訳:
別段の定めにかかわらず
意味合い:
notwithstanding anything to the contrary(別段の定めにかかわらず)は:
前述の「provision(条項・定め)」を「anything(いかなる事柄・事項)」に置き換えた表現であり、契約書内(または関連文書内)に存在する、本条項と矛盾する「いかなる反対の定めや内容」があったとしても、それを完全に排除して本条項を最優先させるという強い優先効を表す定型フレーズです。
法的解釈:
notwithstanding anything to the contrary(別段の定めにかかわらず)は:
「provision(条項)」という文言よりもさらに抽象的で包括的な「anything(いかなる事柄)」を使用することで、単なる特定の条文の文言だけでなく、契約から読み取れる趣旨や黙示の了解、他の合意内容など、あらゆる反対要素を広くカバーして打ち消す法的な効果を持ちます。これにより、本条項が契約全体の中で「絶対的な優先権」を持つことが法的に確定します。
実務のヒント:
notwithstanding anything to the contrary(別段の定めにかかわらず)は:
実務上、損害賠償の限界を設定する「責任制限条項」や「免責条項」の冒頭で非常によく使われます。どれほど他の条項で「~について責任を負う」と書かれていようとも、この一言があることで、最終的な賠償上限や免責のルールが絶対に崩されないように守ることができます。ドラフティングでは、これによって相手方の重大な救済手段を完全に封じることになるため、交渉の最重要ポイントとなります。
類似・関連する用語との違い:
- notwithstanding any provision to the contrary(別段の定めにかかわらず)との違い:
どちらも強い優先効を持ちますが、provisionが特定の「条項」を念頭に置くのに対し、anythingは条文の形を取らない合意や趣旨までも含んだ「いかなる反対事項」も網羅的に打ち消すため、さらにカバー範囲が広く強力なニュアンスがあります。 - subject to anything to the contrary(別段の反対事項に従うことを条件として)との違い:
subject to anything to the contraryは、他のいかなる反対の合意や事実に対しても本条項を従属・劣後させる表現です。これに対し、notwithstanding anything to the contraryはあらゆる反対要素を圧倒して自らを絶対的な優先ルールとするため、法的な効力が180度異なります。 - save as otherwise provided in this Agreement(本契約に別段の定めがない限り)との違い:
save as otherwise provided in this Agreementは「他の規定に例外があればそれに従う」と自ら一歩引く表現です。これに対して、notwithstanding anything to the contraryは他の例外の存在を一切認めず、すべての反対規定を強制的に排除して優先します。
用法:
notwithstanding anything to the contrary(別段の定めにかかわらず)は:
主に責任制限条項(Limitation of Liability)、免責条項(Indemnification / Exclusions)などで使用されます。
- (文脈):契約上のいかなる規定や合意があっても、間接損害や派生的損害などの特定の損害については一切の賠償責任を負わないとする文脈。
- (例文での役割):文頭において、当事者間で交わされた他のあらゆる義務や合意をすべて見下ろす形で、この責任制限規定を契約全体の最優先ルールとして確立させる役割を果たしています。
例文 notwithstanding anything to the contrary(別段の定めにかかわらず):
【Limitation of Liability(責任制限条項)より】
Notwithstanding anything to the contrary contained in this Agreement or any other related documents executed by the Parties, neither Party shall under any circumstances be liable to the other Party for any indirect, incidental, special, exemplary, or consequential damages arising out of or in connection with the performance of this Agreement.
(日本語訳)
本契約または当事者間で締結されたその他の関連文書における別段の定めにかかわらず、いずれの当事者も、本契約の履行に起因または関連して生じる間接損害、付随的損害、特別損害、懲罰的損害、または派生的損害について、いかなる状況においても相手方に対して責任を負わないものとする。
例文の注記:
- executed by the Parties(当事者間で締結された): 本契約と同時に、あるいはその前後に当事者間で正式に署名・交わされたすべての合意書や覚書を対象に含め、そこに含まれる反対規定を網羅的に排除しています。
- neither Party shall under any circumstances be liable(いかなる状況においても相手方に対して責任を負わない): 「neither」と「under any circumstances」を組み合わせることで、過失の程度や状況の如何を問わず、例外を一切認めずに賠償責任を100%遮断するという極めて強い拒絶を表しています。
- indirect, incidental, special, exemplary, or consequential damages(間接損害、付随的損害、特別損害、懲罰的損害、または派生的損害): 英米法実務において、予見可能性が低い、あるいは特別の事情から生じた拡大損害のカテゴリーを網羅した列挙であり、これらを一括して免責対象とすることで、予期せぬ巨額の賠償リスクから自社を守る実務上の定番フレーズです。
- arising out of or in connection with(に起因または関連して生じる): 契約の直接的な違反だけでなく、履行プロセスに関連して発生した不法行為など、原因と結果の因果関係の範囲を可能な限り広く捉えて免責の網羅性を高めるための実務表現です。