訳:
① ~する権利がある
② ~することができる
意味合い:
① may(~する権利がある)は:
英文契約において、当事者に対して特定の行為を自らの裁量で行う「排他的な権限」や「法律上の裁量権」を与える役割を持ちます。道徳的な許可ではなく、その行為を自由に行うかどうかの選択権が自らに委ねられているという法的権利の付与を意味します。
② may(~することができる)は:
条件を満たした状況において、不利益を被ることなくそのアクションを起こすことが物理的・実務的に可能である状態を広く指し示します。当事者が法的に許された手続きをスムーズに実行できる環境が担保されていることを意味します。
法的解釈(Legal Interpretation):
① may(~する権利がある)は:
法的には、相手方の義務の裏返しとして、自己の裁量で法的関係を一方的に変動・消滅させる形成権などを創設します。例えば、相手方の重大な違反に対して解除権を行使するかどうかは完全にこちらの自由であり、裁判所もこの権利行使を法的に正当なものとして全面的に保護します。
② may(~することができる)は:
法的には、契約で認められた特定の行為(検査や監査など)を適法に行う地位が担保されていることを意味し、当該行為を行うことが相手方に対する「不法侵入」や「機密侵害」といった違法行為(契約違反)を構成しないという免責的・適法化の法的効果をもたらします。
実務のヒント(Practical Tip):
① may(~する権利がある)は:
知的財産権条項(Intellectual Property Clause)におけるライセンス付与、あるいは有効期間および契約解除条項(Term and Termination)において、相手方の違反に対する強力なカウンター(武器)として機能します。ただし、実務上は単に「解除できる」という権利の付与だけでなく、「30日内の是正催告(remedy period)」といった厳格な手続き要件が前提として組み込まれるため、ステップを踏むタイムラインの管理が不可欠です。
② may(~することができる)は:
検査・監査条項(Inspection and Audit)において、現場の実態を正確に把握するための鍵となります。ただし、相手方からは「通常の営業を妨げない(not unreasonably interfere)」という防衛の制約を掛けられることが多いため、権利の範囲と実務上の制約のバランスを事前に精査しておく必要があります。
類似・関係する用語との違い:
- shall との違い:
shall が「~しなければならない」という当事者への絶対的な義務(強制)を課す表現であるのに対し、may は「~してもよい、~する権利がある」という当事者の自由な選択・裁量(オプション)を付与する表現であるという決定的な違いがあります。 - can との違い:
can が日常会話的に「物理的能力として可能である」という主観的な能力に焦点が当たりやすいのに対し、may は「契約のルールまたは法的な許可によって、その行為を行うことが正当に認められている」という客観的な権限の有無を指すという違いがあります。 - entitled to との関係:
entitled to(~する資格がある)が「~の利益や金銭を法律上・契約上受け取る資格が確定している」という受給権に近い文脈で多用されるのに対し、may は「そのアクションを自らの手で実行する法律上の自由・選択権がある」という能動的な行為の権限を指す傾向が強いという違いがあります。
用法:
① may(~する権利がある)は:
主にTerm and Termination(有効期間および契約解除条項)で使用されます。
- (文脈):相手方に重大な契約違反が発生した際、被害を被った当事者が契約関係を断ち切る手続きを規定する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文1では、指定された是正期間内に違反が修復されなかったという厳格な事実を条件(トリガー)として、当事者が一方的に契約を終わらせる強力な解除権を取得するための核心的なキーワードとして機能しています。
② may(~することができる)は:
主にInspection and Audit(検査・監査条項)で使用されます。
- (文脈):相手方の業務運営や記録が適切かを確かめるため、相手方の敷地に立ち入ってチェックを行う手続きを規定する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文2では、相手方の敷地や書類をチェックする行為が契約違反やプライバシー侵害を構成せず、適法かつスムーズに実行できる環境を保障するためのキーワードとして機能しています。
例文1 may(~する権利がある):
【Term and Termination(有効期間および契約解除条項)より】
Either party may terminate this Agreement with immediate effect upon written notice to the other party if the other party breaches any material provision of this Agreement and fails to remedy such breach within thirty days after receipt of written notice requesting that the breach be remedied.
(日本語訳)
いずれの当事者も、相手方が本契約の重大な規定に違反し、当該違反を修復することを求める書面による通知を受領した後30日以内に当該違反を修復しない場合、相手方に対する書面による通知をもって、直ちに本契約を解除する権利を有する。
例文1の注記:
- with immediate effect(直ちに、即座に): 是正期間(30日)が経過した後は、何らの猶予(タイムラグ)を与えることなく、通知の一突きで即座に契約関係を終わらせるという強力な法的効果を発生させます。
- material provision(重大な規定): 軽微な違反での濫用的な解除を防ぐため、契約の根幹に関わる重要な約束事の破綻のみを解除の正当な理由として限定しています。
- fails to remedy(当該違反を修復しない場合): 違反者に対して「過ちを正す最後のチャンス(猶予期間)」を与え、それでも自発的な修復を怠ったという事実を確定させる実務的なステップです。
- upon written notice(書面による通知をもって): 後日の「言う・言わない」の論争を完全に封じるため、解除という重大な意思表示は必ず形に残るドキュメントで行うことを義務付けています。
例文2 may(~することができる):
【Inspection and Audit(検査・監査条項)より】
Either party may inspect the premises, records, and relevant documentation of the other party during regular business hours upon giving reasonable prior written notice, provided that such inspection shall be conducted in a manner that does not unreasonably interfere with the normal business operations of the observed party.
(日本語訳)
いずれの当事者も、合理的な事前書面通知を行うことにより、通常の営業時間内に相手方の事業所、記録、および関連文書を検査することができる。ただし、当該検査は、検査対象者の通常の事業運営を不当に妨げない方法で行われなければならない。
例文2の注記:
- upon giving reasonable prior written notice(合理的な事前書面通知を行うことにより): 抜き打ちでの検査を禁止し、相手方にも受け入れの準備をするための時間的な確実性を与えることを義務付ける実務的な配慮です。
- provided that(ただし~を条件として): 前方で認めた検査権(may inspect)に対して、後方から強力な「ブレーキ(制約条件)」をかけるための伝統的な但し書きの接続詞です。
- does not unreasonably interfere(不当に妨げない): 検査を行う側が、嫌がらせのように相手の通常業務をストップさせる暴走を阻止し、実務上の受忍限度の枠内に収めることを約束させています。
- normal business operations(通常の事業運営): 検査によって相手の利益を生み出す日常の歯車を狂わせてはならないという、守られるべき相手方の営業上の権利の範囲を画定しています。