訳:
履行
意味合い:
performance(履行)は:
英文契約書において、当事者が契約に基づいて負うべき義務や約束を「実際に実行し、果たすこと」を指す最も基礎的な用語です。単に「行動する」という意味にとどまらず、契約で合意された仕様、数量、期限などのすべての条件を満たす形で、法的な義務を現実化して完了させるという、契約実務における根幹の概念です。
法的解釈:
performance(履行)は:
義務を完全に果たすこと(Full Performance)により、その当事者が負っていた契約上の法的な責任・債務を消滅(discharge)させる法的な効果を持ちます。これに対し、義務の実行が全くなされない場合や、不完全な状態で放置された場合はbreach of contract(契約違反/不履行)となり、損害賠償請求や契約解除といった相手方の救済手段(Remedies)を発動させる法的な一階部分(前提要件)となります。
実務のヒント:
performance(履行)は:
実務において、何をもって「履行が完了した」とみなすかを巡る当事者間の争いを防ぐため、契約書内で履行の成否を客観的に判定できる基準(検査合格、引渡完了など)を緻密に定めておく必要があります。また、不可抗力(Force Majeure)による不履行が発生した際に、一時的にそのperformance(履行)の義務を免除または猶予する条項と緊密に連携させておくことが、国際取引のリスク管理において極めて重要です。
類似・関連する用語との違い:
- Execution(作成、締結、執行)との違い:
Executionは、契約書にサインをして「契約を成立させる(作成・締結する)」こと、あるいは裁判所の命令等を「執行する」ことを指します。これに対してperformanceは、契約が有効に成立した後に、その中身である具体的な義務を「実行する」ことを指します。法的な関係として、契約の「execution(締結)」によって法的な拘束力が発生し、それに基づいて各当事者の「performance(履行)」の義務が開始されるという、時間的・因果的な前後関係にあります。 - Fulfillment(充足、達成、履行)との違い:
Fulfillmentは、主として「条件(Conditions)」をクリアして満たすこと(例:Fulfillment of Conditions Precedent:前提条件の成就)や、目的を完全に「達成する」という結果に重きを置いた言葉です。これに対してperformanceは、日々の義務を「実行していくプロセス(行為そのもの)」に焦点が当たります。法的な関係として、当事者が正しいperformance(履行行為)を積み重ねた結果として、契約の目的や条件がfulfillment(充足・達成)されるという、行為と結果の関係にあります。 - Payment(支払い)との違い:
Paymentは、金銭債務を「支払う」という、金銭の移転に特化した履行行為を指します。これに対してperformanceは、商品の納入、役務の提供、秘密保持など、金銭以外のものも含めた「すべての義務の実行」を包括する広い概念です。法的な関係として、performance(履行)という大きな概念の中に、金銭を支払う行為であるpayment(支払い)がその一部(特定の一類型)として含まれるという包含関係にあります。
用法:
performance(履行)は:
主にSeverability (分離可能性条項)で使用されます。
- (文脈):契約条項が一部無効となった場合でも、当初の契約目的や当事者の意図を「適法に実行(履行)」し、契約全体を維持・継続させようとする文脈。
- (例文での役割):分離可能性条項において、無効となった部分を代替する際の基準として、当初の意図の適法な「履行(実行)」を可能にすることを義務付ける役割。
例文 performance(履行):
【Severability(分離可能性条項)より】
If any provision of this Agreement is held to be invalid or unenforceable, such invalidity shall not affect the validity of the remaining provisions, and the Parties shall immediately negotiate in good faith to replace it with a valid provision that permits the lawful performance of the original intent.
(日本語訳)
本契約のいずれかの条項が無効または執行不能と判断された場合であっても、当該無効性は他の条項の有効性に影響を及ぼさないものとし、両当事者は、当初の意図の適法な履行を可能にする有効な条項をもって当該条項を代替するため、直ちに誠実に協議するものとする。
例文の注記:
- invalid or unenforceable(無効または執行不能)は: 法律の改正や公序良俗への抵触により、条項が法律上の効力を持たないこと(invalid)、または裁判所を通じて強制執行を求めることができないこと(unenforceable)を意味する、分離可能性条項の定型フレーズです。
- shall not affect the validity of the remaining provisions(他の条項の有効性に影響を及ぼさないものとし)は: 契約の一部が法的に否定されても、契約全体がドミノ倒しのようにすべて無効になるのを防ぎ、残りの健全な部分を独立して生き残らせる強い法的効力(セーフティネット)を持ちます。
- negotiate in good faith(誠実に協議する)は: 単に話し合いの席に着くだけでなく、相手方を欺いたり不当に引き延ばしたりせず、合意形成に向けて客観的に真摯かつ建設的な努力を行うことを当事者に義務付ける法務表現です。
- lawful performance(適法な履行)は: 法律や規則に違反することなく、適法な手段と言い回しによって契約上の目的や義務を文字通り実行・達成することを指します。