No Waiver Clause

訳:

権利不放棄条項

意味合い:

No Waiver Clause(権利不放棄条項)は:
契約の当事者が、相手方の契約違反に対して直ちに権利(解除権や損害賠償請求権など)を行使しなかったり、行使が遅れたりした場合であっても、「それによってその権利を放棄したとはみなされない」ことを規定する条項です。また、一度特定の違反を容認(宥恕)したからといって、将来の同種の違反に対する権利まで失うわけではないことを明確にするために置かれます。

法的解釈(Legal Interpretation):

No Waiver Clause(権利不放棄条項)は:
法的には、当事者の不作為や遅延が「黙示の権利放棄(Implied Waiver)」として解釈される法律上のリスクを排除する効果を持ちます。英米法においては、違反を知りながら長期間放置すると、信義則(あるいはエストッペル)の観点から、その権利が消滅したと認定されることがありますが、本条項はそうした時間の経過による権利消滅の認定を合意によって防止します。

実務のヒント(Practical Tip):

No Waiver Clause(権利不放棄条項)は:
英文契約の実務においては、ボイラープレート(一般条項)の1つとしてWaiver(権利放棄条項)という独立した条項の中に規定されるのが一般的です。実務上は、例えば相手方の支払いが1週間遅れた際に、ビジネス上の関係を重視して「今回は催促せずに待ってあげよう」と配慮した結果、法的に「今後も1週間の遅れは容認する契約に変更された」と相手から主張されるのを防ぐために極めて重要な役割を果たします。

類似・関係する用語との違い:

  • course of dealing(取引の慣行)との関係:
    course of dealing(取引の慣行)が「過去の何度も繰り返された取引の実績から、当事者間の黙示のルールが形成されること」を指すのに対し、No Waiver Clause(権利不放棄条項)は「過去に何度違反を見逃していたとしても、それは今回の違反を容認する法的根拠にはならない」と規定して、取引慣行による契約の軟化を遮断する違いがあります。
  • remedy(救済措置)との関係:
    remedy(救済措置)が違反に対して取ることができる法的な対抗手段(損害賠償請求など)そのものを指すのに対し、No Waiver Clauseは「その救済措置をいつ行使するか、あるいは今回は見送るかという選択が、将来の行使に悪影響を与えないこと」を保証するという関係にあります。
  • written waiver(書面による権利放棄)との関係:
    written waiver(書面による権利放棄)が「この件に関しては権利を放棄します」と正式に署名して意思表示する行為を指すのに対し、No Waiver Clauseは「そのような正式な書面がない限り、単なる放置や遅延によって自動的に権利が消滅することはない」という原則を定めるものであるという違いがあります。

用法:

No Waiver Clause(権利不放棄条項)は:
主にWaiver(権利放棄条項)で使用されます。

  • (文脈):当事者が相手方の義務違反に対して一時的に猶予を与えたり、督促を遅らせたりする際に、その親切心やビジネス上の配慮が法的な不利(権利失効)に繋がらないようにする文脈で使用されます。
  • (例文での役割):例文では、権利や救済措置の不行使・行使遅延が権利放棄として機能しないこと、また一部の権利行使が残りの権利の追加行使を妨げないことを明確にする役割を果たしています。

例文 No Waiver Clause(権利不放棄条項)

【Waiver(権利放棄条項)より】
No failure or delay by either party in exercising any right or remedy under this Agreement shall operate as a waiver thereof, nor shall any single or partial exercise of any right or remedy preclude any other or further exercise thereof or the exercise of any other right or remedy.

(日本語訳)
いずれかの当事者が本契約に基づく権利または救済措置を行使しなかった場合、または行使が遅れた場合でも、それは権利放棄とはみなされず、また、権利または救済措置の単独または部分的な行使は、当該権利もしくは救済措置のさらなる行使、あるいはその他のいかなる権利もしくは救済措置の行使を妨げるものでもない。

例文の注記:

  • No failure or delay(行使しなかった場合、または行使が遅れた場合でも):違反を見逃して「何もしなかったこと(Failure)」だけでなく、対応が数ヶ月「遅れたこと(Delay)」のいずれであっても権利放棄の根拠とすることを禁止しています。
  • shall operate as a waiver thereof(権利放棄とはみなされず):不作為によって自動的に法律上の権利が消滅する(権利放棄として作用する)という法的な帰結を完全に排除しています。
  • single or partial exercise(単独または部分的な行使):「一度だけ権利を行使した」あるいは「請求できる損害賠償額の一部だけを請求した」という状況を指します。
  • preclude any other or further exercise(さらなる行使、あるいはその他の行使を妨げるものでもない):一部の権利を使ったからといって、「残りの金額の請求」や「別の救済手段の重ねての発動」が禁止される(Precludeされる)ことはないと規定し、当事者の選択肢を保護しています。