訳:
従って、よって
意味合い:
NOW, THEREFORE,(従って、よって)は:
英文契約書の前文(Recitals)の締めくくりであり、本文(Operative Part)の開始を告げる役割を持つ、最も重要で格式高い伝統的な契約法上の接続表現です。これまでに述べられた契約締結に至る背景や目的(WHEREAS条項など)を受け、「こうした背景があるため、ここから具体的な合意事項に入ります」という法的な転換点を明確に宣言する役割を果たします。
法的解釈:
NOW, THEREFORE,(従って、よって)は:
単なる文章の繋ぎではなく、契約が成立するための法的な必須要件である「約因(Consideration:対価関係)」が存在することを宣言する法的な意味を持っています。これに続く文章と合体することで、当事者間において「お互いに義務を負い、権利を得るだけの正当な対価関係(約因)が十分に満たされたため、ここから下に書かれる約束事にはすべて法的拘束力が発生する」という事実を法的に確定させる効力があります。
実務のヒント:
NOW, THEREFORE,(従って、よって)は:
実務上、ほぼすべての英文契約書の前文から本文へと切り替わる境界線に、慣用表現として必ず大文字で配置されます。このフレーズの後に続く「in consideration of…(〜を約因として)」から「agree as follows(以下に合意する)」までのセットは、英米法における契約の有効性を基礎づける定番の定型文(リーガルエッセンス)であるため、ドラフティングの際は形を崩さずにそのまま使用することが基本です。
類似・関連する用語との違い:
- Therefore(したがって)との違い: Thereforeは一般的なビジネス文書やレター、あるいは契約書内の通常の条文中で、単純な因果関係(原因と結果)を説明するために使われる接続詞です。これに対して、NOW, THEREFORE,は前文から本文へと移行する瞬間にのみ使用が許される独立した契約定型句であり、背後に「法的拘束力のある合意への突入」という重いリーガルな意味合いを内包している点で一線を画します。
- Witnesseth(以下を証する)との違い: Witnessethは前文の冒頭(当事者表示の直後など)に置かれ、「この契約書は以下の事実を証明するものである」として背景説明を開始する合図となります。これに対して、NOW, THEREFORE,はそうして並べられた背景説明をすべて総括した上で、「従って、ここから具体的な約束(本文)を始める」と話を締めくくる役割を持つため、前文の「始まり」と「終わり」という対比関係にあります。
- Accordingly(それに応じて / 従って)との違い: Accordinglyは、ある規定や事実、または相手方の要請「に応じて」行動する際などに、条文の内部で条件や手順を繋ぐために使用されます。一方で、NOW, THEREFORE,は契約書全体の構造を「背景(前文)」から「拘束力のある合意(本文)」へとダイレクトに橋渡しするための、独立した大局的なマイルストーンとして機能するという違いがあります。
用法:
NOW, THEREFORE,(従って、よって)は:
主にRecitals(前文)で使用されます。
- (文脈):当事者間で契約を交わす背景を説明し終え、法的な対価関係(約因)が満たされたことを確認した上で、具体的な合意内容(準拠法など)の本文へと突入する文脈。
- (例文での役割):前文の最終行に大文字で鎮座することで、ここから始まる条文(日本法への準拠しなど)が、単なる努力目標ではなく法的に強制可能な「本契約の核心」であることを宣言する導入部として機能しています。
例文 NOW, THEREFORE(従って、よって):
【Recitals(前文)より】
NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual covenants contained herein and other good and valuable consideration, the receipt and sufficiency of which are hereby acknowledged, the parties hereto agree that this Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan without regard to its conflict of law principles.
(日本語訳) 従って、本契約に含まれる相互の約定およびその他の正当かつ価値ある対価(その受領および十分性はここに確認されるものとする)を約因として、当事者は、本契約が法の抵触に関する原則にかかわらず、日本法に準拠し、同法に従って解釈されることに合意する。
例文の注記:
- in consideration of the mutual covenants contained herein(本契約に含まれる相互の約定を約因として): 契約が法的に有効に成立するために必要な「約因(対価関係)」が、お互いの約束(covenants)によって確かに存在していることを明示する、英米法実務における必須の定型表現です。
- the receipt and sufficiency of which are hereby acknowledged(その受領および十分性はここに確認されるものとする): 契約の対価(約因)が、当事者間で間違いなく受け取られ、かつ契約を成立させるのに「法的に十分な価値」を持っていることをお互いに認め合い、後から「約因がなかったから契約は無効だ」という言い逃れをさせないための防衛策です。
- shall be governed by and construed in accordance with(に準拠し、同法に従って解釈される): 万が一、将来的に契約を巡るトラブルが起きた際に、どこの国の法律をベースに白黒をつけるか(準拠法:Governing Law)を定める実務上の最重要条項のひとつです。
- without regard to its conflict of law principles(法の抵触に関する原則にかかわらず): 「日本法に従う」と決めた以上、日本の国際私法(法の抵触)が作動して「他国の法律を適用すべき」と判断されるような回り道を完全に遮断し、何があっても純粋に日本国内の法律だけでストレートに裁判や解釈を行うための実務的な縛りです。