるという違いがあります。
用法:
pari passu(同じ順位で)は:
主にStatus of Obligations(債務の地位条項)で使用されます。
- (文脈): 国際金融や金銭消費貸借契約において、債務者が負担する本件の債務が、他のすべての既存または将来の債務(ただし担保のない一般債務)と比較して、法的な支払順位で不当に低い扱いを受けないことを厳格に確定する文脈で使用されます。
- (例文での役割): 支払順位の平等を意味するラテン語表現「pari passu」を修飾語として指定し、本契約に基づく義務が「少なくとも同じ順位での支払順位を有すること(rank at least pari passu in right of payment)」を主語に義務付け、他者への優先弁済による自らの不利益を法的に排除する役割を果たしています。
例文 pari passu(同じ順位で):
【Status of Obligations(債務の地位条項)より】
The borrower hereby covenants and agrees that its obligations under this agreement shall at all times rank at least pari passu in right of payment with all of its other present and future unsecured and unsubordinated obligations, except for such obligations as may be preferred by mandatory provisions of applicable law.
(日本語訳)
借主は、本契約に基づく自らの義務が、適用法上の強行規定により優先される義務を除き、常に、その現在および将来の他のすべての無担保かつ劣後しない義務と少なくとも同じ順位での支払順位を有することを、ここに確約し合意する。
例文の注記:
- covenants and agrees(確約し合意する)は: 単なる口約束や方針の提示ではなく、契約期間を通じてその状態を維持することを債務者が法的に重くコミットし、違反した場合には即座に期限の利益喪失(Event of Default)に直結することを示す強い義務表現です。
- shall at all times rank at least(常に少なくとも〜の順位を有するものとし)は: 契約締結の瞬間だけでなく、完済に至るまでの全期間(at all times)を通じて、自らの債権の格付けが一定のラインを下回る(劣後する)ことを一切許容しないという、貸主側の強力な継続的防衛線を表しています。
- unsecured and unsubordinated obligations(無担保かつ劣後しない義務)は: 比較対象となる他の債務の範囲を明確にし、抵当権などの物権的担保が付いている「担保付債務(secured obligations)」は法的に優先されて当然であるためこれを除外した上で、同じスタートラインにあるべき一般債務をすべて網羅する表現です。
- except for such obligations as may be preferred by mandatory provisions of applicable law(適用法上の強行規定により優先される義務を除き)は: 国の税金や労働者の賃金債権など、法律(強行規定)によって強制的に最優先されることが決まっている例外的な公的債務をあらかじめ除外しておくことで、契約文言が法律違反により無効化することを防ぐ実務上の不可欠な調整文言です。