訳:
人身傷害
意味合い:
personal injury(人身傷害)は:
英文契約書において、不法行為や事故、または業務の履行を原因として生じた、生身の人間(自然人)に対する「身体の負傷、疾病、疾患、またはそれらに起因する死亡」などの肉体的な損害全般を指します。通常、製造委託契約(OEM)、建設工事契約、または各種業務委託契約(Services Agreement)の補償条項(Indemnification)において、現場や製品事故で人命に関わる損害が発生した際の責任の割り振りを定める定型キーワードとして登場します。
法的解釈:
personal injury(人身傷害)は:
英米法(Tort:不法行為法)において、物的な損害(Property Damage)とは区別され、慰謝料や将来の得べかりし利益の喪失(逸失利益)など、賠償額が著しく高額化しやすい法的な性質を有します。契約書においてこの personal injuryに関する補償(Indemnification)を合意しておくことは、第三者(エンドユーザーや作業員など)から訴訟を起こされた際、当事者間で「最終的にどちらがその巨額の賠償金や弁護士費用を全額負担するか」という法的な最終責任の帰属を確定させる効果を持ちます。
実務のヒント:
personal injury(人身傷害)は:
実務上、業務を受託するベンダー側としては、この人身傷害から生じる賠償責任について、自社の「直接の過失」に起因するものだけに限定するドラフトを試みます。一方で、発注者(オーナー等)側としては、受託者の現場管理の不備による事故から自社を守るため、原因の如何を問わず受託者側の責任で全額を補償させ、かつこの人身傷害については責任制限条項(Limitation of Liability)の「上限(キャップ)」の適用対象から完全に除外(例外化)しておくことが、実務上最大の紛争予防策となります。
類似・関連する用語との違い:
- bodily injury(身体的傷害)との違い:
bodily injuryは、打撲や骨折、外傷など、純粋に「肉体そのものに加えられた直接的な負傷や疾病」に焦点を当てた言葉です。これに対してpersonal injuryは、そうした直接的な肉体への外傷(bodily injury)を包含しつつ、それに付随して発生する精神的苦痛(mental anguish)や名誉毀損など、法律上の「個人(人格)が被った損害全般」を広く包括して捕らえる言葉です。法的な関係として、前者の肉体的な負傷をベースに、より広範な損害項目を網羅するために契約実務では後者のpersonal injuryが好んで使用されるという違いがあります。 - property damage(物損損害、財産損壊)との違い:
property damageは、建物、機材、製品などの「目に見える物理的なモノ(有体物)」が破壊されたり損傷を受けたりした経済的損失を指す言葉です。これに対してpersonal injuryは、モノではなく「生身の人間」の身体や生命が傷つけられた損害を指します。法的な相違点として、時価や修理費によって損害額の計算が比較的容易な前者に対し、後者は人命に関わるため賠償額が無限に拡大するリスクがあり、保険(対人・対物)の手配においても実務上明確に区別されるという違いがあります。 - Third Party Claim(第三者請求)との関係:
Third Party Claimは、契約の当事者以外の外の人間から起こされるすべての訴えや損害賠償請求を指す包括的な言葉です。これに対してpersonal injuryは、その第三者請求が発生する原因となった「人身事故の被害」そのものを指す言葉です。法的な関係として、現場で作業員などがpersonal injury(人身傷害)を被った結果として、発注者に対してサードパーティクレーム(Third Party Claim)が提起され、それを大元の受託者に補償(Indemnify)させるという手続き・因果の関係にあります。
用法:
personal injury(人身傷害)は:
主に、Indemnification(補償条項)などで使われます。
- (文脈):業務の履行に伴って第三者の身体や生命に損害(事故)が発生した際、その結果として生じるすべての法的責任や金銭的負担を受託者側に一元的に引き受けさせる文脈です。
- (例文での役割):人身傷害の定義を「死亡」も含めて厳格に確定させ、当該傷害から生じるあらゆる請求や損害から発注者を全面的に補償・免責(hold harmless)する責任を受託者に課す役割を果たしています。
例文 personal injury(人身傷害):
【Indemnification(補償条項)より】
“Personal injury” shall mean any bodily injury, sickness, disease, or death sustained by any person arising out of or in connection with the performance of the Services under this Agreement. The Contractor shall indemnify and hold the Owner harmless from any liability, claims, or damages resulting from such personal injury.
(日本語訳)
「人身傷害」とは、本契約に基づく業務の遂行に起因または関連して生じた、何らかの人物の身体的傷害、疾病、疾患、または死亡を意味するものとする。受託業者は、当該人身傷害に起因するあらゆる責任、請求、または損害について、発注者を補償し、かつ免責するものとする。
例文の注記:
- shall mean(~を意味するものとする)は: 定義条項や主要規定において、対象となる用語の範囲をそれ以外の解釈を一切認めない形で完全に固定し、法的な解釈のブレを無くすための強力な表現です。
- arising out of or in connection with(~に起因または関連して)は: 業務の履行と事故との間に、直接的な原因(因果関係)がある場合はもちろん、業務に関連して副次的に発生した間接的な事象までをも広く網羅して責任を追及するための定型文言です。
- indemnify and hold harmless(補償し、かつ免責する)は: 相手方が第三者から訴えられたり、損害を被ったりした際に、その弁護士費用や賠償金の支払いを身代わりに引き受け、相手方に1円の経済的損失も与えないことを約束する、実務上最も強力な防御表現です。
- resulting from(~に起因する/~から生じる)は: 発生した請求や損害の根本的なトリガーが、指定された人身事故(personal injury)という事実にあることを法的に結びつけ、補償の対象を確定させる役割を持ちます。