No Contest Clause

訳:

不争義務条項

意味合い:

No Contest Clause(不争義務条項)は:
契約の当事者(特にライセンス契約におけるライセンシーや、和解契約における相手方)に対し、対象となる権利(特許権、商標権、著作権など)の有効性や所有権について、裁判や特許庁の手続きなどで争うことを一切禁止する条項です。「不争(ふそう)特約」とも呼ばれ、ライセンスを与えてビジネスをさせてあげている相手から、後ろから刺されるような形で権利を無効化されるリスクを防止するために規定されます。

法的解釈(Legal Interpretation):

No Contest Clause(不争義務条項)は:
法的には、相手方の主導による「無効審判の請求」や「特許無効の抗弁」を制限する訴訟上の不作為義務を課すものです。ただし、この条項の法的有効性は国や地域によって判断が大きく異なります。欧州(EU)の競争法や日本の独占禁止法の実務においては、ライセンシーが権利の有効性を争うことを全面的に禁止する行為は「不公正な取引方法(取引制限)」として原則として無効(または違法)と判断されるリスクが高いため、法的な限界を意識して設計する必要があります。

実務のヒント(Practical Tip):

No Contest Clause(不争義務条項)は:
独占禁止法や競争法による「無効リスク」を回避しつつ、実質的に自社の知的財産権を守るための防衛策として、「もし有効性を争った場合は、ライセンサーは直ちにライセンス契約を解除できる」という解除権付与の形にトーンダウンさせて規定する実務が広く定着しています。これにより、相手に権利を争わせない心理的抑止力を維持しながら、条項自体が違法として一発で丸ごと無効化される危険を回避することが可能になります。

類似・関係する用語との違い:

  • covenant not to sue(不提訴特約)との違い:
    covenant not to sue(不提訴特約)が「特許権者などが、相手方の過去・将来の侵害行為に対して、損害賠償請求や差し止め請求などの裁判を起こさない」という防御的な約束を指すのに対し、No Contest Clause(不争義務条項)は「ライセンスを受けた側が、その元となる特許そのものの有効性を潰しにかかる行為を禁止する」という攻守が逆の制限を課す違いがあります。
  • arbitration clause(仲裁条項)との関係:
    arbitration clause(仲裁条項)が「契約から生じた紛争を、裁判所ではなく民間の仲裁手続きで解決する」という紛争解決の場所や手続きを定めるものであるのに対し、No Contest Clause(不争義務条項)はそもそも権利の有効性について「争うことそのものを一切認めない」という、実体的な義務を課す点に違いがあります。
  • governing law clause(準拠法条項)との関係:
    governing law clause(準拠法条項)が「この契約をどの国の法律に基づいて解釈するか」を決めるものであるのに対し、No Contest Clause(不争義務条項)はその準拠法(日本法やEU法など)の枠内で、どこまで相手の挑戦行為を縛ることができるかという、具体的な制限内容を規定するものであるという関係にあります。

用法:

No Contest Clause(不争義務条項)は:
主にIntellectual Property License Agreement(知的財産権ライセンス契約)やSettlement Agreement(和解契約)で使用されます。

  • (文脈):ノウハウやブランドを貸し出すライセンサーが、ライセンシーから「この特許はもともと無効だ、だからライセンス料は払わない」と逆襲されるのを封じる文脈で使用されます。
  • (例文での役割):例文では、契約期間中、直接・間接を問わず知的財産権への挑戦を一切禁じ、さらに第三者をそそのかす行為まで網羅して防御する包括的な禁止キーワードとして機能しています。

例文:

【No Contest Clause(不争義務条項)より】
The Licensee hereby agrees that it shall not, during the term of this Agreement, directly or indirectly challenge, contest, or dispute the validity or ownership of the Licensed Intellectual Property Rights, and shall not assist or encourage any third party to take any such action against the Licensor.

(日本語訳)
ライセンシーは、本契約の期間中、ライセンス対象知的財産権の有効性または所有権について、直接的または間接的に異議を唱え、否定し、または争わないこと、また、ライセンサーに対してそのような行為を行うよう第三者を支援したり、奨励したりしないことに同意する。

例文の注記:

  • directly or indirectly(直接的または間接的に):ライセンシー自身が表立って訴訟を起こすことだけでなく、子会社を使ったり、ダミー会社を裏から操って権利を争わせたりする迂回行為をすべて網羅して禁止しています。
  • challenge, contest, or dispute(異議を唱え、否定し、または争わない):特許庁への無効審判の申し立て、裁判での無効の抗弁、パブリックコメントでの攻撃など、あらゆる法的手段を用いた権利への挑戦行為を漏れなく抑え込む重ね言葉です。
  • validity or ownership(有効性または所有権):「この特許は技術的に無効だ」という攻撃(validityへの挑戦)と、「この商標は本当はライセンサーのものではない」という根元の権利主張(ownershipへの挑戦)の両方の切り口からの反逆をブロックしています。
  • assist or encourage any third party(第三者を支援したり、奨励したりしない):ライセンシーが競合他社に「あの特許、この資料を使えば無効にできるよ」と裏で情報提供や資金援助をして、間接的に自社の知的財産権を脅かすスパイ行為を法的に禁止しています。