訳 :
差止め命令、差止め
意味合い :
裁判所が当事者に対して、特定の行為を「行うこと(作為)」または「行わないこと(不作為)」を命じる救済手段です。金銭賠償だけでは取り返しのつかない被害(秘密情報の流出など)を防ぐための、緊急的・強力な法的措置です。
法的解釈(Legal Interpretation) :
英米法上、injunctionは「衡平法(Equity)」上の救済手段とされます。通常、裁判所は「金銭賠償で十分(Adequate remedy at law)」な場合にはこれを認めません。そのため契約書には、「金銭賠償では不十分であることを合意し、injunctionを求める権利を認める」という文言を入れることで、裁判所に発付を促す法的な工夫がなされます。
実務のヒント(Practical Tip) :
「Without the necessity of posting a bond(保証金の供託を必要とせず)」という文言が実務上重要です。本来、差止めを申し立てる際は相手方の損害に備えた多額の保証金が必要ですが、これを不要と合意しておくことで、機動的に差止めを申し立てることが可能になります。
類似・関係する用語との違い :
- damages(損害賠償)との違い:
damagesが「起きてしまった被害への金銭的補償」であるのに対し、injunctionは「被害が発生・拡大するのを直接止める」ための手段です。 - remedy(救済手段)との関係:
injunctionは、契約違反に対するremedyの代表的な種類の一つです。 - cease and desist(中止・通告)との違い:
cease and desistは当事者間で行う「警告(やめろ)」ですが、injunctionは国家権力(裁判所)による命令であり、違反すれば法廷侮辱罪等に問われる強力なものです。
用法 :
主にRemedies(救済手段条項)や秘密保持条項で使用されます。義務違反に対して、金銭賠償以外の直接的な阻止手段を確保する文脈です。
例文(injunction)Remedies(救済手段条項)から :
In the event of a breach of confidentiality, the parties agree that monetary damages may be inadequate. Therefore, the non-breaching party shall be entitled to seek a temporary or permanent injunction from a court of competent jurisdiction to prevent further unauthorized disclosure, without the necessity of posting a bond.
(日本語訳)
秘密保持義務の違反が生じた場合、両当事者は、金銭的損害賠償では不十分な可能性があることに合意する。したがって、非違反当事者は、さらなる不正開示を差し止めるため、保証金の供託を必要とすることなく、管轄裁判所に対して一時的または恒久的な差止め命令(差止め)を申し立てる権利を有する。
例文の注記 :
- monetary damages may be inadequate(金銭的賠償は不十分な可能性がある):差止め命令を裁判所に認めてもらうための、英米法上の必須の「おまじない」的な文言です。
- temporary or permanent(一時的または恒久的な):裁判が終わるまでの仮の差止め(仮処分)と、最終判決としての差止めの両方を指します。
- without the necessity of posting a bond(保証金の供託を必要とせず):申立人の金銭的負担を軽減し、迅速な法的手続きを可能にするための実務上の重要規定です。