訳:
逸失収益、売上損失
意味合い:
lost revenues(逸失収益)は:
契約違反などの債務不履行や不法行為がなければ将来入ってくるはずだった「総収入・売上(トップライン)」の減少を指します。英文契約の損害賠償や補償の条項においては、単に「利益(profits)」を削られるだけでなく、事業全体の規模やキャッシュフローに直結する「売上(revenues)」そのものが減少したという文脈で主張される損害です。
法的解釈(Legal Interpretation):
lost revenues(逸失収益)は:
法的には、経費を差し引く前の「総額」の損失をベースに計算されるため、損害賠償や補償の請求規模が極めて巨額になりやすい性質があります。英米法上、相手方の特別な事情を予見できた場合に認められうる「結果的損害(consequential damages)」の一種ともなり得るため、契約書上では「利益(profits)」とは明確に区別し、原則として排除・免責されるべき不確実な損害(speculative damages)の代表格として解釈されます。
実務のヒント(Practical Tip):
lost revenues(逸失収益)は:
第三者からのクレームに対応する補償条項(Indemnification)を設計する際、基本的には「逸失収益は補償対象外とする」と定めて自社のリスクを抑えるのが鉄則です。ただし、相手方との交渉において、「willful misconduct(故意の不正行為)」という最悪のケースに起因する場合に限り、例外的にこの逸失収益の補償を認めさせる(または認めさせられる)という限定的な譲歩・リスク管理の手法が、実務上の高度な落としどころとしてよく使われます。
類似・関係する用語との違い:
- lost profits との違い:
lost profits(逸失利益)は売上から各種経費やコストを差し引いた後の「純利益(Net Profit)」の損失を指すのに対し、lost revenues(逸失収益)は経費を控除する前の段階の「総売上(Gross Revenue)」そのものの減少を指すという違いがあります。 - speculative damages との関係:
speculative damages(推測的損害)は客観的な証拠がなく不確実な仮定に基づく損害全般を指す包括的な概念であるのに対し、lost revenues はその推測的・不確実な損害として最も槍玉に挙げられ、契約書で明示的に除外される主要な損害項目であるという関係にあります。 - gross negligence との関係:
gross negligence(重大な過失)は補償義務を発動させる引き金(トリガー)として設定されることが多いのに対し、lost revenues はその引き金が引かれたとしても、原則として補償する範囲から厳格に切り離される(除外される)対象であるという関係にあります。
用法:
lost revenues(逸失収益)は:
主にIndemnification(補償条項)で使用されます。
- (文脈): 第三者からの請求に対して当事者が負うべき補償の範囲を限定する際、金額が過大かつ不確実になりがちな「相手方の将来の売上減少」を補償対象から厳格に排除しつつ、故意の場合のみ責任を認めるという例外関係を整理する文脈で使用されます。
- (例文での役割): 例文では、補償対象から「厳密に除外(strictly exclude)」されるべき具体的な損害の筆頭例として明示されつつ、末尾のunless節によって「故意の不正行為(willful misconduct)」があった場合の最終的な責任追及の拠り所として機能しています。
例文:
【Indemnification(補償条項)より】
Each party shall indemnify and hold harmless the other party from any third-party claims arising from its gross negligence, provided that such indemnification shall strictly exclude any indirect or speculative damages, including but not limited to lost revenues, unless such lost revenues directly result from the indemnifying party’s willful misconduct under this Agreement.
(日本語訳)
各当事者は、自らの重大な過失に起因する第三者からの請求について、相手方当事者を補償し、免責するものとする。ただし、かかる補償は、逸失収益(逸失収益を含むがこれに限定されない)間接的または推測的な損害を厳密に除外するものとする。ただし、かかる逸失収益が、本契約に基づく補償当事者の故意の不正行為に直接起因する場合はこの限りではない。
例文の注記:
- indemnify and hold harmless(補償し、免責するものとする): 相手方に生じた損害や第三者からの請求による損失を補填し、かつ法的責任から守るという、補償条項における最も標準的で強力な法的義務を表すフレーズです。
- gross negligence(重大な過失): わずかな不注意(通常の過失)を超えた、著しい注意義務の違反を指し、本例文では補償義務を発生させるための主たる要件として機能しています。
- strictly exclude(厳密に除外するものとする): 例外や曖昧な解釈を一切許さずに、特定の損害(間接損害や逸失収益など)を賠償・補償の範囲外へと法的にシャットアウトする強固な文言です。
- willful misconduct(故意の不正行為): 単なる過失ではなく、結果を承知の上であえて行う悪質な違法・違反行為を指し、責任制限や免責を無効化して本来除外されるはずの逸失収益すらも引きずり出す、実務上極めて重い法的キーワードです。