訳:
ひとつ且つ同一の証書
意味合い:
one and the same instrument(ひとつ且つ同一の証書)は:
英文契約書において、同じ契約の成立を示す証書や合意文書が、本質的に「完全に同一のものである」という一体性を確認するための法的表現です。通常は、同じ内容の契約書が複数部作成されたり、別々に署名されたりしたとしても、それらは別々の契約を表すものではなく、すべてが合わさることで「ただ1つの共通する合意文書」を構成していることを明確にするために用いられます。
法的解釈:
one and the same instrument(ひとつ且つ同一の証書)は:
法的な効果として、各当事者が異なる原本(副本)に個別に署名・捺印を交わす持ち回り契約などの形態をとる場合であっても、それぞれが物理的に独立した別個の契約書(または別の契約関係)であると解釈されるリスクを排除します。すべての署名済み文書が一体となって、法的に全く同等の拘束力と一体性を持った唯一の契約を形成しているとみなされます。
実務のヒント:
one and the same instrument(ひとつ且つ同一の証書)は:
遠隔地の当事者間で契約を締結する際、それぞれが同じ契約書に時間や場所を違えて署名する「副本(持ち回り)締結」を行う実務で真価を発揮します。この表現を含めておくことで、当事者全員が1枚の契約書に並んで署名する必要がなくなり、それぞれの署名済み文書を合わせることで、一体の正式な契約として完全に成立させることが可能になります。
類似・関連する用語との違い:
- counterpart(副本)との関係:
counterpart は、1つの共通の契約に基づいて同一内容で作成された、物理的に複数存在する個々の文書(副本)そのものを指します。これに対して one and the same instrument は、それらの個別の counterpart が全て集まった結果として、「法的にただ1つの同一の証書」を形作るという性質や効果を表しているため、両者は表裏一体の関係にあります。 - original(原本)との違い:
original は、複製やコピーに対する、証明力を持った本物の「原本」という個別文書の法的地位を指す言葉です。これに対して one and the same instrument は、複数の原本や副本が全体として共通の「1つの合意関係」を構成しているという、契約文書全体の一体性と同一性を強調する表現であるため、焦点が異なります。 - duplicate(謄本)との違い:
duplicate は、原本と同じ効力を持たせるために全く同一の様式で作成された写しや2部目(正副の副)を指します。これに対して one and the same instrument は、個別の複製物としての書類を指すのではなく、それらの書類が究極的に証明している合意そのものの「唯一無二の一体性」を意味している点に違いがあります。
用法:
one and the same instrument(ひとつ且つ同一の証書)は:
主にCounterparts(副本条項)で使用されます。
- (文脈):本契約が複数の副本によって個別に締結・交付されることを容認しつつ、最終的にはそれらバラバラに存在する全ての副本が組み合わさることによって、両当事者間を縛る「ただ1つの共通する契約証書」になるという文脈で使用されています。
- (例文での役割):個別の副本に署名されたとしても、それらが別個の、あるいは矛盾する複数の契約を生み出すわけではなく、法的な一体性を持った同一の合意文書であることを確定させる役割を果たしています。
例文 one and the same instrument(ひとつ且つ同一の証書):
【Counterparts(副本条項)より】
This Agreement may be executed in any number of counterparts, each of which when so executed and validly delivered shall be deemed to be an original for all purposes, but all of which counterparts taken together shall be deemed to constitute one and the same instrument between the Parties hereto.
(日本語訳)
本契約は、任意の数の副本により締結することができる。各副本は、締結され有効に交付された場合、あらゆる目的において原本とみなされるが、それらすべての副本を合わせることで、両当事者間における、ひとつ且つ同一の証書を構成するものとみなされる。
例文の注記:
- be executed(締結される): 契約書への署名、調印、または捺印など、法的な合意を完成させて契約を発効させる一連の行為を指します。
- validly delivered(有効に交付された): 署名済みの契約書が、契約を成立させる意思を持って、相手方当事者に対して法的に不備なく手渡されたり送信されたりすることを意味します。
- be deemed to be(~とみなされる): 法的な擬制(事実として確定させること)を行う表現であり、反証を許さずに「〜として取り扱う」という強力な効果を持たせます。
- taken together(合わせることで): 物理的には分散して存在する複数の副本や書類を、1つのセットとしてまとめて一体のものとして考慮するという意味です。