訳:
非権利侵害、非権利侵害性
意味合い:
non-infringement(非権利侵害)は:
自社が提供する製品、サービス、ソフトウェア、または技術などが、他人の特許権、著作権、商標権などの知的財産権を一切「踏んでいない(侵害していない)」状態を指します。契約書でこの言葉が登場する場合、基本的には「私たちがあなたに売るこのシステムは、他社の知財を勝手に盗んだり真似したのはないので、安心して使ってください」と、製品の安全性を強く断言する場面で使われます。
法的解釈(Legal Interpretation):
non-infringement(非権利侵害)は:
法的には、売主やライセンサー(貸し手)が、対象物の法的瑕疵(欠陥)がないことを保証する客観的状態の宣言を意味します。特許法をはじめとする知的財産権法では、過失がなくても他人の知財を真似して使っていれば「侵害」が成立してしまうリスク(無過失責任的な側面)があるため、契約にnon-infringementの文言を入れることで、万が一、後から第三者に「知財侵害だ」と訴えられた場合の法的な責任の所在(最終的な矛先)を明確に定める効果を発揮します。
実務のヒント(Practical Tip):
non-infringement(非権利侵害)は:
ライセンス契約やITシステムの開発契約において、買い手(ライセンシー)が最も激しく要求し、売り手(ライセンサー)が最も慎重に交渉する重要ワードとして機能します。例えば、自社が莫大な投資をして他社からシステムを導入したのに、数ヶ月後に見知らぬ他社から「そのシステムは我が社の特許の侵害だ、使用を即座に停止しろ」と言われた場合、ビジネスがストップしてしまいます。買い手としては、このnon-infringementを相手に約束させておくことで、「もし侵害問題が起きたら、売り手の責任と費用で全て解決してもらう」という防御体制を敷く実務が徹底されています。
類似・関係する用語との違い:
- non-infringement warranty(非侵害保証)との違い:
non-infringement(非権利侵害)が「他人の権利を侵害していない」という客観的な事実や状態そのものを表すのに対し、non-infringement warranty(非侵害保証)は、その状態が真実であることをライセンサー側が法的に引き受け、もし違反があれば損害を賠償するという「契約上の義務・約束」の側面を強く指すという違いがあります。 - intellectual property indemnity(知的財産権の補償)との関係:
intellectual property indemnity(知的財産権の補償)は、万が一侵害が発生して買い手が第三者から訴えられた場合に、売り手が買い手の代わりに弁護士費用を支払い、裁判を丸ごと引き受けて解決する実務的な救済義務までカバーするという違いがあります。 - freedom to operate(FTO:実施の自由)との関係:
non-infringement(非権利侵害)が特定の成果物そのものが他人の権利を侵していないかという契約上の責任範囲に焦点を当てるのに対し、freedom to operate(実施の自由)は、ある特定の国や市場において、企業が自社のビジネスを第三者の特許に阻害されることなく合法的に展開・実施できるかという、開発前のリサーチや経営判断のスコープを広く包括する表現であるという関係にあります。
用法:
non-infringement(非権利侵害)は: 主にIntellectual Property Warranty(知的財産権の保証条項)や、Representations and Warranties(表明保証条項)で使用されます。
- (文脈):売り手側が提供する成果物について、第三者の知財を一切侵していないことを「表明および保証(represent and warrant)」する文脈、あるいは過去に他社と交わした「知財を侵害しません」という個別の約束(covenant)に違反していないことを証明する文脈で使用されます。
- (例文での役割):例文では、ライセンサーがライセンシーに対し、ソフトウェアが他社の特許や著作権を侵害していない客観的事実と、契約締結行為そのものが過去の非権利侵害の誓約に違反しない状態であることを法的に確定させる重要なキーワードとして機能しています。
例文 non-infringement(非権利侵害):
【Intellectual Property Warranty(知的財産権の保証条項)より】
The Licensor hereby represents and warrants to the Licensee that the Software does not infringe upon any intellectual property rights of any third party, including but not limited to patents and copyrights, and that the execution of this Agreement does not breach any non-infringement covenants or prior legal obligations.
(日本語訳)
ライセンサーは、本ソフトウェアが特許権および著作権を含むがこれらに限定されない、第三者の知的財産権を侵害しないこと、および本契約の締結が非権利侵害の誓約または以前の法的義務に違反しないことを、ライセンシーに対して表明および保証する。
例文の注記:
- represents and warrants(表明および保証する): 契約締結時点での事実が正しいことを断言し(表明)、もしそれが嘘や間違いであった場合には、相手方に生じた損害を全て賠償することを約束する、英文契約の最重要フレーズの一つです。
- including but not limited to(〜を含むがこれらに限定されない): 例示として特許権や著作権を挙げていますが、それ以外(商標権や営業秘密など)のあらゆる知的財産権も漏れなく対象に含めるという、網羅性を確保するための定番表現です。
- prior legal obligations(以前の法的義務): 本契約を結ぶより前に、他社との間で結んだ共同開発契約や独占的ライセンス契約など、すべての法的な約束事を指し、それらとのバッティングがないことを保証しています。
- does not infringe upon any intellectual property rights(いかなる知的財産権も侵害しない): 特定の技術分野に閉じず、第三者が保有する地上すべての知財を対象とすることで、予期せぬ商標権侵害や意匠権侵害の飛び火リスクから買い手を完全に防衛する強力な免責効果を担保しています。