訳:
錯誤(さくご)
意味合い:
mistake(錯誤)は:
契約を締結する際、当事者が事実関係や法律の規定について「重大な勘違いや思い込み」を抱いたまま合意してしまうことを指します。単に「思ったより儲からなかった」というビジネス上の見込み違いではなく、例えば「Aという商品を売買するつもりだったのに、勘違いしてBという商品で契約書を作ってしまった」というような、契約の前提となる本質的な部分における事実の誤認を意味します。
法的解釈(Legal Interpretation):
mistake(錯誤)は:
英米法において、契約を最初から無効(Void)にするか、または内容を修正(Rectification)するための法的事由となります。双方の当事者が同じ勘違いをしている「共通の錯誤(Mutual Mistake)」と、一方の当事者だけが勘違いしている「一方的錯誤(Unilateral Mistake)」に分かれます。法的には、契約成立を根底から揺るがすほどの重大な事実の錯誤(例:取引対象の物件が契約時にすでに焼失していたなど)がある場合に限り、救済措置が認められます。
実務のヒント(Practical Tip):
mistake(錯誤)は:
契約の成立後に、相手方から「実は勘違いしていたので契約は無効だ」と主張されて、確定した取引を覆されるリスクを回避するための防衛手段となります。実務では、譲渡条項や一般条項の周辺において、「この契約書は両者の真意を100%正しく反映したものであり、いかなる錯誤に基づいても、後から取り消したり変更したりすることはできない」という錯誤主張の放棄規定(Waive)をあらかじめ滑り込ませておくことで、ビジネスの確定性を死守する実務が一般的です。
類似・関係する用語との違い:
- misrepresentation(不実表示)との違い:
misrepresentation(不実表示)が「相手の嘘や誤った説明によって」こちらが勘違いさせられるのに対し、mistake(錯誤)は相手の説明とは関係なく、当事者が勝手に、あるいは双方が自発的に思い違いをして合意に至ってしまうという原因の違いがあります。 - error(誤り)との違い:
rror(誤り)が計算ミスや誤字脱字といった「書面上の事務的な単純ミス(Clerical Error)」を広く指すのに対し、mistake(錯誤)は契約を締結するかどうかの「意思決定の前提となる認識そのものが歪んでいた」という法的な深刻度を持つ言葉であるという違いがあります。 - oversight(見落とし)との関係:
oversight(見落とし)が、チェックを怠って必要な条項を入れ忘れたという「手続き上の不注意」を指すのに対し、mistake(錯誤)は「存在しない事実を存在すると信じ込んでいた」という、認知の誤りに基づく法的な取消原因を指すという違いがあります。
用法:
mistake(錯誤)は:
主にAssignment(譲渡条項)の周辺や、一般条項のEntire Agreement(完全合意条項)、契約解除・取消の制限条項で使用されます。
- (文脈):一度正式に調印された契約書について、後から「認識が違っていた」という主観的な理由でのひっくり返しを一切許さず、契約の絶対的な安定性を宣言する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文では、法律上認められる可能性のある「相互的または一方的な錯誤」による契約の取消権や無効主張をあらかじめ双方に放棄させ、書面通りの義務履行を強制するための決定的な文言として機能しています。
例文 mistake(錯誤):
【Assignment(譲渡条項)より】
The Parties agree that this Agreement correctly reflects their true intentions, and neither Party shall be entitled to rescind, void, or modify any provision of this Agreement based upon any mutual or unilateral mistake of fact or law existing at the time of the execution of this Agreement.
(日本語訳)
両当事者は、本契約が両当事者の真の意図を正しく反映していることに同意し、いずれの当事者も、本契約の締結時に存在した事実または法律に関する相互もしくは一方的な錯誤に基づいて、本契約のいかなる条項も取り消し、無効にし、または変更する権利を有しないものとする。
例文の注記:
- correctly reflects their true intentions(真の意図を正しく反映している): 書面の内容と当事者の頭の中の希望が完全に一致していることを相互に認めさせ、「そんなつもりではなかった」という言い訳を封じる役割を持っています。
- rescind, void, or modify(取り消し、無効にし、または変更する): 契約の効力を過去に遡って消滅させる、あるいは都合よく書き換えるといった、確定した合意を壊すあらゆる救済手段を網羅して禁止しています。
- mutual or unilateral mistake(相互もしくは一方的な錯誤): 「お互いに勘違いしていた」というケースだけでなく、「自分だけが勘違いしていた」という独りよがりのミスであっても、それを理由にした解約は一切認めないと厳格に規定しています。
- existing at the time of the execution(締結時に存在した): 契約書にサインしたまさにその瞬間に存在していた認識のズレを対象とすることを時間的に画定しています。