nothing in this Agreement shall

訳:

本契約のいかなる規定も~するものではない

意味合い:

nothing in this Agreement shall(本契約のいかなる規定も~するものではない)は:
本契約書の全体を通じて、特定の行為、権利の移転、または義務の免除が引き起こされることを全面的かつ絶対的に遮断する定型句です。前述の「nothing contained herein shall」とほぼ同義ですが、こちらは「この契約書(this Agreement)」という法的な枠組みそのものを主語として明示することにより、契約書の文言を根拠にした不当な権利侵害やライセンスの無断発生(黙示の許諾)を防御する強力なセーフガードとして機能します。

法的解釈:

nothing in this Agreement shall(本契約のいかなる規定も~するものではない)は:
契約の解釈における「反対の推定」を排除する法的効果を持ちます。例えば、技術提携契約や秘密保持契約(NDA)において、情報の開示や共同作業の規定が並んでいると、相手方から「これだけ深く関わっているのだから、当然その知的財産権(IP)を自社が使用する権利(ライセンス)も含まれているはずだ」という「黙示のライセンス(Implied License)」を主張されるリスクが生じます。この表現を明記しておくことで、そのような黙示の権利発生を法的に完全に否定し、明示的な書面合意がない限り一切の権利移動が起きないことを確定させることができます。

実務のヒント:

nothing in this Agreement shall(本契約のいかなる規定も~するものではない)は:
主にIntellectual Property Rights(知的財産権条項)や、秘密保持条項(Confidentiality)、または「本契約のいかなる規定も、当事者が法令に基づく開示義務を履行することを妨げない」といった、強行法規の遵守を優先させる例外規定などで多用されます。実務上の重要なポイントは、この表現を使うことで「自社が持つ元々の牙城(既存の権利)」を守り抜くという点です。ビジネス上のやり取りがどれだけ進んでも、契約書の解釈によって自社のコア技術や特許が相手方に掠め取られることがないよう、IP条項の冒頭や末尾にはこの表現を定型防壁として埋め込んでおくのが鉄則です。

類似・関連する用語との違い:

  • nothing contained herein shall(本契約のいかなる規定も〜するものではない)との違い:
    nothing contained herein shallが「herien(この中)」という、別紙や添付書類までを含んだ文書の「格納場所」に焦点をあてた響きを持つのに対し、nothing in this Agreement shallは「this Agreement(本契約)」という、法的な合意の「枠組み・制度」そのものを指し示すという違いがあります。ただし、実際の裁判実務における効果はほぼ同一であり、ドラフター(起草者)の好みや契約書全体の用語の統一性(hereinを多用するスタイルか否か)によって使い分けられます。
  • shall not be construed as(〜と解釈されてはならない)との違い:
    shall not be construed asはある特定の条項や行為を指して「〜と解釈してはならない」と限定的な禁止をかけるのに対し、nothing in this Agreement shallは文頭に置くことで、契約書内のどこに隠れているかもしれないあらゆる文言を網羅的に捕まえ、一網打尽に全否定の縛りをかけるというカバー範囲の広さに違いがあります。
  • subject to any other provision(他の規定に従うことを条件として)との違い:
    subject to…は他の規定に対して「一歩譲る(従属する)」という上下関係を作るのに対し、nothing in this Agreement shallは他のどの規定に対しても「一切譲らない(優越する)」という形で、特定の否定ルールを絶対化させるというアプローチの方向性に真逆の違いがあります。

用法:

nothing in this Agreement shall(本契約のいかなる規定も~するものではない)は:
主にIntellectual Property Rights(知的財産権条項)で使用されます。

  • (文脈): お互いの既存の知的財産権を保護しつつ共同でビジネスを行う際、契約書に書かれた様々な協力条項から、相手方に勝手にライセンスが与えられたと誤解・悪用されるのを防止する文脈で配置されます。
  • (例文での役割): 書面による明確な合意がない限り、本契約のどの文言からも知的財産権のライセンスや譲渡が「明示的にも黙示的にも」発生することはないという絶対的なルールを敷き、自社の権利を死守する役割を果たしています。

例文  nothing in this Agreement shall(本契約のいかなる規定も~するものではない):

【Intellectual Property Rights(知的財産権条項)より】
Each party shall retain all right, title, and interest in and to its own intellectual property. Nothing in this Agreement shall be construed to grant, either expressly or by implication, any license or right to the other party regarding such intellectual property unless otherwise specifically agreed in writing.

(日本語訳)
各当事者は、自己の知的財産に関する一切の権利、権原、および利益を保持するものとする。本契約のいかなる規定も、書面による明示的な別段の合意がない限り、当該知的財産に関して相手方当事者に明示的または黙示的にライセンスまたは権利を付与するものと解釈されてはならない。

例文の注記:

  • retain all right, title, and interest(一切の権利、権原、および利益を保持する): 対象物(ここでは知的財産)に関する所有権や利用権などのあらゆる法的な中身を、他方に渡さず自社に完全に留保することを意味する定番の財産保護フレーズです。
  • either expressly or by implication(明示的または黙示的に): 言葉や文字でハッキリと表すこと(明示)はもちろん、前後の文脈や態度から「当然にそうなっているはずだ」と推測させること(黙示)も含めた、すべての発生ルートを網羅しています。
  • grant… any license or right(ライセンスまたは権利を付与する): 相手方に対して、その知的財産を自由に使用したり、サブライセンスしたりする法的な許可や権能を与える行為を指します。
  • unless otherwise specifically agreed in writing(書面による明示的な別段の合意がない限り): 口頭での約束やメールでの安易な合意を認めず、当事者が正式にサインした「書面」という最も厳格な形式でのみ、例外的な変更や許可を認めるという強い条件縛りです。