訳:
残留情報、残存情報
意味合い:
residual information(残留情報、残存情報)は:
開示当事者から提供された秘密情報に接した受領当事者の従業員が、メモや記録媒体などの外部データに頼ることなく、自らの記憶の中に自然と留めている無形のアイディアや知見を指す名詞句です。
法的解釈:
residual information(残留情報、残存情報)は:
秘密保持条項において「残留情報(Residuals)」の免責規定を構成する対象となります。人間の頭の中にある不可視の記憶までをも完全に縛ることは実務上不可能であるという現実を考慮し、意図的な不正流用(misappropriation)がない限り、その後の業務開発での利用を秘密保持義務の違反から除外する法的効果を持ちます。
実務のヒント:
residual information(残留情報、残存情報)は:
主に秘密保持条項(Confidentiality Clause)や単独の秘密保持契約(NDA)において、受領当事者側のエンジニアや開発者が、将来の自社製品開発の際に「過去の経験や記憶」を理由として不当な差止請求や訴訟を受けるリスクを防ぐために挿入されます。ただし、開示側を守る視点から、例文のように著作権(copyrighted materials)や特許権の直接的な流用は一切許されないという制限を明確に課しておくことが重要です。
類似・関連する用語との違い:
- residualsとの違い:
residual informationは、内容が「情報そのもの」であることに着目した表現であり、解説や条項中の一般的な説明において広く好まれる語彙です。これに対し、単数・複数形を伴う「residuals」は、契約書内の特定のセクションで「The term residuals means…」のように定義語(Defined Term)としてシンプルに参照・定義される際に多用される傾向にあります。 - confidential information(秘密情報)との違い:
confidential informationは、開示当事者が指定し、受領当事者が厳重に保管・秘匿しなければならないすべての情報を指します。これに対し、residual informationは、その秘密情報に触れた人の脳内に自然に残った情報であり、一定の条件のもとで例外的に使用が許容される対象を指す点に違いがあります。 - know-how(ノウハウ)との関係:
know-howは、企業が持つ技術的・営業的な知識や経験則全般を包括的に指す言葉です。実務上、相手方の秘密情報から得られた知見のうち、自社のknow-howとして従業員の頭の中に定着した無形のアイディアの一部が、residual informationとして取り扱われる関係にあります。
用法:
residual information(残留情報、残存情報)は:
主に、英文契約書のConfidentiality(秘密保持条項)などで使用されます。
- (文脈): 秘密情報の開示を受ける際、受領側の従業員が業務を通じて自然に習得してしまった頭の中の記憶について、過度な制限による将来の事業活動の委縮を避けるため、例外的な利用許可を与える文脈で使用されます。
- (例文での役割): 人間の自然な記憶に留まった情報の再利用を一定の条件つきで適法化し、秘密保持義務の範囲を現実的かつ合理的な範囲に制限して、受領当事者の開発リスクを保護する役割を果たしています。
例文 residual information(残留情報、残存情報):
【Confidentiality(秘密保持条項)より】
The Receiving Party shall be permitted to use any residual information retained in the unaided memory of its employees who have had access to the Disclosing Party’s Confidential Information. Such use of residual information shall not constitute a breach of this Agreement, provided that no copyrighted materials are directly misappropriated.
(日本語訳)
受領当事者は、開示当事者の秘密情報に接した自社の従業員の記憶(外部の記録等に依拠しないもの)の中に留められた残留情報を使用することが認められる。著作物が直接的に不正流用されない限り、当該残留情報の使用は本契約の違反を構成しないものとする。
例文の注記:
- shall be permitted to use(使用することが認められる)は: 受領当事者に対して、特定の情報の利用権限を与える例外規定です。秘密保持の原則的な禁止義務に対する除外措置として機能し、業務上の自由度を確保する役割を持ちます。
- retained in the unaided memory(記憶の中に留められた)は: 残留情報の成立要件を限定する重要フレーズです。書面や電子データなどの外部媒体を一切使わず、人間の純粋な記憶(unaided memory)のみに依拠していることを条件とし、意図的な情報の持ち出しを区別する前提条件となります。
- shall not constitute a breach of this Agreement(本契約の違反を構成しないものとする)は: 規定された行為の法的性質を明確にする文言です。対象情報の使用行為について、相手方から契約違反として損害賠償や差止の請求を受けるリスクを確実に排除する具体的な効力を生じさせます。
- provided that no copyrighted materials are directly misappropriated(著作物が直接的に不正流用されない限り)は: 例外規定に対する追加の留保・制限規定です。記憶に基づいている場合であっても、著作物などの知的財産権を直接盗用する行為は保護されず、開示側の正当な知的財産権を守るバランス調整として作用します。