訳:
① ~してはならない
② ~することができない
意味合い:
① may not(~してはならない)は: 当事者に対して、特定の行為を行うことを一律かつ全面的に差し止める「禁止行為」を創設します。「~する権利(may)が1ミリも存在しない」という状態を宣言することで、相手方に対して絶対的な不作為義務(やってはいけない義務)を課す役割を果たします。
② may not(~することができない)は: 契約上、当事者が特定の法的処分(譲渡や転売など)を有効に行うための「資格や権能(パワー)」をそもそも有していないことを規定し、その行為を無理やり強行したとしても、契約上・法律上は何の効力も発生しないという不適格の状態を意味します。
法的解釈(Legal Interpretation):
① may not(~してはならない)は:
法的には、この文言に違反して行動した瞬間に、即座に「契約違反(Breach of Contract)」が成立するという重大な法的効果を持ちます。秘密保持条項などで本表現が使用されている場合、漏洩の事実自体が言い訳無用の違法行為として扱われます。
② may not(~することができない)は:
法的には、当事者が行った契約上の地位の処分行為の「法的効力を根底から否定(無効化)」する効果を持ちます。相手方の同意なく勝手に契約を第三者に譲渡しようとしても、この表現の壁によって、その譲渡行為自体がハナから「法律上存在しないもの(null and void)」として門前払いにされます。
実務のヒント(Practical Tip):
① may not(~してはならない)は:
秘密保持条項(Confidentiality)における開示制限や目的外使用の禁止機能において、企業のコア情報やノウハウを守る最重要の防壁となります。実務上は、役員や従業員、弁護士などの専門アドバイザーといった「業務上どうしても知る必要がある者(Need-to-Knowの範囲)」への例外的な開示ルートを但し書きで確保しておかないと、通常のビジネス運営すら違反になってしまう罠があるため注意が必要です。
② may not(~することができない)は:
譲渡条項(Assignment)における譲渡制限機能において、見ず知らずの第三者や競合他社に契約上の立場を乗っ取られるリスクを防ぐために機能します。勝手な譲渡の試みを「null and void(無効)」という強烈な言葉で叩き潰しておくことで、実務上のM&Aや資本の急変に伴う契約の流出(裏切り)を完全に封殺することができます。
類似・関係する用語との違い:
- shall not との違い:
shall not が「~してはならない」という明確な義務違反としての禁止(作為の禁止)に焦点を当てるのに対し、may not(特にNeither主語を伴うもの)は「そうした行為を行う権利がハナから当事者に一切与えられていない」という権限の完全な否定を指すという違いがあります。 - cannot との違い:
cannot が「(技術的、物理的な事情等により)実行不可能である」というニュアニュアンスを含みやすいのに対し、may not は「契約のルール上、それを実行する権能も正当性も完全に遮断されている」という合意上の縛りを明確に表現する違いがあります。 - prohibited との関係:
It is prohibited to~(~することは禁止される)という表現が、違反した場合に罰則や制約が伴う「禁止のルールそのもの」を客観的に宣言するのに対し、may not は「当事者は~する権利を持たない」という主体の裁量をロックする形で禁止を組み込む違いがあります。
用法:
① may not(~してはならない)は:
主にConfidentiality(秘密保持条項)で使用されます。
- (文脈):開示された秘密情報を相手方の承諾なく勝手に外部に漏洩・開示することを厳格に禁止する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文1では、Neither(いずれの当事者も~ない)と組み合わさることで、情報を受領した当事者による第三者への無断開示を徹底的にロックする絶対的な防壁として機能しています。
② may not(~することができない)は:
主にAssignment(譲渡条項)で使用されます。
- (文脈):契約によって結ばれた信頼関係を維持するため、相手方に無断で契約上の権利や義務を第三者へ譲り渡す行為を完全にロックする文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文2では、相手方の承諾を得ずに勝手に行う譲渡行為について、その手続きを進める法的資格自体をはく奪し、行為を無効化するコアのキーワードとして機能しています。
例文1 may not(~してはならない):
【Confidentiality(秘密保持条項)より】
Neither party may disclose any Confidential Information received from the other party to any third party without the prior written consent of the disclosing party, except to those of its directors, officers, employees, and professional advisors who strictly need to know such information for the performance of this Agreement.
(日本語訳)
いずれの当事者も、相手方から受領した機密情報を、開示当事者の事前の書面による同意なしに、いかなる第三者にも開示してはならない。ただし、本契約の履行のために当該情報を知る必要のある自己の取締役、役員、従業員、および専門アドバイザーに対しては、この限りではない。
例文1の注記:
- without the prior written consent(事前の書面による同意なしに): 事後承諾や口頭での曖昧な許可を一切認めず、アクションを起こす前に必ず「紙の証拠」を取得することを絶対的な足かせにしています。
- except to those of its directors, officers, employees(~を例外として): 禁止の網を網羅的にかけつつも、会社の実際の組織を動かす内部の人間に対する必要最低限の風穴(例外ルート)を現実的に確保しています。
- strictly need to know(知る必要のある): 例外ルートであっても全員に開示してよいわけではなく、本契約の仕事に直接関わる担当者のみに情報の閲覧を制限するという実務上の縛りです。
- performance of this Agreement(本契約の履行): 情報を開示してよい目的を「仕事を進めるため」だけに限定し、ライバル社への横流しやプライベートでの悪用を法的に封じるための用途制限です。
例文2 may not(~することができない):
【Assignment(譲渡条項)より】
Neither party may not assign, transfer, or otherwise dispose of this Agreement or any of its rights or obligations hereunder to any third party, whether by operation of law or otherwise, without the prior written consent of the other party, and any attempted assignment in violation hereof shall be null and void.
(日本語訳) いずれの当事者も、相手方の事前の書面による同意なしに、法律の規定によるか否かを問わず、本契約、または本契約に基づく自己の権利若しくは義務を、第三者に譲渡、移転、若しくはその他の方法で処分することができず、これに違反する譲渡的試みは無効とする。
例文2の注記:
- assign, transfer, or otherwise dispose of(譲渡、移転、若しくはその他の方法で処分する): 売却だけでなく、担保設定や他社への名義変更など、契約上のポジションを動かすあらゆる形態の処分行為を網羅的にロックしています。
- whether by operation of law or otherwise(法律の規定によるか否かを問わず): 企業のM&A(合併)や会社の分割、あるいは相続など、法律の効果によって自動的に権利が移転してしまうルートまで先回りして禁止の網で捕らえています。
- attempted assignment(譲渡的試み): 実際に手続きが完了してしまったケースだけでなく、勝手にサインをして譲渡を進めようとした「途中のアクション」の段階からすべてアウトにするという予防的な文言です。
- null and void(無効とする): 違反行為に対して与える最大のペナルティであり、相手方の行った手続きの法的効力を最初から「ゼロ(無効)」として扱い、会社を守るための最強の盾です。