omission

訳:

不作為

意味合い:

omission(不作為)は:
法律上または契約上、当然行うべきであった行為、あるいは期待されていた義務を果たさないこと(何もしないこと、怠ること)を意味します。英文契約書の実務、特に責任や補償(Indemnification)を定める条項においては、積極的な行動によって損害を与える「作為(Act)」と並び、義務を果たさずに放置したことによって損害を生じさせる「不作為(Omission)」が、同等の責任原因として扱われます。

法的解釈:

omission(不作為)は:
単に「何かをしなかった」という事実だけで直ちに法的な責任を問われるわけではなく、前提としてその行為を行うべき契約上の義務や注意義務(Duty of Care)が存在していたにもかかわらず、それを怠った場合(過失ある不作為:Negligent Omission)に初めて法的な責任が発生します。契約法や不法行為法の解釈において、作為と不作為は損害を引き起こした表裏一体の原因として評価されるため、免責条項や補償条項の適用範囲を決める上で極めて重要な法的概念となります。

実務のヒント:

omission(不作為)は:
補償条項(Indemnification)や損害賠償条項において、自らが相手方に与えた損害を補償する範囲、あるいは逆に相手方の過失によって自らが被った損害をカバーさせる範囲を定義する際に登場します。このとき、「任意の過失ある行為(any negligent act)」とだけ記載されていると、「本来行うべきメンテナンスを怠った」「必要な安全措置を講じなかった」といった「不作為による損害」が補償の対象から外れてしまうと解釈される危険があります。そのため、実務では必ず「act or omission(作為または不作為)」というセットフレーズを用いて、あらゆる過失の形態を網羅することが必須となります。

類似・関連する用語との違い:

  • act(作為/行為)との違い: actは、実際に特定の行動を起こすこと(例:誤った操作を行う、禁止された行為をあえて実行するなど)を指します。これに対して、omissionは必要な行動をあえて行わないこと(例:警告を無視して放置する、義務付けられた報告をしないなど)を指し、行動の「有無」において完全に対比される概念ですが、過失責任の文脈では同等に扱われます。
  • failure(不履行/怠慢)との違い: failureは、「〜しないこと」を広く意味し、契約上の特定の期日や義務(支払いや納品など)を達成できなかったという「結果」に主眼が置されます。これに対して、omissionは行為者が取るべきであった具体的な挙動・措置を取らなかったという「不作為という過失の態様(プロセス)」そのものに焦点を当てた法律用語であるという点で、微妙なニュアンスの違いがあります。
  • breach(契約違反/不履行)との違い: breachは、明文で定められた契約上の条項や義務に直接違反することを広く指す包括的な概念です。これに対して、omissionは契約義務そのものの不履行(breachの一種)だけでなく、注意義務を怠って相手方に損害を与えたという「過失の態様(不法行為責任の要素)」としての側面が強く、主に補償条項(Indemnification)の免責や責任追及の文脈でピンポイントに原因として指定される点が異なります。

用法:

omission(不作為)は:
主にIndemnification(補償条項)で使用されます。

  • (文脈):契約の履行中に、当事者の過失によって相手方や第三者に損害を生じさせた場合、どちらがその責任を経済的に負担(補償)すべきかという範囲を定めています。
  • (例文での役割):補償義務が発生する直接の原因(トリガー)として、積極的な過失行為(act)だけでなく、義務を怠ったこと(omission)も同等に対象となることを明確にするために使用されています。

例文  omission(不作為):

【Indemnification(補償条項)より】
Each party shall defend, indemnify, and hold harmless the other party from and against any and all claims, damages, liabilities, losses, costs, and expenses arising out of or resulting from any negligent act or omission committed by the indemnifying party in connection with the performance of this Agreement.

(日本語訳)
各当事者は、本契約の履行に関連して当該当事者が行った過失ある作為または不作為に起因し、またはその結果として生じる、あらゆる請求、損害、責任、損失、費用、および経費について、相手方を防御し、補償し、かつ免責するものとする。

例文の注記:

  • defend, indemnify, and hold harmless(防御し、補償し、かつ免責する)は: 相手方が被った損害の賠償(金銭補償)だけでなく、第三者から訴訟を起こされた場合の弁護士費用の負担や防御手続きまでを包括的に引き受けることを約束する定型の強い表現です。
  • any and all(あらゆる)は: 発生した損害の種類や金額の大小を問わず、例外を一切認めずにすべての損失をカバーすることを強調する契約書特有の表現です。
  • arising out of or resulting from(〜に起因し、またはその結果として生じる)は: 行為(または不作為)と、発生した損害との間に直接・間接の因果関係が存在していることを広範に捉えるための表現です。
  • in connection with the performance(履行に関連して)は: 責任の対象となる行為が、プライベートな活動ではなく、本契約に基づく業務や義務の実行範囲内で発生したものであるという関連性を画定しています。